空想と太陽の物語3
侯輝×天理
父と歴代巫女は呼べたが。母は呼べず。
そして新章0話
侯輝:「お先でーす!」
天理:「お疲れ様です」
侯輝と天理は外回り巡回任務を無事完了させ報告書を提出するとS.G社屋を出て帰路につこうと駐車場までの小道を移動していた。
夏侯継:「輝、話がある」
侯輝:「!」
天理:「?」
突如話しかけてきたその声に侯輝は姿を見ずとも誰なのか分かった。振り返ればそこには侯輝が知り想定よりも老けた侯輝の父親がいた。久しぶりにまみえた父は、侯輝が遺伝した同じ金髪には早くも白髪がまざり、長身であるが故か細く見えがちな体格は以前よりも更に細く見えた。簡易の神官服を聢と身に纏い、神官として清廉とした気と威厳を放っているが、その表情は硬く険しいものだった。
侯輝:「父さん……」
天理:「!あ、」
侯輝の父親は、現れた人物が侯輝の父と知り挨拶しようと口を開きかけた天理を碧玉の瞳で一睨みすると、侯輝に向き直り口を開いた。
夏侯継:「場所を移すぞ。君にも来て貰いたい」
侯輝:「え!天理にも!?」
夏侯継:「そうだ」
天理にも付いてくる様に促す夏侯継に侯輝が不安そうに慌てるも天理は大丈夫だと頷いた。
侯輝:「……わかった」
駐車場から少し離れた路地裏にたどり着く。その路地裏に入ろうとした瞬間その空間だけが少し異質になっている事に天理は直感で気づいた。
侯輝:「人払いの神術だよね?」
夏侯継:「そうだ。入ってきなさい」
先に進んだ夏侯継は奥まで進むと振り返り侯輝の問いに頷いた。天理は幼なじみが使う神術ともまた少し異なるそれに興味深く観察したいところだったが、状況を鑑みて即気を引き締めた。天理と侯輝は奥まで進むと侯輝が警戒しながら口を開いた。
侯輝:「……なんの用?」
夏侯継:「輝、お前にはとことん失望した。まさか男と付き合うなど……!たとえ闇の力があろうとも、お前は確かに月の神の啓示を受けた光の御子なのだ。お前には一族の血を存続させる義務がある」
侯輝:「知らないよそんなの!俺は天理以外と結ばれるつもりないからね!」
夏侯継の言葉に青ざめる天理を見て、侯輝は父に対し激しい憤りを感じて叫んだ。
夏侯継:「天理さんと言うのかね?君には悪いが、輝には一族の血を絶やさぬ様子供を作る必要がある。輝とは別れて貰いたい」
侯輝:「聞かなくていいよ!天理」
天理は少し思いつめた様に考え込んだ後、夏侯継に深く頭を下げた。
天理:「……申し訳ありません。そちらにも深い事情があるとお察し致しますが、俺は侯輝を愛しています。彼と離れる気はありません」
天理の返事を聞き、侯輝は顔を輝かせ、夏侯継は顔をしかめた。
夏侯継:「……どうしても無理なのかね?」
天理:「はい。ご期待には添えません」
侯輝:「天理……」
天理は顔を上げ真っ直ぐに答えた。侯輝は感謝の意を込めて天理の手を握りしめ父を睨んだ。夏侯継は溜め息をつくと首を横に振った。
夏侯継:「……そうか。ならば輝、天理さんと別れろとは言わない。一族の巫女と交わりせめて子だけ残せ」
侯輝:「やだよ!俺天理以外となんて絶対嫌だからね!そんな話をしに来たならもう帰る!」
夏侯継のあまりの提案に侯輝は声を荒げ、困惑している天理の手を引き帰ろうと踵を返した。
夏侯継:「させん!お前が是とするまでここから帰さぬ!月の神よ、今ひとたびこの地を封じたまえ!」
侯輝:「わっ!」
夏侯継がたもとから神術を記した符を取り出し、祝詞を唱えると路地裏の狭い空間が清廉なる力に包まれた。路地裏から出ていこうとした侯輝が不可視の力に阻まれる。
夏侯継:「輝よ、光の御子の存続は我が一族の使命!おとなしく準ずるのだ!」
侯輝:「俺はもう勘当されてるんでしょ!力尽くでだって聞かないよ!『光と闇の精霊!ここを破って道を開け!』」
侯輝は光と闇の精霊を喚び出すと通路側の不可視の壁に向かい放つ。しかし、壁はビクともせず、精霊達は弾かれてしまった。夏侯継は侯輝が光とそして闇の力を行使している事に一瞬驚いたものの、すぐに平静を取り戻す。
天理:「……」
夏侯継:「!……無駄だ。この結界は神の御力により場を隔てるもの、そう易々と破れはせん」
侯輝:「……こうなったら倒してでも通ってやる!天理、援護して……」
神の力を破る事は難しくとも術者を打倒すれば、その術の効果も消える。侯輝か父へと拳を構えた時。
天理:「侯輝、なんか通れそうだぞ」
侯輝:「え?」
様子を伺い、不可視の壁近くで何やら小さく呟いていた天理からの言葉に侯輝は驚き振り向く。見ると確かに不可視の壁に力場が薄れたと感じられる穴が空き人が通り抜けられるくらいの穴が開いていた。侯輝が飛びかかろうとするも余裕で構えていた夏侯継が少し崩れた符と結界に目を見開き驚愕する。
夏侯継:「な、馬鹿な!」
侯輝:「よく分かんないけど、さっすが天理!行こ!」
天理:「あ、ああ」
侯輝は喜びながら勢い良く駆け出した。
夏侯継:「逃がさん!」
夏侯継は慌てて新しい符を取り出すと結界を張り直し、二人は逃がさない様にしようとしたが、既に天理も走り出しており間に合わない。
侯輝:『闇の精霊!闇の帳を下ろし俺達を包み込め!』
侯輝は天理が結界を出た事を確認するとすぐさま闇の精霊に指示を出し、自分達の周りに夏侯継からの視界を遮る様に闇の幕を張りそのまま駆け出した。
夏侯継:「待て!輝!」
夏侯継は叫び声を上げ闇の幕を神術で払いつつ、必死に追い掛けようとするが、視界があける頃には二人の姿は見えなくなっていた。
侯輝:「ああもお何あの人!今更ノコノコ出てきてさ!天理以外と子供作るだなんてなんて冗談じゃないよ!」
夏侯継からなんとか逃げおせた二人は天理が運転する車で自宅へと向かっていたのだが、先程の夏侯継の事を思い出して憤慨していた。
天理:「まあ、親父さんにも事情があるんじゃないか、代々続く神事の家系なんだろ?」
ハンドルを握りながら落ち着かせるように天理は侯輝に声をかける。
侯輝:「そんなの俺もう関係ないもん……それに、天理を傷つける様な事言ってさ。ごめんね、天理」
拗ねつつも謝罪する侯輝。
天理:「気にすんな。俺は大丈夫だ。それより……お前こそ辛かったんだろう?無理するな」
心配そうに優しく声をかける天理の言葉を聞き侯輝は涙ぐむと顔を伏せる。
侯輝:「う……うん……ありがと」
そんな二人を乗せた車は夜の闇を走り抜け二人の自宅へとたどり着いた。家に入るなり侯輝は天理の胸に飛び込み甘える様に抱きついた。
侯輝:「天理ぃ……俺絶対天理と別れるのも、天理以外と子作りなんてするのも嫌だよぉ……」
天理:「ん、俺だって侯輝と離れるのは嫌だよ」
天理は侯輝の頭を撫でながら困った様にしながらも優しい声で語りかける。二人は見つめ合うと自然に口付けを交わした。
心が不安定になりぎゅうぎゅうと抱きついてくる侯輝が落ち着くまでしばし好きにさせ、やっと空腹を思い出したところで侯輝が「ごめんね」とおずおずと天理から離れ食事の準備を始めるのだった。
天理:「お前の親父さん、あれで諦めたって事無いよな?どうするんだ?」
食事が終わり少し落ち着いたところで先程の話を切り出す。
侯輝:「だと、思う。でも俺の方だって父さんのいう通りにするつもり無いし、また力尽くでくるなら容赦しないんだから!」
闇の適正を持って産まれたがゆえに幼少の頃から忌み子として厭われ、理不尽な形で勘当された侯輝はどうしても感情的に反発してしまう。
天理はそんな侯輝の気持ちを察しつつ、力で対抗したとしてもこのままではお互い平行線であろう事を思い解決策を模索しようと思考する。
天理:「なあ、お前の一族の光の御子ってのは絶対継がないとならないものなのか?」
侯輝:「分かんない。俺ほとんど神事に関わらせられなかったし、俺自身、光の御子だって言われても自覚ないしさ。神我見姉も聞けば教えてくれたけど、役目を押し付けてきたりはしなかったから」
今、神我見に聞けば教えてくれたかもしれないが、侯輝の役目を知りながらも静かに成り行きを見守っていてくれていた姉はもう、己のせいでこの世にはいないのだと侯輝は沈痛な面持ちで語る。
天理:「いっそ月の神にでも聞ければいいんだがな」
侯輝:「神の啓示を受け取れるくらい敬虔な巫女だったっていう死んだ母さんや神我見姉なら聞けたかもだけど。俺、光の御子とか言われてるのにその辺全然なんだよね」
侯輝は父なら何か知っているだろうかと思案するが、父の考えは理解できないと首を横に振る。
天理:「そうか……光の御子がただの想像物とかだったら良かったんだが。うーん。期待薄だが少し調べれるかな。ひとまずまた来ても逃げるか帰ってもらうしかないか……」
侯輝:「うん、迷惑かけてごめんね。あ、逃げるで思い出したんだけど、さっき父さんの結界から脱出する時、どうやったの?」
天理:「ああ、あれか?神術ってのは精霊術と別と思われてるけど根本は同じだって前土護が言ってたのを思い出してな。結界をよく見たら光の精霊が……なんかわっちゃわっちゃしてるのが視えたから話しかけたんだ」
侯輝:「結界って話しかけられるものなんだ……それで?」
侯輝は少しだけ唖然としながら続きを促した。
天理:「まあお前と魔術契約してるから光の精霊と話せたんだと思うけどな。それで精霊が身内なら通してくれるって言うから侯輝は術師の息子だって説明したら開けてくれた」
侯輝:「それだけなの?!え、なんかもっとこう、すごい技使ったのかと思った」
拍子抜けする侯輝に天理は苦笑する。
天理:「何だよそれ。俺、大技は使えないの知ってるだろ」
侯輝:「だってぇ……えぇ……話せば分かるのものなの?結界って。あれ?じゃあ天理はなんで通して貰えたの?」
侯輝は驚きつつも普段天理の精霊との親和性を考えればむしろその方法にらしさを感じた。
侯輝の疑問に天理は少し照れたように応える。
天理:「それは……その、俺はその侯輝と契約もしてる……"身内"だって言ったら通してくれた」
侯輝:「精霊ザル過ぎない?!」
精霊による身内判定の適当さに呆れて反射的に叫んでしまうも、"身内"の辺りで照れが最大になった天理を見て思わずニヤける。
天理:「ま、まあそのお陰で逃げられただろ。話せば分かってくれる結界で良かったよな。神術の術式が同じなら次からはお前だってできるはずだ。だから……わっ」
その結界を作り出していたお前の父親も話せば分かるのかもしれないと言おうとしたところで、感極まった侯輝にぎゅうっと抱き締められていた。
侯輝:「大好き♡天理」
天理:「あっこらっ……風呂っ」
侯輝は先程までの怒りや沈んでいた気分はすっかり消え失せて、今はただ天理への愛情が溢れ出す。
天理:「んっあっ……あっ……」
浮き沈みが激しい恋人に流されないよう必死で嗜めなんとか風呂に誘導したが、一緒に入った後、体を互いに洗い合っていれば泡にまみれて不埒に延びてきた手に逆らえず、天理は侯輝に後ろを弄られながら口付けを受けていた。
天理:「ふぁ……ん、駄目、だって……ぁぅ」
侯輝:「駄目じゃないもん、天理も欲しそうにしてるもん」
侯輝の言葉通り、後ろを弄られながらも自らも求める様に腰を揺らす天理は快楽に蕩けた表情を浮かべる。
天理は夏侯継の出現で荒れがちになる侯輝を宥めつつも、自分もその要求に心の底で不安になり、不安を埋める様に求めてしまっているのだと頭の片隅で自覚した。
天理:「あ……ああ……侯輝、好き、好きだ」
侯輝:「俺も……天理が好き、絶対離れない……」
後ろを解され、既に前も反応し始めている天理は淫らであると恥じ入りつつも早く早くと求めてしまうのを止められないでいた。それに応え侯輝もより激しく指を動かすので余計感じてしまい、つい言葉にも出してしまう。
天理:「あ……あ……だめだ……侯輝……お前のが欲しい」
侯輝:「うん、あげる。いっぱい飲み込んで?」
切なそうに侯輝の雄を求める天理に侯輝は指を引き抜き風呂の縁に掴まらせると、後ろから自身の昂りを天理の蕾に押し当てた。
天理:「あっ……んんっ……くっ……うっ」
そのままゆっくりと押し入れられ、天理は求めていた質量に身体中が歓喜の声を上げる。よく響く浴室に、天理の喘ぎ声が反響して聞こえ、恥ずかしさで頬を染めるも、侯輝が耳元で囁いた。
侯輝:「もっと聞かせて?天理の可愛いところ」
天理:「あっ……ああ……侯輝……好き……だ」
侯輝:「ああっ、俺も、大好き、だよ、天理っ」
天理:「あっ……んっ……んんー!」
二人の荒い息づかいと快楽に喘ぐ声が反響して響き渡る。キスを求め合い、二人は互いに舌を差し出し絡め合いその度にぴちゃりと音が鳴り、互いの唾液を交換し合った。やがて頂点に達しようとすれば天理は中へ侯輝の精を求め、侯輝は腰を押し付け最奥に精をはなつ、その刺激で天理も達し、白い飛沫を飛ばした。
絶頂を迎え脱力した天理は浴槽の縁に掴まりながらも崩れ落ちそうになるが、侯輝に支えられる。
侯輝:「無理させてごめんね、大丈夫?」
天理:「……ん」
まだ快楽の余韻に浸っているのか、とろんとした表情の天理は艶っぽく、また直ぐに反応してしまいそうだったが、明日の仕事を鑑みこれ以上は負担をかけてはいけないと我慢する。名残惜しくゆっくりと天理の中から自身を引き抜くと孔からは注いだばかりの侯輝の熱い体液が流れ出てきた。
天理:「んっ……、侯、輝」
反射的にであろうため息にも似た甘い吐息を漏らす天理はとても淫らで、無理させまいとする決断が揺らぎそうになるのを抑えるのにいつも必死になる。
天理:「侯輝……もっと……中に……」
後ろを振り向き切なそうにもう一度とねだる天理に侯輝の心臓がドキリと跳ねた。明日も仕事で照れ屋な天理がここまで積極的に求めて来ることはほとんど無かった。侯輝が驚きの目で見つめれば熱に浮かされているというよりはどこか辛そうで悲しげで泣きそうな顔をしていた。
侯輝:「どうしたの?天理。明日も仕事だし無理しちゃだめだよ……」
その顔でなければそんな理由だけで止めたりなどしなかったし出来なかっただろう。慌てて心配になりながら尋ねると天理はハッとした顔をすると俯いてしまった。
天理:「っ……そう、だな……すまん…じゃ、シャワー……っ浴びて……」
侯輝:「天理っ」
侯輝は思わず天理を抱き締めていた。弾みで天理の瞳からポトリと涙が落ちる。
天理:「侯、輝……これ、違……」
侯輝:「お願い天理、天理を悲しませている理由を教えて?もし抱いてその悲しみが癒えるならそうするから」
天理は泣き顔を隠し誤魔化そうとするも優しく問いかける侯輝に観念したのか、ぽつりと呟いた。
天理:「……俺は、男だから……侯輝の子供を産む事は出来ない……。それが、辛い」
侯輝は父への反発感情にかまけて天理が父の言葉にずっと深く気に病んでいる事に気づいていなかった自分を恥じた、そして同時に嬉しくもあった。
こんなにも自分を愛してくれて想ってくれる人がいた事がとても嬉しいのだ。
天理:「沢山中に入れて貰ったら子供できるんじゃないかって、くだらない事考えてたりしてさ。馬鹿だよな……はは……」
侯輝:「そんなこと無い!ごめん、ごめんね、天理を気に病ませて……父さんの言ってる事なんて天理が気にしなくていい、俺は天理がいてくれるだけで、本当にそれだけで幸せだからね」
侯輝は天理をぎゅっと抱き締めた。
天理:「ん……侯輝……ありがとな……」
天理は侯輝の背中に腕を回し、抱き締め返した。
その後二人は互いを慰め合う様にキスをして抱き締め合いながら眠りについた。
翌日、仕事が終わり夜。
天理と侯輝が帰路につこうとすると、再び昨日同様、夏侯継が現れた。その様子は昨日よりも更にやつれた様に見えた。
侯輝:「父さんまたきたの?!何度言われたって俺は天理以外と子作りなんてしないから!」
侯輝はイラついた様子で怒鳴ると即天理の手を引いて帰ろうとした。自分一人だけならまだしもこれ以上天理の心を傷付ける様な行為は許せなかったのだ。
だが夏侯継はその場に膝を付き頭を下げた。
侯輝:「ちょっ……父さ……」
天理:「……!?」
侯輝と天理は驚いた顔で夏侯継を見下ろした。
夏侯継:「人の世に光をもたらしてきた光の御子の血筋の存続は一族の使命。血筋である妻も娘の鏡も亡くなった今、頼れるのは輝、お前だけなのだ。これまでお前にしてきた仕打ちを考えれば、お前の意に沿わぬ私の願いを聞き届けて貰える事などないと分かっている。だが先祖様方が粛々と受け継いできたその意思を私の代で途絶えさせてしまう訳にはいかんのだ。どうかお前に頼みたい。子を成してくれ輝」
侯輝:「父、さ……」
土下座までされ、されどやはり意に沿えぬと侯輝が戸惑っていると、天理は夏侯継の前に屈み、静かに尋ねた。
天理:「頭をあげて下さい、夏侯継さんの意思は伝わりました。お尋ねしたいのですがどうしても光の御子の血筋を途絶えさせてはならないという理由はご存知なのでしょうか?」
夏侯継:「分かりません。ですが代々光の御子が邪を払ってきた事は事実、大切な血であることは間違いありません。真の理由は妻か娘なら神の声が聴けたかもしれませんが私には……命をかければ可能かもしれませんが……」
天理:「そう……ですか……確かに侯輝は悪霊の類いには強いですが……」
夏侯継はまだ頭を地に伏せたまま天理の問いに答えた。
侯輝:「で、でも……俺……」
夏侯継:「そこで、天理さんにお願いがあるのです。女になって頂けないでしょうか?」
侯輝:「な……?!」
天理:「!……それは……どういう意味ですか?」
夏侯継の言葉に侯輝は驚き、天理は動揺しながらも夏侯継の真意を探ろうと質問をした。
夏侯継:「そのままの意味になります。月の神官のみに伝わる禁呪、陰陽反転の神術を用い天理さんに女になって頂き、しかる後侯輝と契りを結び子を成して頂きたいのです」
夏侯継は伏せた頭を更に地に伏せながら天理に懇願するように言った。
侯輝:「えっ、ちょっと待ってよ!天理にまでそんな危なそうな事押し付けないでよ!」
侯輝は慌てて天理を庇う様に夏侯継の間に割って入った。
天理:「……それは俺にどれくらい影響があるのでしょうか?」
侯輝:「天理?!」
即拒否せずに質問をし始めた天理に侯輝が驚きの目で見やる。
夏侯継:「記録によれば過去にもいくつか例があり私であれば術は完全に成功できると踏んでいます。体は完全に女の体になり身体能力や性に関する事は全て女に準じます。記録では子を産むと元の男に戻るとありました」
天理:「……そうですか……」
天理は顎に手を当て考え込んだ。
侯輝:「ちょ、ちょっと天理、本気で考えてるの!?天理がそこまでしなくていいよ!」
天理:「んー、まぁ、な。仕事もあるし、お産も子育ても大変だろうし……でも……」
天理は困ったように笑みを浮かべ、侯輝の頬を撫でた。
天理:「なぁ、侯輝。俺ただ単にお前の子供が欲しいって言ったらそれでも嫌か?」
夏侯継:「天理さん……!」
侯輝:「え?!あ、いやその……ううん……嬉しいけど……でも、俺は……天理と一緒に居られればそれで……」
侯輝は天理の申し出に真っ赤になってしどろもどろになってしまう。
天理:「うん……俺も同じだよ、侯輝。でも機会があるなら子供は作りたいとは思うんだ。ほら俺年上だし色々思うとこもあってさ。俺のわがままだと思って聞いてくれ」
侯輝:「ぅ……ぅううう!!俺だって天理との子供なら欲しいもん!父さん、絶対に天理は大丈夫なんだよね?!」
夏侯継:「かたじけない天理さん、天理さんの身は私の命に変えてでも保証する。子に関しても全てバックアップする。私が万一居なくても一族に護らせる。だからどうか頼む輝」
天理:「……」
侯輝:「わかった……」
天理にまで請われ侯輝は泣きそうになるのを堪えて了承の意を示した。
天理:「ありがとな侯輝。俺頑張るよ」
天理は優しく微笑むと侯輝の頭を撫でた。
夏侯継:「ありがとう……天理さん……輝……」
夏侯継は涙しながら深く礼を告げた。
こうして天理の女体化に向け準備が進められた。S.Gの業務に支障が無いよう調整し、体調管理を万全にして陽の気が最も届かぬ新月の夜を迎えた。
天理を共にした侯輝は儀式の為に数年振りに実家である夏侯の家を訪れる事になった。寝殿造の広い家屋は古さがありながらも清潔に保たれており、手入れが行き届き庭も綺麗なものだった。忌み子として疎まれていた侯輝にはあまり良い思い出の無い家ではなかったが、天理と共に歩けば今となっては懐かしく感じられた。
天理は家使えの者に禊の間に案内され儀式作法に則り身を清めた後、着替えの灰無地の長襦袢を渡され、着方が分からず家使えの者に聞こうとしたところ「俺が教えるから」と侯輝に止められ侯輝に着方を教えて貰いながらなんとか身に着ける事が出来た。
極東の血を強く引いていたらしい天理の顔立ちと和服がよく似合い清廉な雰囲気が漂う。
慣れぬ衣装に天理が少し恥ずかしそうに袖を弄りながら侯輝を見上げた。
侯輝:「やっぱり天理の方が似合うね」
天理:「お前もこれ着たりしてたのか?」
侯輝:「うん、一族で呼ばれた時とかにね。俺窮屈で仕方なかったんたけど天理が着てるといいな」
天理:「お前のも見てみたいな……俺はちょっと肩凝った」
二人してクスクス笑い合う中、「開けるぞ?」と声がして夏侯継がやや緊張した面持ちで入ってきた。
夏侯継:「お待たせいたしました。天理さん神殿へご案内します。こちらです」
侯輝:「俺っ、横で見てていい?浄めもしたし、邪魔しないよ?」
侯輝は自身の闇の適正で儀式の邪魔になるかと思いされど天理の事も心配で控えめに申し出た。
夏侯継:「……ああ構わない。では行こう」
夏侯継は一瞬複雑そうな表情を浮かべたが、すぐに落ち着いた様子に戻り二人を連れ神殿へと向かった。
秘密裏に進めている儀式の為人気の無い屋敷の廊下を進み、神殿の間に付くと天理は一人分の床が敷いてあり横たわる用に夏侯継に示される。侯輝が部屋の端に座ろうとすると「もう少し天理さんの近くにいて良い」と夏侯継に言われ、侯輝は天理のすぐ横に正座した。
天理:「頑張るな、侯輝」
侯輝:「うん……」
天理は心配そうな顔であったが侯輝の顔が見える位置にくると侯輝をそして自身も安心させる様に微笑んだ。
夏侯継が厳かに始まりを宣言すると、夏侯継は月桂樹の枝葉を両手で祈るように振りながら神の降臨を願い唱える。
夏侯継:「我は月の神に願い請う者なり」
侯輝が見守る中、天理が深呼吸し、覚悟を決める。夏侯継が月桂樹の枝葉を持つ手を組み目を瞑り神への祈りを捧げると、その身体から光が溢れ出し次第にそれは人型を成していく。
夏侯継:「月の神よ我が魂の力をもってここに顕現し御力を貸したまえ!」
その言葉と共に人形の光が月の光を思わせる美しい女神となって空中に顕れた。その瞬間からまわりの空気がゆっくりと流れる様な感覚がし、女神は夏侯継へと視線を向ける。
月の神:「敬虔なる従者よ、術を止めてください。貴方の願いは知っています。残念ながら貴方の願いは叶いません。この者にはその術は叶わないのです。」
夏侯継:「なぜです!月の神よ!!何故ですか!!」
夏侯継が驚愕し、性転換を覚悟していた天理と侯輝が驚きつつ月の神を見る。月の神がその視線を天理と侯輝に向けると一瞬どこか懐かしい瞳をしたように二人には見えた。
月の神:「私は貴方とそして月の従者達に伝え謝罪したかった事があります。光の御子はそこにいる彼で最後です。もう血を残す必要は無いのです」
月の神は侯輝を指し示しながら夏侯継に説明した。
夏侯継:「そんな!輝が最後の光の御子だと言うのですか!もしや闇の力が影響して……」
その言葉に侯輝が表情を暗くし俯き、天理が心配そうに侯輝を見上げた。月の神は首を横に振り言葉を返した。
月の神:「"光の御子"という言葉が誤解を与えていましたね、光の御子は闇の力を得て初めて真の光の御子なのです。貴方の妻の献身的な慈愛の心により、貴方の子は真の光の御子として産まれる事ができました……」
夏侯継:「……接が、私の妻が闇の力を受け入れて輝を産んでいたと……!」
月の神:「はい、貴方の妻は光の御子の真実を知り、光の御子の力の一部であった巨大な闇の力をその身を省みず受け入れてくれました。ですが、貴方の妻は力を使い果たし生まれる子が真の光の御子として産まれてくる事ができた事を伝える事ができないまま命を落としました。これが貴方にとっての悲劇の始まりとなりました。貴方は愛する妻を失い、その悲しみで真の光の御子として産まれてくる事ができた息子を愛する事ができず、光の御子の力を導くことができなくなってしまいました。しかし、貴方の息子は諦めず、認められる為に貴方の目を盗んでは一人で鍛錬を続け、貴方が導けなかった光の御子としての力を自らの手で育て上げていきます。ですが、やはり十分に育つ事ができずこれにより、もう一つの悲劇、貴方の娘に不幸が訪れ、貴方は大切なものを二つ失う事になりました。深い悲しみにより正常な判断ができなくなってしまった貴方は貴方の息子を勘当してしまいました。これが貴方に降りかかった悲劇の真相です」
夏侯継:「ああ……接……鏡……」
月の神の言葉に夏侯継が愕然とし、膝をついて崩れ落ちた。侯輝は父親を悲しげに見つめている。
月の神:「私は古の時、真の光の御子の誕生まで私の従者であるあなた方に少し手助けをして欲しいと願い、あなた方は忠実に守ってくれました。ですがかような不幸が貴方方を襲ってしまいました。私がもっと早くにお伝えできればこのような事にはならなかったでしょう。申し訳ありません」
さめざめと悲しむ夏侯継に月の神が頭を下げて謝罪した。そして俯いていた侯輝がぽつりと漏らす。
侯輝:「俺……生まれて来ない方が良かったのかな」
月の神:「その様な事は……」
天理:「そんな事言うな!」
月の神が否定するよりも強く、天理は起き上がると侯輝を抱き締めた。
天理:「俺はお前が生まれてきてくれて本当に嬉しいんだ。お前と出会えて、お前に救われて、恋人になれて、それがどんなに幸せな事なのか分かってるか? 頼む……俺の事を好きでいてくれるんだったら、生まれてきてくれた事を喜んでくれ。お前の存在が罪だと言うなら一緒に背負うから。どうかお願いだ……」
母と父と姉が見舞われた不幸は全て自分のせいだったと悲しく暗く沈み、また闇の精霊力が乱れ始めていた侯輝は愛する天理のその温もりに癒され落ち着きを取り戻していった。
侯輝:「うん、ごめん。ありがと、天理。俺も天理に出会えた事、本当に幸せだよ。それだけは何と言われても手放したくない」
そんな二人の様子を見、月の神は嬉しそうに微笑み、夏侯継は己の中に唯一残された光を見出していた。
侯輝:「真の光の御子って言われてもやっぱり良く分かんないんだけどさ。俺何かやっつければいいの?俺そういうのなら仕事で普段からやってるけど、何すればいいの?」
天理の抱擁を少し解くと侯輝は月の神を見上げ問いかけた。その問いに夏侯継と天理は神妙な面持ちで答えを待つ。
月の神:「……正しくは私にも分からないのです。全ては語れないのですが光の御子はさる方の魂の転生。貴方の魂のみが知りうる事なのです」
侯輝:「えー。俺天理と一緒に居たいから特に無いなら積極的に探さないよ?」
夏侯継:「輝!神にそのような!」
神の答えに天理も控えめに少し呆気に取られ、侯輝は母が命懸けで生んでくれた割に目的が定まらず不承知風にしていると、夏侯継が慌てて咎めた。だが月の神は優しく夏侯継を手で止めつつ侯輝に答えた。
月の神:「それで構いません。光の御子よ、いずれ貴方の力が必要になる事もあるかもしれませんが、貴方は魂が赴くまま生きなさい」
月の神は優しい笑みを浮かべながら侯輝の言葉に寛容を示しつつ、道と言うにはあまりにも曖昧な道を指し示した。侯輝と天理はもちろん夏侯継も少しだけ呆気に取られていた。天理が思い出した様に月の神に問う。
天理:「月の神、俺には貴女の陰陽反転の術が効かないのは何故なんでしょうか?」
天理は女となり子を産む覚悟していた事を残念そうに、だが同時に安堵したような複雑な表情で月の神に問うた。
月の神:「……貴方にも辛い思いをさせてしまいましたね。貴方は……精霊の加護が強すぎて何者も貴方の性を変えることはできないのです……その身に子を宿す事はできません。貴方の決意に応えられなくてごめんなさい」
月の神は天理の問いに少し悲し気に答えた。天理は極一瞬、月の神の瞳に隠された秘め事を直観で感じ取っていたが月の神を見ていると何故だか問い詰める事ができない事を、これも神の力なのだろうか?などと頭の片隅で不思議に思っていた。
天理:「そう、ですか……いえ、元々叶わぬ話でしたから……」
天理がどこか安堵はしたものの残念そうに呟くと、その様子を見た夏侯継は天理に無理やりに侯輝の子を成させようとしていた己を恥じる様に俯いた。
侯輝:「天理!俺天理が子供欲しいって言ってくれた事本当に嬉しいけど、本当の一番は天理と一緒にいる事だからね!……天理が本当は子供欲しかったならごめんねだけど……」
天理:「確かにちょっと残念だったけど、俺も一番はお前と一緒にいられる事だよ」
侯輝が天理に申し訳なさげに言うと、天理は侯輝に微笑む。天理の笑顔を見て侯輝は安心したように笑った。
月の神:「光の御子よ、辛い想いをさせてしまった私を恨んでもどうか貴方の父の事は許してあげてください。今すぐは無理でもいつか。それが私の今の願いです」
月の神はそう言いながら悲しげに目を伏せる。
侯輝:「うん……分かった。ありがとう月の神。俺は月の神がどんな神であろうと感謝するよ。だって月の神がいなかったら俺たちは出会えなかったかもしれないしね!」
月の神:「ぁ……光の御子……いいえ、侯輝。私は貴方にとても酷い事をしてしまったのにそれでも赦してくれるのですね。貴方の優しさに感謝します」
月の神は感極まったのか涙を流した。
月の神:「ではそろそろ私は去りましょう。私の従者夏侯継よ、どうかこれからは光と闇、調和していく世界の為に尽くしてくれますようお願いします。そして何よりこれからの貴方の生に幸あらん事を。私は貴方の妻と娘の魂と共に貴方親子の行く末を見守り続けています」
夏侯継:「お心遣い感謝にたえません……神よ……」
月の神は最後に優しい声音で語りかけると、光の粒子となって消え、夏侯継は膝をつき頭を下げて月の神を見送った。
ゆっくりと流れていた様な空気が再び戻る様な感覚がし、月の神の気配が消えた事を確認した夏侯継はゆっくりと起き上がる。その表情は憑き物が落ちたかのように穏やかなものだった。月の神により光の御子の血筋の継続の使命から解放され、侯輝とのお互いの誤解も解けた。夏侯継は引き締めた表情に戻ると侯輝に頭を下げた。
夏侯継:「輝、本当に今まですまなかった。全て月の神の仰られた通りだ、私は接を失った悲しみでお前と向き合う事ができず辛く接する事しかできなかった。鏡の死までお前のせいにして非は無いお前との繋がりを自ら断ってしまった、鏡がお前を気にかけていた事は知っている、お前が一番辛かっただろうに……。輝、許して欲しいなどと言うつもりはない、ただ謝らせてくれ」
夏侯継はそう言って侯輝に深々と頭をさげた。深々と頭を下げる父に侯輝は生まれてから20年もの間開いていた父との心の溝がほんの少し埋まるのを感じた。
侯輝:「うん……俺も神我見姉助けられなくてごめんね。……ねぇ父さん、神我見姉からも少し聞いた事はあるんだけどさ、母さんってどんな人だったの?」
夏侯継:「接は……とても明るくて芯が強くそして優しい……私の憧れだった。光の御子の血筋で清廉たる巫女でありながら破天荒なところもあってな、そうだなお前によく似ていた。東国の血が濃い月の神の一族に、西国生まれの私が迎えられたのは接のおかげだ。私と一緒になる為に接が反対する一族の前で大立ち回りをしてな、それは凄かった」
夏侯継は侯輝を懐かしむ様に目を細め口調は優しく穏やかになっていた。その口調に侯輝は父が母の事を深く愛しており、それ故に失った時の悲しみはどれ程のものだったのかと想像し胸が痛んだ。
傍で聞いていた天理は確かに東国の血が強い月の神の神官団において夏侯継の金髪碧眼はだいぶ浮いているなと思い、同時にいくら巫女が後押ししたとしても神官長にまで上り詰め月の神の降臨まで可能にしている夏侯継の神官としての徳の高さをうかがい知った。
侯輝:「そっかぁ……父さん、母さんの事大好きだったんだね。うん、俺も天理失ったら正気じゃいられないや、辛かったよね……」
夏侯継:「っ……ああ、私は接を愛している。そしてお前を愛せなかった事を後悔していた。輝、私が悪かった、もう二度とこんな過ちは繰り返さない、約束する。輝、どうかもう一度やり直させてくれないだろうか?」
夏侯継は微かに涙を滲ませながら侯輝を見つめた。侯輝はその真剣さに戸惑いながらも、自分に対する父の愛情の深さを感じ取り、嬉しく思った。
侯輝:「俺はもう、父さんと仲良くなれないかと思ってた……。だから、今こうして話せて嬉しいよ。父さん、これからよろしくね」
侯輝は夏侯継に歩み寄ると手を差し出した。夏侯継は驚いた顔をした後、差し出された手を握り返した。夏侯継の目にまた一筋の雫が伝った。その時の夏侯継の眼差しは慈愛に満ち溢れており、侯輝はようやく父親との一歩を踏み出せた気がしたのだった。
夏侯継:「ありがとう、輝、こちらこそ。父親として未熟な限りだがよろしく頼む」
天理:「良かったな、侯輝」
親子の縁が回復へと一歩踏み出した事を天理が喜び微笑むと、夏侯継は慌てて目元を拭うと恥じ入るのを隠す様に咳払いをした。
夏侯継:「天理さん、貴方には失礼かつ迷惑を掛けてしまった。大変申し訳ないと思っております」
天理:「いえ、俺は大丈夫で……」
夏侯継が頭を下げ、天理が首を横に振って否定しようとすると侯輝が思い出した様に声を上げた。
侯輝:「そうだ!父さんの言葉で天理すんごく傷ついてたんだからね!謝って!すんごく謝って!」
天理:「いや、お前の親父さんもうこんなに丁寧に謝ってくれてるじゃないか、俺は気にしてないから、お前がそんなに怒るなって」
天理が荒ぶる侯輝の頭を撫でると気持ち良さそうにして大人しくなった。それを見て夏侯継は困惑気味に苦笑を浮かべた。だがその表情はどこか柔らかい。
侯輝:「うーだって天理泣いちゃってたじゃん。許せないもん……」
天理:「ま、まぁっそんな事もあったけどなっ、ほら、もう十分反省してくれているみたいだし」
天理が宥めるように言うと夏侯継は恐縮するように更に天理へと頭を垂れる。
夏侯継:「重ね重ね謝罪申し上げる天理さん、更には私の方に非があるというのに庇い立てくださりかたじけない次第です」
天理:「あ、あのっもうほんといいですからっ!お義父さん頭あげてくださいっ、ほらっ侯輝、お前も機嫌直せ!」
天理が慌てながら侯輝の肩を揺さぶり、侯輝は不満げな様子だったが、やがて諦めたのか溜息を吐いた。
侯輝:「むぅ、わかったよ、天理がここまで言ってくれてるの許さなかったらダメだよね。じゃあこれでこの話は終わり!父さん、次天理いじめたら俺が許さないからね!」
侯輝が釘を刺すと夏侯継は深々と頭を下げた。そしてゆっくりと頭を上げるとその目は穏やかになっていた。
夏侯継:「ありがとう輝、もちろんだ、天理さんがお前にとって大切な人であるならば私にとっても家族も同然。天理さんの事もお前同様に大切にすると神に誓おう」
夏侯継の真剣過ぎる誓いの言葉に侯輝は満足そうに頷きつつ微笑んだ。
侯輝:「うん、わかればいいよ!」
天理:「なんでお前が偉そうにしてんだよ」
侯輝:「えへへ」
天理は突っ込みをいれたものの穏やかに微笑んだ。自分などより永らく傷付いていたであろう侯輝が笑ってくれるのが嬉しかったのだ。夏侯継はそんな天理と侯輝のやり取りを眩し気に眺めた。天理は姿勢を正すと夏侯継に向き直り頭を下げる。
天理:「正式な挨拶が遅れましたがこれからよろしくお願いします。夏侯継さん」
夏侯継:「こちらこそ輝共々末長く宜しく頼みます。天理さん……差し支えなければ私の事は先程言ってくれた様にお義父さんでも構わないのですが……」
夏侯継も改めて頭を下げ挨拶をしたのち、少し照れくさそうに言った。
天理:「あっ!すみません先程は勢いでい言ってしまったというか……」
夏侯継:「そ、そうですか……輝の子を産んでくれるとの事だったので逸り過ぎておりました。そうですねやはり婚儀を済ませてから……」
汗々と返す天理に、少し残念そうにする夏侯継。侯輝はそんな父の様子に父が大分天理の事を気に入ったのだと感じた。
天理:「こ、婚儀……!あ、嫌という訳ではなく、侯輝と家族にはなりたいと……ちょっとそこまで頭がまわっておらず……あ、俺も呼び捨てで良いですよ?」
夏侯継:「私の方は正式に親子となってもこのままが良いというか。性分でして……」
今更ながら唐突に始まった結婚前挨拶のように恐縮し合う天理と父を見て侯輝は二人とも真面目だなぁと感慨深いものを感じていた。
侯輝:「あのさ、父さん、そんなに急ぐ必要は無いと思うんだ。俺達ゆっくり時間をかけて親子になれば良いんじゃないのかな」
夏侯継:「……そうだな、輝の言う通りだ」
夏侯継は侯輝の笑顔に救われた気がしていた。
侯輝:「じゃもう遅いし寝ようよ!今日は俺達泊まっていっていいんでしょ?父さん」
夏侯継:「ああ、もちろんだよ。輝、天理さん、離れに寝所を用意してある。案内しよう」
天理:「ありがとうございます」
夏侯継に案内され、寝殿造の長い廊下を歩き、母屋の玄関を通りすぎ、渡り廊伝いで中庭を抜け、また長い回廊を歩くと離れが見えてきた。
侯輝:「久しぶりだなーこんな気分でこの家歩くの初めてだから凄い新鮮だや」
夏侯継:「輝、お前の事をまだとやかく言うものがいるかもしれないがこれからは私がなんとかする。お前さえ良ければいつでも帰ってきてくれ。さ、ここだ」
闇の適性により疎まれ、親族の家で育った侯輝は呼ばれた時にしかこの夏侯の家を歩いた事が無く、その記憶は息詰まる様な暗いものばかりだった。夏侯継は離れの部屋に辿り着くと侯輝を振り返り、安心させるように微笑んだ。
そして部屋の扉を開け灯りを点ける。
八畳程の畳の部屋と母家とは独立した風呂とトイレ、簡易の水場があった。
部屋の真ん中一組の布団が敷かれていて、枕が二つ並んでいた。脇には盆に乗った甘味と水差しと茶瓶に入った何かの飲料、布団脇にはローション、タオル。それを見た瞬間、天理は思わず赤面してしまう。珍しそうな飲み物を見て侯輝が興味深そうに手に取る。
天理:「……」
侯輝:「これ何の飲み物?ええと、マムシドリンク?」
夏侯継:「ああ、もう用は無くなってしまったが、天理さんの女体化が成功していたらすぐにまぐわうかもしれないと準備していてな。ほら、輝は男の天理さんを好きになった訳だろう?だから女体化した天理さんに興奮できないかもしれないと……」
侯輝:「もうっ!父さんそんな心配しなくていいの!俺は天理が男だろうが女だろがスライムだろうが大興奮だよ!」
夏侯継:「お、おお……そうか、頼もしいな、要らぬ事をしてすまなかった。ではゆっくりしてくれ、朝も急がなくていいからな。おやすみ、輝、天理さん」
天理が侯輝の発言に真っ赤になりながら恥ずかしくて言葉が発せられないまま母家に戻った夏侯継を見送る。戸が閉まった瞬間後ろから慈しむように甘えるように静かに抱き締められた。
天理は侯輝の温もりを感じてほっと安堵の吐息を漏らし、回された腕に手を添える。
侯輝:「まったくもう、余計なことするんだから」
天理:「親父さんなりに気づかってくれたんだろ。俺だって女になったらお前が興奮してくれるかってちょっと不安だったんだぞ?」
侯輝:「ええっ天理までぇ?俺天理ならなんだってOKなんだからね?」
ぷーと不貞腐れると天理を抱き締める腕をぎゅうと強め抗議する。天理はそれが可笑しくクスリと笑い、そっと振り向き唇を近づけ機嫌を取るように口付けた。
侯輝:「ん……天理ごめんね、俺の家の事で散々振り回しちゃって。天理の方こそ怒ってない?」
天理:「お前の辛さに比べれば何でも無いよ、それにな侯輝、俺はお前の為なら何だってしてやりたいんだ」
天理は侯輝の頬に手を当て撫でる。侯輝は嬉しそうに目を細めた。
侯輝:「ありがと。無理しないでね。俺はもう大丈夫だから。こうして天理の側に居られるだけで嬉しい」
そう言って天理を優しく抱き寄せ、肩口に顔をうずめる。
天理:「……ふ、そうだな。俺もだ。侯輝が隣にいて、こうやって触れ合って、キスをして、それ以上も出来て……幸せだ」
幸せが溢れそうな微笑をたたえる天理の表情に侯輝は胸の奥がきゅうとなるのを感じた。
侯輝:「うん……ねぇそれ以上のコトしていい?」
侯輝は天理の長襦袢の襟元に指を這わせ、そのままゆっくりと合わせ目を開いていく。天理は少し恥ずかしそうにしながらも侯輝の手に自分を重ね、「ん」と小さく首を縦に振った。
部屋の灯りを消すと部屋の中を天窓から差し込む月の光のみが淡く照らす。
天理の耳裏にキスをしながら胸元に手を差し込み、滑らかでそれでいてしっかりと鍛えられた胸板に手を添えると、天理の鼓動が早くなっているのを感じる。自分が触れている事で愛しい人がこれだけ胸を高鳴らせてくれていると思うと堪らなく嬉しかった。綺麗で美しくて可愛くて、全てを自分のものにして溺れさせてしまいたいたかった。
そんなことを考えながら首筋に舌を這わせるとくすぐったがるように身じろぐのが愛おしい。反射的に逃げる天理の腰を引き寄せ、天理の体を寝かせ仰向きにさせると、天理は瞳に自分だけを映し愛おしそうにしながらも少し緊張した面持ちでこちらを見上げてきた。
天理:「ぁ……」
侯輝は天理の帯を解き、前をはだけさせると白い肌が露わになる。その肌は月明かりに淡白く浮かんで見えた。侯輝は天理の額や頬に口付けを落とし、そして唇を重ねる。最初は触れるだけの軽いキスだったが徐々に深いものへと変えていく。天理の腕が求める様に肩に回されると侯輝は喜びを深め、何度も角度を変え貪る様に口付ければ天理はされるがままであることをぬしろ喜んでいるように嬉しそうに薄く笑っていた。
天理:「ん……は……」
唇を離せばとろんとし始めた表情の天理が目に写り、侯輝はゾクッとする感覚を覚える。もっと、この人を乱してしまいたいという欲求が湧き上がった。自分が溺れさせたかったのにこれでは溺れさせられてばかりだ。ならばせめてもと侯輝は天理の乳頭に吸い付いつくと小さく、甘く喘ぎ声を上げる。契約陣の上を舌でなぞればびくびくと身体が跳ねた。
天理:「ぁっ……!はっ……!んっ……!」
天理の身体はいつも通り反応しているのに、いつもより少し緊張し声を上げない様にしているのは、恐らく静かすぎるこの屋敷で己の声だけが響いている様な感覚になり、天理の性格上恥ずかしいのだろうと侯輝は察した。広い夏侯の家には父を初めいくらかの使用人もいる。そんな天理の心情も客間であるこの離れの近くには居ない事も侯輝は知っていたが侯輝はあえて知らん振りをし、天理の耳に息を吹きかけながら囁いた。
侯輝:「可愛い、天理」
天理:「ふ、ぅっ……!!」
耳を舐められ、吐息混じりに甘い声で囁かれ、天理はビクビクと震える。侯輝はそれに満足げに笑うと、天理の帯を完全に取り去り、長着を剥いだ。天理は恥ずかしそうにしながらも侯輝に身を任せ、素直に脱衣されていく。一糸纏わぬ姿になり月明かりに淡く照らされた美しい身体を侯輝がうっとりと眺めていれば何度交わっても天理は恥ずかしそうに頬を染め視線を反らすのだった。
天理:「……お前も脱げ」
視線に耐えられなくなったのか、天理はむぅと少しだけ不満な表情と言葉を呟きながら服の裾を掴みぐいと引っ張る仕草をして侯輝を内心身悶えさせた。恥ずかしさを誤魔化す意図もあろうが目の前の恋人は自分の裸身も結構好きである事はこれまでの交わりで知っており侯輝はそれが嬉しかった。
侯輝:「はーい♡」
侯輝が衣服を脱ぎ捨てる様を天理が見惚れる様にぽーと見上げているのを自覚し、侯輝は自他共に自慢の鍛えられた身体を見せつける様に全て脱ぎ捨てると、天理は控えめにうっとりと呟いた。
天理:「綺麗だ……」
侯輝:「ありがと♡天理はもっと綺麗だよ」
天理:「お前のが……ん……」
褒めて天理が素直に受け取れない事も想定内で、侯輝はお礼ついでにキスをして言葉を封じながら天理に覆い被さり抱き締める。視覚で触覚で嗅覚で味覚で、互いの身体を感じ合う様に二人は密着し、互いの体温と鼓動に二人は心地良さと幸福感に包まれていた。
永遠にその心地よさに揺られていたい気持ちと情欲の天秤が少しずつ情欲に傾くと侯輝は名残惜しげに身体を起こす。少し呼吸を乱しつつ天理は一瞬寂しげに侯輝を見上げたが侯輝の瞳に宿る情欲が自分と同じものであると感じるとすぐに安心したように微笑んだ。更に染めていた頬を更に少し赤らめながら脚を自らもぞりと開き秘部を晒し、そこまでしておきながらやはり恥ずかしそうに侯輝を誘う。
天理:「侯、輝……」
侯輝はただ名を呼ばれ息を詰める。天理の雄はすっかり硬く起ち上がり、その奥の蕾をじっ、と見れば侯輝を待ちかねた様に早く早くとせがむ様にひくりと収縮するのが見て取れる。そのあまりの痴態に侯輝はごくりと喉を鳴らし、すぐにでも乱暴に挿入したい意思を抑え込みながらローションを乱雑にひっ掴むみ自らの雄に冷たさも気にせず塗りたくった。
侯輝:「いくよ……!」
天理:「ああ……!来てくれ……!」
天理は侯輝が興奮し平静を欠いた様子を見て、己の誘いでこれから自分がどれだけ情欲に任せて侯輝に荒く抱かれてしまうかもしれないというのに、それでも侯輝に求められる事が嬉しくて何もかも身を任せようと微笑み力を抜く。
そんな天理に侯輝も応えるように優しく口付け、そしてゆっくりと自身の猛りを埋めていく。
天理:「ぁ……、あっ……!」
自らの形を分からせるようにゆっくり、じわりと侵入してくる熱い塊に天理は身を溶かされそうな感覚を覚えながら小さく喘ぐ。
やがて最深部まで到達すると天理は圧迫感に少し苦しそうにしながらも、その質量に悦びを感じ頬を緩ませた。
天理:「侯輝、の……」
嬉しさを滲ませたその言葉に侯輝はぞくりとする。天理の言葉に煽られ、まだ入れたばかりだというのに早くも腰を動かしてしまいそうになる。中は熱く、柔らかく、きつく、そして離さないとばかりに絡み付いてくる。まるで意志を持っているかのように。放つ言葉に乗せられた色音と表情と身体全てが己を欲して止まないと訴えている事に侯輝は堪らない程の歓喜を覚えた。
侯輝:「っ……!」
そのまま激しく突き上げてしまいたいという衝動を抑える為、侯輝はとっさに天理の横に手を付くと腕の血管が浮き上がる程に力を込めて堪えた。
その様子に天理は侯輝が自分を思いやってくれる気持ちに胸が暖かく満たされるのを感じ思わず甘い吐息が洩れる。そして愛おしそうに微笑みながらそっと侯輝の首の後ろに腕を伸ばすと引き寄せ、その耳元で甘く囁き誘う。
天理:「動いてくれ侯輝」
それだけで侯輝の心も身体も簡単に持っていかれてしまう。こんなにも求めてくれる事が嬉しい。そしてもっと求められたいと、この人をもっともっと感じさせてあげたいと思い甘やかし尽くしたくなった。
侯輝:「ん、分かった……」
天理:「あ、ぅ……ふ、う、ンッ……」
微笑む天理に一つキスをし、ゆっくりと動き出すと、天理が震えながら熱い吐息を漏らした。
まずは探るように優しく。ゆっくり、ゆっくり。前立腺を擦りながら進むと、天理がビクリと震えて中が締まる。そのまま奥へと進み、中をかき混ぜるように動かしながら奥まで突くと、天理が首を反らせて感じ入った。侯輝は一突き一突きその度に天理が上げる声と感じる表情、身体の反応を一瞬たりとも逃すまいとじっくりと味わっていく。
小さな離れの小部屋に、堪える様にだが甘く漏らす天理の喘ぎと侯輝の荒い息遣いが広がる。深夜の広い屋敷は静けさに包まれていて、自分達の立てる音が屋敷の隅々まで届いてしまっている気がして天理は羞恥を覚えた。しかしそれはお互いの興奮を高めるスパイスになる。
天理:「ぁっ……はぁ、は、……あ、……くっ、は……、あ、あ、……ああ……!」
天理は徐々に強くなっていく快楽の波を目を瞑り堪えていたが、動きの隙を見て侯輝を求める様にチラリと見上げた。そこにはうっとりと陶酔したような眼差しを向ける侯輝がいた。瞳孔を開き、自分を求めてやまないという男の欲望が露になった雄の顔に、天理はゾクりと身体を震わせてまた中の侯輝自身を締め付ける。
侯輝:「……っく!は……!天理……!大好き、天理……、天理……、天理……」
侯輝は天理が薄く涙を湛え快楽に溺れきる寸前のヘーゼルの瞳と眼が合った瞬間、その瞳が蕩けた様に潤み天理の後孔がまたきゅうと締まると、熱に浮かされたように何度も名を呼んではキスをして、腰の動きを速めた。
その律動に合わせて、天理を呼ぶ声と天理の喘ぎと繋がった場所からは濡れた水音が激しく鳴り響く。侯輝から与えられる情愛の全てが天理を乱し、天理は堪えた声の代わりに侯輝の背中に爪を立て、必死にしがみついた。
天理:「ん、あっ、は、う、……う、ん、んっ、……侯、輝、……ん、……っ!」
天理はその強すぎる快楽にもうほとんど喘ぐ事しかできず、愛しい人が何度も自分の名を呼び好きだと伝える声に碌に返す事ができない。辛うじて侯輝の名を呼べると、侯輝はそれだけでも雄をどくりと震わせ恍惚と嬉しそうに笑っては、侯輝は目を瞑り堪える天理に己が想いが届けとばかりに更に激しく攻め立てた。
天理:「あぁ、あぅっ……はぁ、あ、あぁ……!!」
天理が侯輝の肩に絡ませた腕に力を籠め、更には脚を侯輝の腰に巻き付け逃がさないようにする。そして侯輝の耳元に口が寄り熱い吐息と共に甘い声で啼くと侯輝はビクリと震え、天理とそして己の絶頂が共に近い事を感じる。
天理:「侯輝、あっ、好き、だ、侯輝、あ、あ、あ、イっ……」
侯輝:「天理、好き、天理、ああっ、一緒に、イこ?天理、天理、ああああっ!!」
天理:「侯…………!!!」
侯輝は天理が強く抱きしめると同時に、奥へ突き入れるようにして果てると、その衝撃に天理もまた達し、侯輝の背に回した手に力が入り爪を立てた。
天理:「ふ、ああ、あ、侯輝、あ、ん、ん、んー、は、あ、……ん」
侯輝:「は、は、天理、愛してる、愛してる、愛してる、天理、愛してる、天理、天理……」
甘く荒い息を吐きながら余韻に浸る。涙をこぼし焦点が定まらぬ目をしながら、薄く口を開き天理の胸が上下に揺れる。達しても尚、その動きに目が離せない。薄桃色に染まり汗ばんだ白く滑らかな肌はとても美しく艶やかに映った。
まだ繋がっている部分が、まるで溶け合うように熱くて心地良い感覚にずっとこうしていたいと思いながらも、少し無理をさせていた自覚はあるので、名残惜しげにゆっくりと中から引き抜いた。
途端に、天理が切なげな声を漏らす。それがまた堪らない。いまだ過敏であろう体の反射もあろうが、その声が行かないでくれと繋ぎ止める様な音を乗せている様に感じてしまい、再び中へと押し入りたくなって慌てて頭を振って邪念を振り払うと、「大丈夫?」と優しく声を掛ければ天理は微かに微笑んで「ん」と小さく首を縦に動かした。
少し息が整ってきた天理に水差しの水を飲ませ身体を労るようにそっと横に寝かせると、汗や白濁をそっと拭きとり自分も水をごくごくと飲み込んで一息つくと横に並び寝転ぶ。
優しく注ぐ月明かりの中、顔だけをこちらに向けて微笑むその姿は本当に綺麗だ。
天理:「まだ子供がどうしても欲しいって訳じゃないんだが、いっぺん女の体になったらどうなんのかなっていうのは少し興味あるな」
侯輝:「あー、俺ね天理が女の子になったら、どうなるのかなって予想してたよ、天理は絶対美人になると思ってた。おっぱいは少し大きいんだけど恥ずかしがりだから普段隠しちゃうの。そんで俺にだけ見せてくれるんだー」
えへへと妄想を楽しそうに語る侯輝に天理は呆れながら苦笑を浮かべる。
天理:「お前、そこまで考えてたのかよ……まあ答えは永遠に分からないんだけどな。そうだな、お前が女になったら幼顔で可愛いかもな。そんで乳はでかい」
天理は侯輝のよく鍛えられた大胸筋を横からつつきながら笑う。
侯輝:「いやん♡俺女になったら童顔巨乳なの?天理のえっちぃ。でもはじめては天理にあげるからね♡」
天理:「ほぅ……そのセリフ忘れんなよ?」
侯輝:「やさしくしてね♡」
侯輝がきゃぴきゃぴとおふざけ半分本気半分で茶化せば、天理も同じく本気半分茶化し半分で返す。そんな感じで見つめ合っていればどちらかともなく笑いを堪えられなくなり二人揃って吹き出す。
天理:「プッ……ははっ」
侯輝:「ふっ……ぷっ、あはははは!」
二人でじゃれるように笑い合う。少し声が大きくなりそうになると今が深夜である事を思い出して慌てて口を塞いだ。
クスリと笑ってまた口を開く。交わりの熱が冷めてきて少し肌寒さを感じると脇に避けていた布団を手繰り寄せ二人でかぶった。交わりの後の気怠さと二人の体温と布団とが丁度いい塩梅に二人をふわふわと眠りへと誘う。ウトウトしながらポツリポツリと会話をする。
侯輝:「天理、大好きだよ。これからもずっと一緒だよ……」
天理:「ああ、ずっと……側にいてくれ……」
そして、おやすみのキスをして眠りについた。