闇はまだ暗がりの中(初夜設定変更。唐突な影をどうするか、ラストを足すか)

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翌朝覚悟して王城に出勤すると豫の人間と思われる小柄な戦士?の男にいきなりでかい声をかけられた。帯刀し、小柄ながら鍛えられた筋肉が見える。ああこりゃ退職だけで済まないか?
「自分か?王を振ったちゅう奴は」
「は、?」
「自分やろ?黒髪のー、色白のー、ちょい背の高い都のやつ。昨晩、王とヤったんやろ?」
ここ、人通り多いんですが。その指のゼスチャーやめて貰っていいですか。
「え、まあ。はい」
「合ってるやん!何してくれんねん、さっさと来いや!仕事にならんねん!」
その訛りの強い小男に腕を引かれて連れていかれる。廊下の道すがら豫の兵士がその小男に敬礼や名を呼び挨拶をしている。葉金(はがね)という名らしい。都度おはようさんと返すこの小男は豫でもそれなりの地位にあるのだろうか。
王の執務室の前に立つ。やはり昨晩の咎めか。葉金はドアを乱暴にノックすると返事も待たずに入った。どうやら葉金は相当の地位らしい。
「明鳴!いつまでしょぼくれとんねん!嫁連れてきたで!」
は?
執務机にぐったりと臥せっている夏侯輝に向かって明鳴と呼ぶ。愛称か何かか?しかし、嫁って何だ。申し込まれた覚えも受理した覚えもない。
「あー、葉金、悪いけど帰ってくんない?俺暫く立ち直れないから」
「はぁ?!何言うてんね?!お前の妃になるって言ってくれてるんやで?!何が気に食わんね!」
待て、何の話だ。昨晩の怒りがまた沸々と甦ってくる。が努めて冷静に本日のたった一つの最後の仕事の為に口を開く。
「あの、どういうご用件でしょうか?辞表提出先はこちらでよろしいでしょうか?」
「えっ!?」
「あ!自分何言うてくれてんねん!話合わせろや空気読めへん奴やな」
夏侯輝は顔を上げると一瞬俺の姿に顔を輝かせたが、俺の言葉と葉金の言葉にまた机に突っ伏した。
「わーん!やっぱり天理怒ってるじゃん!辞めるって言ってるじゃん!もうやだー!何もしたくないー!」
冷静に言ったつもりだったが怒りが漏れてたか?それにしても俺は何を見させられているんだろう。護衛兵がいない理由を察した。昨日昼の王としての姿はどこへやら。昨晩の口調のまま子供の様にダダをこねている。
「自分、天理言うたな?まずその辞表取り消せや、お前おらんようになると困んねん。政務が回らんねん」
「あの、俺への御咎めは無いのでしょうか?」
「せやからまずその辞表捨ててくれや」
と言うが早いか返事も待たず俺の手にしていた辞表を素早く取り上げびりっと破り捨てた。おい。流れ的に俺のクビは二つの意味で無くなった様だが、いまいち状況が掴みきれない。葉金は短気そうに見えて意外にもそれを察してくれたのか、説明をしてくれるようだ。
「自分がおらん様になるとこいつがこうなんねん、政務が回らんねん、そこまでは分かるか?」
仮にも王にこいつて。側近らしいが大分距離感が近い。
「そこは察しましたが、俺が居なくなると王がこうなる理由を掴みかねているのですが」
「自分にっぶいのー、まぁ肝心な事を言うとらんこいつも悪いけどな」
「あ、あの、あの、」
夏侯輝は挙動不審になっている。
「ほら!王やろ、しっかりしぃ!」ばしっと背中を叩く。
「痛っ!!もう嫌だ!天理帰っちゃやだ!」
俺の腕にしがみついてくる。いい加減にしろよクソ野郎。そんなに俺を後宮にぶち込みたいか。
「申し訳ありませんが、俺には貴方の妾になるという選択肢はありません。なので貴方のお側に居る事は出来ません」
「えっ違う、待って、待ってちゃんと言うから!」
何をだよ。
葉金が呆れたように「何もいうとらんのかい」と呟きながら夏侯輝を眺めている。
「あのね天理、俺の、俺の」
「ですから妾には…」
「ちがうちがう、俺の、俺の、友達になってください!」
「はぁ?」
隣に帯刀した葉金が居たがやはり素で返してしまった。とたん葉金が爆笑し始める。相当ツボに入った様で腹を抱えていたが部下が下品な笑い方で大爆笑しているにも関わらず夏侯輝は真剣な眼差しで頬を赤くし俺を見つめていた。
「……お友達に、流れで、どういう、俺が?」
若干混乱したので文法が滅茶苦茶になってしまった。
「あと俺、まだ結婚してないから!よろしくね!」
何が?葉金は更に爆笑していた。意味が分からないのでとりあえずスルーする。
「ええとですね」
「うん」
「まず確認したいのですが、先程おっしゃっていた友人とは具体的にどのような事を指すのですか?」
「えーと、一緒に遊んだり、ご飯食べたり、お酒飲んだり、お風呂入ったり、寝たり」
「お風呂入ったり、寝たりの部分、誤解のないの様に具体的にお願いしたいのですが」
「えっとね。一緒に入って泡風呂で身体洗い合いながらイチャイチャするでしょ!抱っこして寝るでしょ!抱き締めてキスして!それでセ」
「それ友人の範疇ではないのでお断りしたいのですが」「待って!えっとお風呂は背中流しあって、パジャマパーティして寝る!だよ!」
女子か?今更言い直されても…そうだとしても、なし崩しでヤる気まんまんじゃねーか。
「…豫では友人とセックスするのが普通なのですか?」
「違うよ!あの、えっとでも最終的にはそうしたいかなって……」
「王、辞表書き直してきてよろしいでしょうか?」
「うわーん!やだー!」
「待てぇやホンマこいつ告白もようでけへんとは思わんかったわ。ちゃんと一から全部言い!」
葉金は呆れた様に夏侯輝に言い放つとばしっとまた叩いていた。仮にも国王に。そういう文化なのか?
「痛い…天理ホント待ってあのね、俺と…俺のお嫁さんになる前提でお付き合いしてください。まずは友達からお願いします!」
は?
「は?」
命令でセックスさせておいてか?
「待って!あの俺と友達になっ」
「結構です」
俺はそれだけ言うと踵を返した。夏侯輝は悲壮な声を上げていたが無視した。葉金は俺を引き留める事もなく、ただ後ろについてきた。
前室に戻ると葉金は俺に椅子を勧めてきた。
「あいつアホやろ?ああ見えて人望はあるんやで、頭も回るしな。ただ恋愛方面だけポンコツやねん」
「はぁ。相当モテそうな容姿してますがね」
セックスも下手とは言い難かったし、とは流石に言わないでおいた。
「そうやねん。女はなんぼでも寄ってくるねんけどな。そのせいで自分から告った事無いねん。それでこのざまや」
はあ。しかしなんだって俺に…え?ガチ恋?昨日会ったばかりで?
「惚れっぽいんですか?王は」
「ん~。どうやろうな。でも今まで好きになった奴は皆身分も家柄も関係なくやったけど、一応全部本気で好いとったみたいやったな。あ、因みに自分は元平民やねん。あと、これは断ってもええんやで。王の言う事は絶対ではないんや。あくまであのバカが言い出したことや」
「はぁ」
とはいえ、初対面で首ちょんぱ見てると、そうなんですねとは言えない。
「あれが王になってから国は変わったんや。だから自分も何とかしてやりたいんやがな。お友達はともかく辞表だけは堪忍してくれんか?優秀な人間には出てって欲しないし、あいつに立ち直って貰わんと困んねん」
そう言ってあわよくばと考えている様な気がしなくもないが。しかしこの人も面倒見の良い事だ。
「…まぁ辞表は取り下げても構わないのですが。俺も平民出身なので行く当てもなく宿舎も職も失うと正直困ってましたので…」
この調子なら命の咎めなどは無さそうなので、最悪幼馴染の家で職探しを進める手は使えそうだったが。
「おお、そうか。それは助かる。ありがとう。何かあったら遠慮せず言うてくれ。あと、あいつに聞いたけど部下付けといたからな。こき使ってええで。天理がおらんかったらそいつに全部任せよ思ってたんやけど」
「来たばかりの国で内務全部やらせるとかドsですか」
「おお、自分結構言うやん!その調子であいつにも話してやってや!喜ぶで!」
なんか本当に面倒見のいい兄ちゃんの様な人だ。年下っぽく見えるが、童顔なだけな様な気がする。
「ま、今日は昨日の今日で疲れとるやろ明日からでええで」
だからその手のジェスチャー止めて貰っていいですか。下ネタ好きなおっさんか。
「いえ、クビにならなかったのであれば職務に戻ります」
「自分、まじめやなー」
「どうせ仕事が溜まる一方なので」
その付けてくれた部下とやらに情報共有しなければならないなら、その時間も必要だろう。忙しい。
「ほなな。これからよろしく頼むわ」
「はい。では失礼します」
「せや。もし良かったら今度うちのカミさんの飯食いに来いや。うまいでー」
部屋を出ていこうとするとそう声がかかった。既婚か。素直に嫁さんの料理を褒める辺り仲の良い夫婦なのだろう。
「はい。機会があれば」
そして俺は辞職するはずだった元の職場に戻っていった。執務室に戻ると早速その部下らしき女性に声をかけられた。
「おはようございます!本日より清水さんの部下として配属されました小早川速水と申します。宜しくお願い致します!」
歳の頃は近そうか、豫の国からというからてっきり夏侯輝や葉金同様ラフなスタイルかと思いきやぴしっとした官服を着た男装だったがきちっと女性らしく髪を結いあげ薄く化粧をしている。
「ああ、丁寧にありがとう、こちらこそよろしく小早川」
快活そうな彼女と共に早速情報の共有化を図る。頭の回転が速く、飲み込みが恐ろしく早い。その上知識量も豊富で質問も多く、かなり有能だ。一人で内務やらせようとさせていたがこれなら可能だろう。こりゃ楽できそうだ。夏侯輝は本気でいい部下を付けてくれたらしい事に感謝した。あくまで上司としてだ。おかげで想定よりも早く終われそうだ。
夕方になり、下城しようとすると王付きの女官の一人が呼びに来た。
「清水様、王が執務室にてお待ちです」
うぇなんだよ。残業無しじゃなかったのか。
「…分かりました、すぐに伺います」
王の命であれば流石に出向かなければならない。また命令にかこつけて躰を要求してこようものなら今度こそ辞めてやる。そう思いながら王の執務室の前に立つ。今日は衛士が扉前に立っていた。やや緊張しながら扉を叩く。
「清水です。お呼びと伺い参上いたしました」
ドアを叩きそう告げると夏侯輝から「入れ」と短い返事があった。
「失礼いたします」
入ると王…夏侯輝は書類に目を通しつつペンを走らせていた。ふぅとため息を小さくつくとペンを置き、鈴を鳴らすと衛士が入ってくる。
「今日はもう下がれ。内密の話がある」
「よろしいのですか?」
衛士は俺をチラリと見て尋ねると、夏侯輝は「構わん。他言無用だ」と短く答えた。すると護衛兵は一礼して退出した。
おい!護衛の前では話せない内容か!まじで帰るぞ!てっきりグダグダなプライベートモードの夏侯輝として話しかけてくると思いきや、やや詰まり気味だが口調はそのままで話しかけてきた。
「清水、その、夕食は済ませたのか?」
「いえ、これからですが」
「なら、一緒にどうかと思ったんだが、どうだろうか?お前も忙しいだろうから無理には誘わないが……」
おい。
「お友達の件でしたらお断りしたはずですが」
「お、王として新しくできた部下と親睦を深めたいと思う事はおかしいことじゃないはずだが」
おい、セックスは親睦深めるやつだったのか?ギリギリ王としての振る舞いは残しつつも、プライベートモードの縋る様な必死さを感じてしまい、思わず呆れそうに表情を変えそうになるのを臣下としてぐっと堪える。まぁ言っていた通りいい部下をちゃんとつけて貰えたしな。少しぐらいと思い歩み寄ってみる事にした。小さくため息をつく。
「お食事のみ、でよろしいですか?」
「もちろん!、だ」
一瞬大喜びしたのを慌てて取り繕いそう答えてきた。ああ、そんな顔部下の前で出したらダメだろ。なんでそんなに嬉しいかな。ああ、惚れてるんだっけか、俺に。未だに信じられないのだが。
「早速用意させる。少し待っていてくれ」
そしてあくまで上司と部下の体で、付けてくれた小早川や、内務の事について話ながら待つ事半刻。豫から連れてきたらしいシェフが作ったという豪華な料理が並ぶテーブルに案内された。多い。この所忙しくて小食だったから多分全部は無理だ。
「遠慮なく食べてくれ」
「は、い、いただきます。あの流石に全部は」
「ああ、無理に食べなくてもいい。だが清水は少し痩せ気味だからな。もっと肉をつけた方がいいんじゃないか?」
「はい。ありがとうございます」
余計なお世話だ!まあ今後は余裕ができそうだからゆっくり飯を食う時間ができるかもしれないが。そう思えばまあ純粋に心配して貰えるものとして素直に頂くとしよう。食事をとりながら、夏侯輝はあくまで王として上司として俺にいくつか質問をしてきた。聞いてはくるが、なんだか既に知っている様な気配がある。腐っても王に近づけさせるのだから葉金が小早川に調査させるなどして知らされているのかもしれない。
「て、清水は武芸の方はどうなのだ?」
下の名前言おうとしたろ。まあスルーしてやろ。
「元々学者志望でしたのでそちらはからっきしです。精霊魔法だけは少々使えますが」
「それは良いな!精霊適性は何なのだ?」
やっぱりそれ聞くか。あまり言いたくないのだが。大学での嫌な思い出が頭をよぎりつい言わなくてもいいことを言ってしまう。
「……王、既に知っておられるのでは?」
夏侯輝は判瞬程の間をあけてから答えた。
「ああ、どうしても立場上事前に聞かされてしまってな。本人から徐々に知る楽しみが無くて仕方がない。でもどうしても本人から聞きたかったのだ」
真っすぐな瞳で、だが少し寂しげな顔で言われてしまった。その立場じゃ知らない苦労も多いだろう。素は活発そうなこの青年が雁字搦めになっているのは辛かろう。どうせ知られているなら正直に答えようと思ってしまった。
「はい、風水火土四つです。魔力が低いので大して使えませんが…器用貧乏な感じですね」
「素晴らしいな!俺の適正は光だけだし魔力も低いから全然だ。少しだけ見せてもらってもいいか?」
「はい。構いませんが」
俺は周りに誰もいない事を確認し指を慣らし契約精霊の名を呼ぶ「シア」小さなそよ風を纏い静かに風の精霊シアは俺の鳴らした指に止まった。
「えっ天、じゃない清水、詠唱は?」
お、ちょっと驚かれた。城の台帳には適性の事は記載されていただろうが、無詠唱可はおそらく記載が無いだろうと試してみたらやはり無かった様だ。この青年をちょっと驚かせてやったのがなぜだか少し嬉しかった。
「はい、俺は適性だけはどの属性を高いらしく、簡単なものなら詠唱無しでも可能です。先にも言いましたが魔力は低いので大した事はできませんが」
すると夏侯輝は目を丸くしてから微笑んだ。ふぅん、そんな顔もするのか。でもこれが年本来の彼なのだろう。プライベートの時間であるはずの彼がその時間までも王のままでいさせるのは少し可愛そうな事をさせているなと少し思った。今、自分がちょっと許してあげればその枷は解くことができる。友人、となる事を受け入れてあげれば。そう思うと少し胸が痛む。…だが今朝の今で何コロコロ意見変えてんだって話じゃないか。
「では、他の精霊も見せて貰えるか?」
「よろしいですよ」
そんな事を考えていたからか少しお願いくらい聞いてやろうと微笑していたらしい。夏侯輝が驚きと嬉しさを混ぜた様な顔をする。
「わ、待って今のもう一回!」
「え?」
シアをもう一回?まだいるんだが。というか素が出てるぞ。
「今、ちょっと笑った顔!もう一回見せて!天理!」
おいこらああもう。
「夏侯王」
決意して真剣に見つめ返す。
「あ、ごめ、じゃない、今のは忘れ、よ」
王としての顔は戻したがどう見たって落ち込んでいる。仕方ないな。
「昼間の友人の件ですが」
「な、なんだ。受け入れなくてもクビにする事はない。だから安心して政務に…」
「お引き受けいたします」
「えっ」
「友人、いえ友になりましょう。お互いの立場など気にしないで済む関係になりましょう」
「い、いいの!?」
「友人としての関係であれば。ですよ?」
躰の関係は無しだぞと暗に告げておく。
「う、うん。友達になろう!で、お願いがあるんだけど、いいかな」
「なんですか?」
一気に素になった夏侯輝に苦笑しているとそれだけでも嬉しそうにした。面白いな。
「普通に喋ってくれると嬉しいなって。敬語とか無しで。ずるいよ葉金にはもう少し素で喋ってたって聞いてもう居ても立っても居られなかったんだから」
それで夕食か。思い立ったら即行動か。政にも反映されてそうだ。
「……本当によろしいのですか?無礼ですよ俺」
念の為確認してみる。
「もちろん!俺達は対等でしょ」
よし覚悟するか。この友の為に。すぅと深呼吸する。
「はーーっ。では遠慮なく。よろしく夏侯。お前その葉金さんだけど、あまり迷惑かけるなよ、あんなに面倒みてくれてるんだから」
驚く夏侯にこれでもいいんだな?という視線を投げかけてやる。だがすぐに破顔して答えた。
「わーい♪よろしくね天理!ねぇっ性呼びもやめてよ!名でも字でもニックネームでもいいからさ!」
ニックネームねぇ…空を数瞬眺め字面を頭に浮かべる。
「じゃあ侯輝。でいいか?」
俺で言う所の水天だ。彼の一族の命名だとこの短縮呼びはされる事はあるまい。短縮しても性と名が一字ずつだからだ。だがしかし珍しく性が二文字の夏侯輝なら可能な呼び方だ。夏侯は一瞬?という顔をした後、すぐにその由来に気づくとやはり楽しそうな顔をした。
「えへへ、それでいいよ!うーーやったーー天理と友達だー!」
「はいはい良かったな」
「適当すぎるよ!俺、ずっとこうやって話したいと思ってたんだってば!!」
「わかったから少し静かにしろ。お前声でかい」
「天理、厳しい、葉金みたい」
すぐにシュンとした。浮き沈みでかいな。
「あの人言葉が荒いだけで優しいだろ。なんだ、厳しいなら態度と言葉元に戻そうか、王よ?」
「やだ、戻さないで。でも天理も優しいんじゃないかなって思うよ」
「そうか?」
「だって精霊、俺の知らない方法で呼び出して俺を驚かせようとしてくれたのかなって。なんだかあまり話したくなさそうだったのにさ。それに、あんなに嫌な思いさせちゃったのにこうして友達になってくれたし」
「別に……大した事してないだろ」
「照れてる」
にこにこすんな。全く…調子がいいというか憎めない。こういうとこが葉金が放って置かない理由なんだろな。照れ隠しに話を戻す。
「で、他の精霊も見たいんだよな」
指を鳴らそうとすると「待って」と止められた。
「なんか嫌そうな雰囲気あったから無理にしなくてもいいよ?」
まあ低い魔力のせいでちょっと呼ぶだけで疲れるっちゃ疲れるけどお友達サービスだ。
「まあいいよ、お前なら。ウィン」
指を鳴らし近くの水差しから水の精霊を呼び出す。
『あいよ!呼んだ?』
『あー呼んだ呼んだけど用はないからゴロゴロしとけ』
『そうなのか?じゃゴロゴロー』
水の精霊ウィンはテーブルの空いたスペースの上でゴロゴロし始めた。おい、テーブルクロス濡らすな。
「凄い!凄い!水の精霊?は喋られるんだね!」
「あー。シアは無口なだけだ。喋られる」
同意する様にシアが小さくフワフワと揺れる。
「へーそうなんだー精霊語解ったら俺も話せるかな」
「一応な」
「わー!シア、ウィン、こんにちはーよろしくね!」
通じないと解っていても構わずシアとウィンに話しかける侯輝にウィンは何となく友好的なのは解るのか『なんか解らないけど、おー!』と答え、シアは侯輝の周りをフワリと一週すると帰ってきた。侯輝は嬉しそうに笑った。得体の知れないものだってのに打ち解けるの早いな。
「あの、さ、天理、なんでこんなに楽しそうに精霊呼べるのに精霊の話するの嫌そうだったの?」
「ん…まあ大学でちょっとな。精霊適正4種あるのは極稀なのは分かるか?」
「うん、普通1つか2つだよね」
「ああ、それで何度か無理な実験に付き合わされてた。奨学金で通ってたからあまり逆らえないのもあって。ある日実験中に魔力が足りなくてその、魔術契約させられそうになってその時の事がちょっと…な。ギリ逃げたんだが、逃げられなければそこでロストバージンだったな」
無意識に身体を擦りながらはははと笑うと侯輝は真っ青になった。
「ごめんなさい!」
そして土下座した。
「いや、お前が謝る事じゃないだろ?そん時の貴族の教授ももう都近くにはいないし、もうそんな事にはならないだろうから大丈夫だよ。新しくこの国を統べるお前だから隠さずもう話そうと思ったんだ。何かの役に立つかもしれないしな、魔力低いけど」
「だって俺、結果的に天理にそいつと同じ事しちゃってるじゃん。手出しちゃってるじゃん…」
「んーああ、そっちな。それはまあ…いいって」
「だって俺、無理やりやった事まだちゃんと謝ってない。本当にごめんなさい」
「あれは合意だろ。仕事だと割り切ってたし。正直腹も立っていたけど、もう過ぎた事だ。」
侯輝は仕事…ああうんそうだよね…と呟きながらショックを受けつつも尚返した。
「よ、良くないよ!だって……天理、あの時傷ついてた。泣いてたじゃん」
お前に中出しされた後に泣いてた事か。
「あれは…たまたま涙出たんだろ」
「……天理、気を悪くしたらごめんね、天理は自分で思ってるより繊細だと思う。あの時だって自分でも訳分からないって感じだったし、本当は傷ついてると思う」
「……」
こいつは俺が目を背けていた事に容赦なく踏み込んでくる。まあそうなのかもしれない。だが弱いままじゃ生きていけないから自分自身に知らんフリしてるしかなかった。
「俺、そんな天理見て凄く頑張って生きてるんだって思ったんだ。仕事も勿論、その生き方が健気だなって。弱いって事じゃなくてこれがホントの強さなんじゃないかって。そんな天理の事が好きになっちゃったんだ。守りたいっていうか幸せにしたいって」
顔を赤くしながら真っ直ぐそういい放つ侯輝を俺はああ、本当にこいつは俺の事を好きになったんだなぁ。それが好きになった理由なのかぁと他人事の様に聞いていた。そういえば事後にそれっぽい事を言ってた気がするが俺混乱してたな。今もしてる。それにしても俺こんなこと言われたの初めてかもしれない。一人で生きてきたつもりはないし、助けて貰った人だっている。けど…なんか顔がじわじわ熱い。視界がうっすら滲む。
「ご、ごめんね!また泣かせるつもり無かったんだけど!」
「え?や、違う。これは嬉しいからだ」
つい言ってしまった言葉は本心で嘘ではなかったが何故か恥ずかしかったので顔を伏せた。雑に涙を拭い、深呼吸する。
「……ありがとうな、侯輝」
顔を上げるとまた侯輝がまたぽーっと赤くなった。どうした?
「侯輝?」
「あっ何でもないよ。うん、どういたしまして。あの、ホントに、ごめんね。」
「もう謝るの無しだ。お前との…セックスは本当にもうどうとも思ってないから」
単にお前が悪いとは思っていないと言いたかったが、少し言い方が悪かったらしい、またちょっとショックを受けたようだ。
「う、うん。ありがと。ぅぅ」
「……お前まだ俺の事を好きなままなんだよな?」
「うん。ダメかな?」
「想う事は止められないもんだと思うし、お前の性格だと隠してろって言われても無理なんだろ?想いに相応に応えろって言われると困るんだが」
「天理は俺が天理を好きでいるのは嫌じゃないの?」
「別に。ただお前が俺の事好きだってもう分かってんのに俺が友達付き合いしかする気がないってのは酷くないかって思ったんだが」
「天理は優しいね。全然いいよ!好きである事が嫌じゃないだけで十分!出来れば好きになって欲しいのはあるけど」
「それって辛くないか?」
「辛くなる程まだ何もやってないからね!」
ポジティブだな。
「ただ天理に好きな人できちゃったら辛いけど。ねぇ天理の好きなタイプってどんな人?前彼女いたんだよね」
「どんな…」
今まであまり考えた事なかったので空を見る。
「付き合ってた彼女のタイプは?」
共通点あったかな?外見の共通点は無いな。うーん強いて言うなら
「積極的で物好き?」
「積極的……天理ひょっとして全部相手から告られてる?」
「ああ、そしてフラれてる」
「天理って来るもの拒まず去るもの追わずタイプ?」
「……そーなるのか?」
首を傾げる。
「…じゃなんで俺ダメなの?同性だから?」
「いや?そういう感じでも」
あれ?なんでだ?そしてお前なんでガッツポーズしてる?
「よっし、じゃあ俺は来るもの拒まない天理が初めて拒否った相手な訳だ。よぉぉし!手強そうだけど頑張って惚れさせるぞおおお!」
どういう理屈だ?急に元気になって。
「まあ嫌いでは無いぞ?」
「それじゃダメなの!ちゃんと俺に惚れさせないとダメなの!」
「そうなのか。まあ頑張れ」
「もー!すぐに他人事みたいになるんだからー!早速いくよ!天理!俺に惚れて!付き合って!」
言いながら侯輝はシャツを脱ぐとポージングをした。男でも惚れ惚れできそうな肉体で羨ましい限りだ。だがしかし。
「…いくら俺でもそのアプローチが恋愛ポンコツ過ぎるのは分かるぞ」
「うぅ、い、言ったなー!自分だって告白した事無い癖にー!俺だって今必死なんだよ!何で伝わらないのー!?」
いや必死なのは伝わるんだが。肝心なことが伝わって無いと言うか。残念すぎると言うか。
「まあ、お互い様だな」
「俺達ってひょっとして恋愛初心者同士?肉体関係はもうあるのに?」
「そう聞くと俺も残念な人達だな…事実だけど」
「で、でも、俺の気持ちはもう伝えてるから。絶対惚れさてやるから覚悟してね!」
「はいはい、頑張れ。俺、お前のそういう前向きな所結構好きだよ。」
そう言ってやると侯輝は顔を真っ赤にして固まってしまった。
「あれ?侯輝?」
呼びかけると我に帰ったようで、慌ただしく食事を再開した。
「うわぁぁぁぁん、負けたー!!」
「何が?」
そうして俺達は友達以上恋人未満の関係となりまあまあ楽しく?食事を終えた。

翌朝、いつもの様に登城し執務室に入ろうとすると相変わらずでかい声でそれでいて機嫌の良さそうな葉金に呼び止められた。
「おはようさん!ようやってくれたな!ありがとうな!」
いきなり礼を言われた。何の事だろうか。
「おはようございます…?」
疑問詞を頭の上に浮かべていると
「明鳴と仲良うしてくれる事になったんやろ自分、あいつ朝からきっしょいくらい機嫌良うて政務捗って助かるわ!これからも頼むで!」
「あー……はい」
単に政務が捗って都合が良かったのだろうが、弟かの様に扱っている侯輝が落ち込んでいるところから復活したのが嬉しかったのだろう。
「ああ、それと俺今日から暫く忙しゅうなると思うから、悪いけどまたしばらく来れんようになるかもな」
「それは構いませんが、何かあったんですか?」
「うん、まあ、ちょっとな」
侯輝は豫からの侵攻にあたり、旧国の人材はそのまま活用する姿勢でいたが、血統だけで続いている能力の無い貴族を排除しようとしている。派閥から外れた貴族や平民出の者には支持が高いが、旧国王の首を取り実権を握ったと言え、力のある貴族の反発はある。その制圧なりに出向くのだろう。
「お気をつけて」
心から丁寧に礼をすると侯輝は一瞬驚いた顔をしたが、微笑んで「おう、行って来るわ。明鳴のこと頼むで!」と出立の為去っていった。

とは言ったものの、俺は俺で新体制の中忙しく、侯輝は侯輝で王として多忙であったため公用で会うことはあってもプライベートで合う時間はなかなか取れず痺れを切らしたかの様に公用資料の中に『会いたいよー(>_<)』などメモが挟まっていたので『自重しろ』と返してやったら『(´・ω・`)』『時間ができたらまた食事に誘ってくれ。待ってるから』『(^▽^)』などと学生ばりのメモの応酬をしていた。

そんな数日が過ぎた朝、いつも通り執務室に入ると既に小早川が書類を広げて待っていた。
「おはようございます!清水さん。早速ですがこちらの資料の確認をお願いします」
相変わらず仕事早いな、渡された資料に目を通し、必要事項を確認していく。国が変わろうが俺ら役人のやることは変わらない。ただ名門貴族というだけでろくに管理できていなかった糞ったれな上官の元で働いていた時と比べると大分心は軽い。改革を推し進める侯輝の元、今まで不世出の優秀な人材が集められ、良い方向に変わっていった。俺は俺の仕事をこなして行けばいい。いいんだが。
「……うん。問題無いな。助かるよ。ふぅ。」
「ありがとうございます。どうかされましたか?」
「俺の元上官なんだが、あれはあれで居てくれた方がいい事もあったなと思い直して」
大変気分の悪い野郎だったんだがコネだけはあったので、手回し交渉の類いだけは裏で着服しつつせっせとやっていた奴だったのだが。今俺がそれをやらないとならない。正直苦手だし、何よりめんどくさい。初日の侯輝にこれを聞かれたら怠慢だと言われるのは実は俺もだったのである。まあやるけど、めんどくさいけど。
「輝王に見せしめの為に直接引導渡された清水さんの元上官の方ですね。あまり勤勉な方ではなかったと聞きましたが何か特技が?」
「まあ特技っちゃ特技か。まあ役職上は普通なら当たり前の仕事なんだがな。各省に対しての交渉がコネと家柄に物言わしてゴリ押ししてたから楽だったんだよ。今、空席で俺が代行してんだけど、正直苦手だし、めんどくさい。元上官のせいでうちの印象くっそ悪くなってって当たりが悪い。特に平民出の省長とか。悪い人達じゃないんだが」
「なるほど…お疲れ様です。その分は私、精一杯フォローしますから」
「ありがとう、頼りにしてる。ああ、優秀な上司も降って来んかな、楽したい」
軽くダレていると小早川にクスクスと笑われた。
「清水さん、真面目な方だと思っていましたが意外と適当な所もあるんですね」
「真面目だなんて初めて言われたぞ。会って間もないとそう思えるのか?」
「私この国に侵攻してくる前に豫から内偵に入ってたんですけど、噂に聞いていた通り杜撰な管理体制で実数の把握に苦労するかなーって思ってたら、そういう国の中でも支えてる人達ってやっぱりいるんですよね。で、綺麗に纏まってる資料があったんで凄く助かった覚えがあるんですよ」
にこにこと俺を見られた。おいその資料とやらはここの…俺のやつか。そういえば幾度か保管資料が不自然な時があったが…
「で、その資料の文責に大体、清水って印されてたんで、ああこんな真面目な人もいるんだなって。輝王に侵攻が成功したら清水さん絶対引き入れてくださいねって言ってあったんですよ♪」
いや、もう侵攻終わってるからバレてもいいのかもしれないが内偵が自分で内偵って言うなよ。信用されてんのかバレてもどうとでもなるとでも思ってんのか…。しかし、俺の資料が敵に塩送ってたとかなんとも皮肉な話だな。
「蓋を開けたら適当なやつで悪かったな。その話が本当ならお前さんの推薦で俺は職も命も助かった様なもんなのに」
「いえいえ♪意外性があった方が楽し…好感持てたりしますし」
「なんか楽しそうだな」
「それと清水さんの最終採用は結局、輝王の判断ですよ?それにあの方の目は下手な情報より確かですから」
まあ確かに侯輝は人を見通せる様な所はある。これは喜んで良いところだろうか。
「そうか……ありがとうな」
「お礼でしたら輝王に言って差し上げたらきっと喜びますよ♪」
「いや、お前さんにも。評価してくれたんだろ?」
「……清水さんて、実は女たらしですか?」
俺が首を傾げていると小早川は一瞬目を丸くした後、悪戯っぽくそう言った。
「は?うーん告白された事ならあるが…結局全部別れられてるからやっぱりダメなんじゃないか?」
「あら。天然タラシさんですか…輝王大変そうだなぁ…」
「何が大変なんだ??」
「いえいえ、何でもありません♪」
そんで何で楽しそうなんだ。
「何だよ、気になるじゃないか…」
「是非輝王様に聞いてください♪」
「侯輝に?よく分からんが分かった…時間取れた時に聞いてみる」
小早川は一瞬ん?としたがすぐにやはり楽しそうにしながらもテキパキと業務をこなしていくのを見てハッとなると業務に集中すべく頭と手を動かし始めた。
「それと、上司の方も輝王にご相談されれば付けて頂けるかもしれませんけど、豫も今、人手不足なのですぐには厳しいかもです。清水さんがどなたか良い人材を紹介してくださると助かります」
「そうか、今ならその手が使えるな。心当たりがあるからあたってみる」
かつての恩師の事が頭を過った。豫となった今のこの国なら呼び戻す事が出きるかもしれない。何より俺が楽できるなら、動かない手は無い。
「お知り合いがいるんですか?」
「ああ、もう隠居の歳だし断られるかもしれないけどな」
「楽しみにしてますね」
「お前さんはいつも楽しそうだなぁ」
気苦労くらい有るだろうに良い事だなと思う。
慌ただしく業務をこなしながらも、それでも身分に関係なく真っ当に評価される分かっていると忙しくとも充実しているように感じられるものだ。各所反発が根強い所もまだあるが、少しずつ変わっていく。昼が過ぎ、一段落した辺りで早速行動に移すことにする。
「お出かけですか?どちらへ?」
「あぁ、侯輝……夏侯王に会いに行くつもりなんだが。上司の件で相談しにな」
そういえば侯輝の事を愛称で人前で呼んでしまっていることに今更ながら気づいて恥ずかしくなった。さっきから言ってしまっていたはずだが…妙ににこにこしていると思ったらさてはわざと突っ込まなかったな小早川…!小早川にも大分気が緩んできたものだ。
「ふふ、早速ですね。行ってらっしゃいませ」

王の執務室前まで来ると護衛兵に軽く挨拶をして入室の許可を貰う。在席中で良かった。名を告げ返事があると一礼して入る。侯輝は今は王の顔をして忙しそうに書類仕事をしていた。顔を上げ俺を見ると態度は変えずに本当に一瞬だけ目が嬉しそうにする。こらこら公私混同だぞ。だがちょっと悪くないなと思ってしまう辺り侯輝にも気が緩んできたなと思う。気を引き締める。
「今日は王にお願いがあって参りました」
「なんだ、改まって」
「俺の上官が未だ空席となっている件、補充のお願いに参りました」
「今、うちも人材不足だから難しい。清水が代行できてるし、そのまま省長に任じてもいいぞ。仕事が増えて辛いだろうが」
少しだけ辛そうな顔をした。俺の残業が増えるのは本意ではないのだろう。
「いえ、俺の仕事ぶりが評価されているのはありがたいのですが、どうせなら能力の高い方にやっていただきたく思います。俺では荷が重いです」
勿論楽したいなどとは言わないでおく。
「そうか。出世のチャンスなんだがな、俺はお前も適任だと思うぞ。で、その口ぶりだと誰か推挙したい人物でもいるんだな?」
「はい、元貴族ですが下級の家の出の者になります」
「清水、俺が貴族を撤廃したいのは分かっているな?下級であろうと」
王として、鋭い目で確認してくる。血統、縁故の類いは侯輝が王となってからはまかり通らぬものとなっていた。
「はい、存じております。その人物は派閥に属さず旧王国にて少し…トラブルに巻き込まれ官職を離れています。ですがその人柄で健全なコネクションが豊富にあります。王は現在各省の掌握に奔走されているものの、思うように進んでいない所があるかと思います。彼女はその一助となりうる人材です」
「続けてくれ」
「はい、王の側近の官員が足りていない事も把握しています。彼女ならばその人材の収集も可能です。彼女を召還する事で王は円滑に業務を進められると考えます」
「わかった。……彼女、というのは、どういう」
少しだけつまりながら確認してきた。
「実は王に確認してから、伺う予定だったのでまだ受けて頂けるか分からないのですが、引退間際の老齢の女性です。大変思慮深い俺の学生時代の考古学科の恩師なのですが…その官職を追われる原因を作ったのが俺なので、いつか恩を返したかった…というのが本音です」
仕事を楽したいのは事実だが、これは偽りない本心だった。
「分かった。話を進めてくれ」
「ありがとうございます。それでは」
「待て清水。……この資料を確認してくれ、今」
立ち去ろうとすると、侯輝は何やらサラサラとメモ書きに書き記すと、資料に挟み込んで渡してきた。資料自体はよく見れば破棄寸前の裏紙だ意味がない。となれば本題はメモか。資料を捲る『忙しいだろうけど、理由付けて会いに来てね♡』おいい!ヒクつく顔を全力で抑えながら「分かりました。」と一言言うと、一瞬ニコとしたのを見て足早に部屋を出た。全く…。

俺は早速、恩師の廻先生に連絡を取るべく書状をしたため返事を得ると数日後に恩師の元に訪ね承諾を得ることができた。その後、王からの正式な依頼として王城に招く事になった。ある意味気ままに、かつて俺に教鞭を振るっていた考古学の研究ができなくさせてしまう事は心苦しかったが廻先生は「これも先を行く者の勤めですよ。それに大学に考古学科を復活させられるかもしれないという私情もあるのです。やはり貴方を助けて良かったとすら思っていますよ」微笑みながらそんな事を言われてしまった。またもや頭が下がる思いがする。
侯輝も廻先生を気に入ったらしく、晴れて廻内務省長として就任すると各省との連携がスムーズになった。
こうした事も含め各人の思惑が上手く噛み合った結果、この国は安定していった。

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