13.二人で通る通過点

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侯輝と天理は無事家族だけで挙式をあげると、一行は再び都に戻り、冒険者ギルド兼酒場に場所を移した。借り切っての結婚披露宴を行う。

まずは新郎二人の入場なのだが。
「抱っこして入場したい!」
「絶対嫌だ!」
既に揉めていた。
「挙式ではやってくれたじゃん!」
「身内しかいなかったから我慢できたんだよ!大勢の前とか嫌だ!」
天理も仕事仲間や知人を呼んでいたがそれ以上に侯輝の顔の広さから参加人数が多すぎた。また天理の護衛依頼をほぼ侯輝が独占していた為、天理が知る冒険者はそう多くなかった。なんにしろ恥ずかしいもんは恥ずかしい。
「説得しろ。俺を」
「また他人事みたいな事言うんだから」
下を向いて天理が言う。侯輝は天理が頭で侯輝の望みを叶えたいのは分かっていた。人前で抱っこされる勇気がないから侯輝にどうにかしろと言っているのだ。このまま抱っこされて出ていったら自分は確実に固まってしまう。手を繋いだだけで固まっていた記憶はまだ記憶に遠くない。
天理の肩を抱き寄せて耳元で囁く。
「大丈夫だよ。皆、祝福してくれるよ、それに、ほら、俺達もう夫婦だし、一緒に行こう?ね?」
天理が真っ赤になって俯きながら小さく呟く。
「……分かった。やるなら早くしてくれ。恥ずかしくて死にそうだ」
侯輝が満面の笑みで答える。
「うん。じゃあ行こうか」
天理が差し出された腕を取り、その胸に体を預ける様に寄り添うと、そのまま抱き上げられた。
「まて侯輝。もうひと押しくれ」
天理は腕を伸ばし侯輝の頭を引き寄せると、そっと唇を重ねる。
「ありがとな」
「いいよ、俺の我が儘だもん」
「そうだった」
やっとくすりと笑った天理に侯輝は笑顔を返すと歩を進めた。
扉が開かれると、そこにはおもいおもいの服装の人々がいた。きっちりドレスやスーツを着こんだ者、冒険帰りの者、既にお酒片手の仲間と談笑する者がテーブルについていた、バラバラだったが全て今日この日に二人の門出を祝いに集ってきた人々である事は疑いようがなかった。
天理を抱き上げた侯輝が入ってくると歓声が上がる。
顔を赤くしながら黙って運ばれていく天理と満面の笑みの侯輝に会場中は歓声と拍手と口笛が鳴り響き、祝福の言葉がかけられた。
会場の中心には二人の為の簡単に飾り付けられたテーブルがあり、侯輝は天理を抱いたまま用意された二人の席に辿り着くと天理を椅子に座らせる。天理の顔はどうしても赤くなってしまったがヤケクソ気味とは言え緊張しすぎないで席に着くことができた。
土花と土実は近くの席に着き親代わりの土護は既に涙目で二人を見つめている。
司会を任されたギルドマスターが進行を始める。
「それでは只今より!侯輝と天理の結婚披露宴を始めるぜ!まずは新郎侯輝から挨拶だ!」
侯輝が高らかに挨拶を始める。
「みんな今日は忙しい中出席してくれてありがとう!俺は天理と出会ってからずっと幸せで、この先も一緒に居たいと心の底から思っています!天理、俺を選んでくれてありがとう!これからも天理と一緒に幸せな家庭を築いていくから、どうか見守っていてください!」
会場内から歓声が沸き起こる。
天理は自分でも顔が赤くなるのを感じた。
「次はこっちも新郎!天理から挨拶だ!」
天理が立ち上がる。ちらりと侯輝を見ると笑顔でこちらを見ていて、少しだけ気持ちが落ちついた。
「本日はお集まりいただき有難うございます。私は侯輝と出会い、彼に幾度も救われました。彼は私にとって太陽の様な存在であり、隣にいるととても安心できます。そして、そんな彼を好きになり、共に生きていきたいと思うようになり、結婚を決意しました。..ぇぇと」
天理は言いながらもどうにもこの自由な酒場にそぐわない堅苦しい様な気がしてきた。すぅと息を吸い腹に力を込める。
「堅苦しい挨拶となってしまいましたが!皆さんのご期待に応えれるように頑張りますので、侯輝共々よろしくお願いします!!」
そう言って頭を下げると、またもや大きな歓声と拍手が湧き上がった。
顔を上げると侯輝が笑顔でサムズアップしていて天理も思わず笑ってしまう。
「さあ続いて!親族からどーしても挨拶したいってんで侯輝の兄貴から挨拶だ!」
侯輝「え」
天理「やばい長いぞ」
土花「土護兄さん巻きでお願い」
土実「何を言っているの土護兄さんのありがたいお話をちゃんと聞きなさい」
侯輝・土花(出たよ土護兄絶対主義)
「えーご紹介に預かりました侯輝の兄です。皆様には日頃から弟の侯輝が大変お世話に成っておりまして、本当に感謝しております。5年前、人より成長が遅くまだ小さかった侯輝が冒険者になると勝手に家を飛び出し、上京した時は正直心配で夜も眠れぬ日々が続きましたが、今では立派に成長し、一人前の冒険者として日々頑張っておられるのは皆様とそして一緒になってくれた天理の支えがあってこそだと感じています。まだ小さかったあの頃を思い出……」
「やめてー昔の俺の話をするのはやめてー」
(親族の挨拶ってこういう形で新郎泣かすもんだっけか)
両手で顔を覆い半泣きの侯輝の頭を無言で撫でてやる天理。
「…また、そんな侯輝が私の幼なじみであり親友の天理と結婚までしてくれた事には深く、それはもう深い感動を覚えており、これからも末永く仲良くして頂ければ幸いに思います。では、最後に一言、我が弟、侯輝を今後とも宜しく頼みます!!!以上、ありがとうございましたっ!!」
土実と最後まで辛うじて聞いていた人々からぱらぱらと拍手が起きた。土花は近場の冒険者と小声で談笑しながら料理を食べていた。
「大丈夫か?侯輝」
「なんとか…」
「流石大地の神殿長の話だったな!俺も(長くて)涙が出そうだったぜ!さて次は…え?まだあるのかい?お兄さんよ」
「待ってくれ天理の親御さんから手紙を預かっているんだ!読ませてくれ!」
「……忘れていれば良かったのに」
天理の両親は遠い他国で研究員として働いていた為、参列できず、土護が手紙だけを預かっていた。両親との仲は疎遠になりがちで、仲が悪いという訳ではなかったがお互い好き勝手やっているという感じだった。侯輝が生まれるよりも前の小さい頃は親の研究室で遊んでいた事もあるが、成長するにつれ距離が開きがちになっていた。
(どうせ大したこと書いてないだろ)
天理が小さくため息をつく中、土護が読み上げる。
『拝啓 天理へ この度は結婚の報告ありがとう。とても嬉しい気持ちでいっぱいです。
小さい頃から手のかからない子供でしたがそんな貴方に私たちは甘えてしまって寂しい思いをさせてきてしまったかもしれません。
しかし、こうして結婚報告の手紙を送ってくれるくらいに成長した事に安心しました。相手がご近所のあの侯輝君だと知った時は驚きましたが、きっと今頃幸せ一杯なのだろうと思います。
さて、天理は小さな頃、私達が見つけてきた遺物に興味もってくれて、いつか学者になって世界中の遺跡を旅してみたいと言っていましたね。貴方の研究結果がこちらに伝わってくると貴方の夢が少しずつ叶っているようで嬉しさを感じています。
その知識と経験を活かして是非新しい発見をして下さい。侯輝君という素晴らしいパートナーもいるのです。二人で協力すればどんな困難にも打ち勝てると信じています。私達は残念ながらそちらに行く事はできませんでしたが、天理の活躍と活躍後の笑顔を見れることを楽しみにしています。結婚おめでとう。 』
しんみりとする会場。下を向いて黙り込んでしまう天理。
(な、んだよそれ。好き勝手やってんなら手紙ももっと適当でいいだろ…ああクソ。馬鹿だな俺、俺が知らないだけでちゃんと俺の事考えてんじゃねぇか)
侯輝は天理が感情が大きく振れた時、耐える様に1点を見つめ表情を固めたまま動かなくなる癖があるのを知っていた。薄っすら涙が張っている。ほとんど天理の両親の事は覚えていないが、天理が愛されている事だけは分かった。天理は冷淡そうに見えてその実、情が深いのは結局親譲りなのだ。侯輝は天理の夢を支えていこうと決意を新たにする。
「天理!!」
「ぅわ!なんだ!」
泣く寸前だったところで突如侯輝に大きく呼ばれぎゅうと抱きしめられ驚く天理。
「良かったね!俺ずっと天理の事支えていくからね!」
「ちょ!わ!おい!」
赤くなって慌てふためく天理。会場内からヒューヒューと冷やかす声が飛ぶ。
(ああもう泣いてる暇もありゃしない…いやここで泣かずにすんだ、か。かなわんなぁ…)
天理は涙を瞳の端に残しながら、恥ずかしさと照れ臭さを誤魔化すように侯輝の腕の中で暴れた。
「はっはっはっ!いい話だったな!二人ともいちゃつくのは後にしとけ!じゃあ続いて乾杯に移るぞー!!皆グラスを持て!」
会場中から歓声が上がる。
「侯輝と天理の結婚を祝して!カンパーイ!!!」
『かんぱ~い!!』

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