千の始まりの葉
「ほんとに明け方近くまでやるやつがあるか!馬鹿!」
天理が顔を赤くしながら大急ぎで出勤の支度を済ませ、怒鳴りながら玄関を出て行くのを見送りながら俺はニヤリと笑みを浮かべる。
「だって、昨日の天理すっごく可愛かったし、天理が焚き付けたんでしょー?腰大丈夫?抱っこしてく?」
「うるさい!行ってくる!」
「待って、いってらしゃいのちゅー」
「ああもう!」
そう言ってキスすると真っ赤になりながら出ていった。さて、俺もギルドに仕事の依頼を確認しに行かないと。
神様絡みの情報について、魔術学院での調査は天理に任せるしかないけど、神殿関係はこっちでも仕事の合間に調べとかないとね。土護兄がこっちにいれば大地の神の神殿のツテには困らなかったんだけど。何か神殿絡みの仕事ないかな。神官の知り合いもいるけど、神官の冒険者って大体忙しくてなかなか捕まらない。仕事で仲良くなった神殿の人もいるけどこのの件はかなり信用のおける人でないと相談できないから難しい。
そんな事を考えながら冒険者ギルドにたどり着くと、ギルマスの奥さん…パルマが今日は依頼受付をしていた。
「おはよーございまーす!お仕事なんかある?」
「おはようにしちゃちょっと遅いけどね、侯輝、アンタまた”徹夜明け”かい?」
そう言いながらパルマが呆れたような視線を送ってくる。
「えへへ」頭をかきながら笑う俺に「アンタの嫁、学者なんだろ、ほどほどにすんだよ」いつまで新婚気分なんだいとため息をつくがすぐに笑顔になった。
「はい、これ」と言ってパルマに一枚の紙を手渡される。
「護衛依頼?しかも俺指名?」
「そう。極東から人探しで旅して来た巫女さんがアンタの故郷の街までの護衛を頼みたいんだってさ。ついでにその街の街案内も欲しいらしいからアンタにぴったりってわけさ」
「ミコさんって東国の神官の女の人の事だっけ。へぇ面白い話聞けるかなぁ」
「どうだろうねぇ。見た事無い服だったけどね。ま、とりあえず受けてみなよ。報酬も悪くないしね」
「そうだね、じゃあ受けるよ」
「はいよ、確かに承ったよ。ところでアンタ、最近嫁さんの事で何かあったかい?」
「え?なんで?」
「いや、ここのところ何だか浮かない顔をしてる気がしてね。何か悩み事があったら相談に乗るよ?」
流石によく見てるな。心配させちゃったかな。
「んーありがと。解決してないけど、解決しちゃったようなものかな」
天理と共にあればもう闇の半身の魂をただ怖がらなくていい、受け入れられるって思えるから。それで昨晩は盛り上がっちゃったけど。えへへと笑う俺に「そっか、ならいいけどさ」とパルマは苦笑した。
パルマに依頼者と明日会う約束をして、今日はギルドの小用をこなした。新人冒険者訓練所の卒業試験のリハーサル手伝いをする。精霊適性を視る事ができる人が今手が空きそうに無くてギルマスが頭を抱えていた。天理なら視られそうだけど天理も仕事あるしなー…と呟いたら報酬は出すからダメ元で頼んでおいてくれと懇願された。まだ時間があったので新人達の訓練に付き合っていると日が暮れていた。
帰宅途中晩飯食材の調達をしようと市場に寄ると丁度天理も買い物に来ていた。
「今日は疲れてるだろうから俺が作るよ」
昨晩疲れさせちゃったしね。
「それじゃ遠慮なくそうさせて貰う。今日はお陰で眠かったし、部長にまで『仲が良いのは良い事ですね』って笑顔で突っ込まれたしな」
「ゴメンね。あ、俺、明日から仕事でまた家空けるから。故郷までの護衛と街で人探し。人探しがどれくらいかかるか分からないけど…5日位の拘束報酬は提示されてるからそれくらいはかかるかも」
「そうか…じゃあ実家で寝泊まりか」
「そだね、宿賃浮くし♪」
「で、土護に手紙書いたか?お前」
「!」忘れてた…
「こっぴどく説教されてこい」
「うわぁん土護兄の説教やだよー!ついて来て天理ー!」
抱きついて懇願するが「知らん。いきなり5日も仕事休めるか。反省してこい」街中でやめろと容赦なく頭をはたかれた。
食材を買い込みちょっとトボトボと一緒に家路につく。
「5日か…」
ボソリと寂しげに天理が呟く。
「ごめんね、できるだけ早く完了させて帰るからね!」
「まだ何も言ってないだろ…ちゃんと仕事済ませてこい」でもありがとなと頭を撫でられる。
「うん…あ、やっぱり昨日頑張り過ぎない方が良かったね。天理今日はゆっくりしとく?」
そう耳打すると顔を赤くしながら「一回…位…なら」と返ってきた。やっぱり寂しくなっちゃうのかな。
「えへへ、じゃあ今夜はサービスしてあげるね♡」
「お前だって仕事あんだから無理しなくていいからな」
とそっぽを向き言いつつも少し嬉しそうにしていた。
帰宅すると現れた希守に明日から天理の事を頼み、料理の腕を振るい、夜はエッチな腕を振るった。俺も5日天理に触れられないのは辛いから一回とは言え存分に天理成分をチャージして天理にもチャージした。昨日と違い穏やかに抱いてもそれはそれで嬉しそうにする天理が可愛くて仕方なかった。
翌朝、朝早めに起きて旅支度を済せる。今日は天理より早く家を出る俺は玄関で行ってきますのキスをして愛する人に「気をつけて行ってこい」と見送られて出発した。こんな時いつも天理の言葉を思い出す。『職業柄いつ何時何があるか分からないから覚悟して見送っている』と。気を引き締めて行こう。
ギルドにたどり着くと今日も受付をしていたパルマから依頼主に引き合わされる。東国の神官…巫女というらしい彼女は二十代半ば程であろうか、腰ほどにまである黒髪を一つに束ね涼やかな瞳をした神秘的な女性だった。異国の衣装は希守が着ている物に近い。
「こんにちは!護衛依頼を受けた侯輝だよ。行き先は俺の故郷の街だから街案内も任せてね!」
いつも通り元気よく挨拶をするとその依頼主である巫女は一瞬大きく眼を見開くと「貴方…は…」と外見通りの静かな声で、されど驚いた様に呟いた。
「あの?」
「あ!失礼致しました。わたくし、[[rb:神我見 > かがみ]]と申します。お引き受け下さりありがとうごさいます。よろしくお願い致します」
神我見は一瞬慌てつつもすぐに丁寧な口調で頭を下げてきた。
「こちらこそ!早速出発でいいのかな?」
「はい。…あの…いえ、道々お話させてください」
やはり何か言いたげだったがひとまず俺の故郷へ出発した。
護衛付きの商隊の一団などがあればついでに混ざって行けば安全度が増したのだが丁度無く、神我見もできれば大勢と一緒では無い方が良かったらしく二人で行く事になった。静かな人だったが質問すれば答えてくれたし何か聞きたそうな雰囲気だ。歩きながら会話する。
「神我見さんは巫女っていう神官みたいに神に使えてる人なんだよね、何の神様なの?」
「わたくしは月の女神にお仕えしております」
「えっと太陽の神の妹神だっけ」
「はい、太陽の神は今や伝承に残る程度の[[rb:無祈 > むき]]の神ですがよくご存知ですね」
「えっあ、うんちょっと最近知る機会があってね。無祈の神って?」
流石に自分がその半身である闇の半身の魂を継いでいる事は言わないでおく。神我見はじっと見つめつつも特に追及もせず頷いた。月の神の巫女ならば神の伝承も詳しいかもしれないと質問してみる事にした。
「無祈の神とは神への祈り手がいない神…皆様に分かりやすく言うと太陽の神の様に神官が存在しない神の事です。そこに存在はしていますが、力を振るう事はありません。静かに見守るのみです。……古い伝承によると魂を人の身に移した為、振るう事ができなくなったとも言われています」
その言葉にドキッとしていると、神我見はじっと俺を見つめてきた。彼女特有なのか、巫女として普通なのか見透かす様な瞳に思わず目を逸らしそうになるのを堪え誤魔化すように続けて質問した。
「無祈の神って太陽の神以外にもいるのかな?」
天理が何の神を継いでいるのか手がかりが得られるかもしれない。すると彼女は少し考える素振りを見せた後、口を開いた。
「……そうですね、太陽の神と同じく他の方々にもいらっしゃいますよ。例えば大地の神の夫神である空の神様、他は水の神様や風の神様、土の神様や火の神様、時の神様など、名も知れぬ神様もいらしたかもですね……」
「そうなんだ……」
今の話からすると天理の精霊適性が四つ…は寧ろ手がかりにし辛い。
「……貴方は、何か特別な事情がおありのようですね」
「え?」
「いえ、わたくしは神に仕える者でございます故。貴方からは強い想いを感じます」
神我見はそう言うと微笑んだ。
「あの、わたくしからも質問宜しいでしょうか?」
「うん、いいけど」
「侯輝さんはこれから向かう街のご出身との事でしたね、失礼でしたらすみません、ご家族は…?」
俺の故郷は八年前、病魔となったエルブの疫病によって甚大な被害を被っている。生き残っていても家族が亡くなっている者も多い。俺の両親もそうだ。遠慮がちに聞く神我見に俺は努めて普通に両親は亡くなっている事、兄と姉二人は健在である事を話した。神我見は想定よりも大きく衝撃を受けながら悲痛な表情を浮かべた。
場を和まそうと「あとね、俺、結婚してるんだ!都で一緒に暮らしてるよ。男の人だけど凄く可愛いんだ」と天理が居たら確実に突っ込まれるだろうが事実なのでそのまま伝えた。
「まあ!侯輝さんまだお若いのに結婚されているのですね」
俺の左手の指輪を見て納得しつつ神我見は驚きつつもにこりと微笑むと俺もなんだかほっと和んだ。
「先月結婚したばかりで今…っていうかこれからもずっと幸せな気分なんだ」
神我見はそんな俺を見て嬉しそうに笑った。
「それは何よりです」
それから暫くして俺達は無事目的地である俺の故郷の街へと到着した。
「さて次は人探しだっけ」
「はい、あの…」
神我見は少し言いにくそうにしながら探し人の名を伝えた。それは亡くなった父さんと母さんの名だった。
「侯輝さん、ご両親から何か貴方の出生について聞いておりませんか?」
「え?俺の?いや……特には……」
そういえば俺が生まれた時の事って聞いたこと無かったかも。突然なんだろう?
「それでは…侯輝さんのお兄様でしたでしょうか、その方にお会いしたいのですが」
「うん…いいよ」
俺はモヤモヤとした想いを抱えながら土護兄が昼間は勤めているであろう、大地の神の神殿へと神我見を連れていった。神殿にたどり着くとちょうど兄貴が同僚らしき人と話をしている所だったので声をかけた。
「土護兄!久しぶり、ちょっとお客さんなんだけど、今時間大丈夫かな?」
神我見は俺の横に立ち土護兄へ一礼した。
「ああ、侯輝じゃないか!帰ってきていたのか。仕事かな?ふふ、手紙を書くより自分が来る方が早かったね」
土護兄は同僚に一声かけ離れると俺と横に立つ神我見を見つつ再会を喜んだ。
「ううっそのお説教は後で受けるからさ、父さんと母さん…っていうか土護兄に会いたいって人を依頼で連れてきたんだ」
神我見と土護は互いに挨拶を交わすと、土護兄は神殿の一室へと案内した。土護兄はテーブルに茶を出しつつ神我見に話を促した。
「それで俺にお話というのは…」
「土護さんは侯輝さんの出生についてお父様からお聞きになっていないでしょうか?わたくしは母がこの地で生んだ生き別れの弟を探しているのです」
え?何の…話?俺が混乱し始めている中、神我見が更にその母の名を伝えると土護兄は決意したように話始めた。
「侯輝、落ち着いて聞いてくれ、お前は俺や土実、土花と血が繋がっていない…義兄弟なんだ…お前は20年前東国からここを訪れた旅人の一行の女性が命懸けで産み、俺達両親に託していった子なんだよ」
俺が話を飲み込めずぽかんとしていると続けて言った。
「侯輝、俺は、土実も土花もお前の事を本当の兄弟だと思っているよ、だけど…おそらく血の繋がりのあるのは、神我見さん貴女ですね?探している弟はおそらく侯輝の事だ」
土護兄は神我見に問いかけると神我見は静かにうなづいた。
「一目見た時からそうなのではないかと思っていました。侯輝さん、突然の事で驚かれると思いますがわたくしは貴方の姉です。20年前母はこの街で貴方を産みそして亡くなりました」
神我見は静かに涙した。
「そして俺達の父さんと母さんにお前を託したと俺は聞いている」と土護は続けた。
「…えっと、え、俺姉貴が増えた?」
流石に驚いて答えが突飛になってしまった。俺の実の母は俺を生んですぐ亡くなり俺は俺の知る父さん母さんの家族に育てられ、今、実の姉が現れた。と。まだ血の繋がりと言われても実感がない。土護兄が言う通り、土護兄達の事は本当の兄弟だと思っているし育ててくれた両親もそうだと思っている。でもこうして目の前で涙している神我見の事も突っぱねる気にもならなかった。結論として姉が増えた。になった。
「っ…侯輝、お前って奴は」
ぽかんと言い放つ侯輝に土護兄は吹き出しそうになるのを堪えていた。神我見はそんな俺達を見て微笑んだ。
「いえ、それで結構です。侯輝さん。突然そう言われても困りますものね。こうして否定されずに受け入れて頂けただけでもわたくしは嬉しいです。道すがら色んな話を聞けましたし元気に育ってくれて良かった。結婚までしていたのは驚きましたけど」
目端にまだ涙を貯めつつも嬉しそうに笑うが
「ですが…一つ気掛かりなことがあるのです」
と声を落として話した。
「遠路東国から参られた理由は別にあるのですか?」
「はい。土護さんはそれ以外には話は伺っておられますか?」
「いえ…ただ亡くなられた母君が一族でも大事な御子を授かっていた…と言う事しか」
「ではわたくしの一族と母の話をしますね」
そう言って神我見は彼女の一族の話を始めた。
東国の隠れ里に住む神我見のいる一族は代々月の神を奉っており、祭事を取り仕切る一族だった。神我見と侯輝の母も力のある巫女として神の声を聞き人々が安寧に暮らせるよう働いていた。神我見の母は結婚し、やがて神我見を授かり、数年後に侯輝もお腹に宿した頃、神我見の母は月の神に夢で啓示を受けた。『その子は太陽の神の魂を宿して産まれてくるでしょう。ですがそのまま産まれればやがてその子は世界に争いをもたらし、やがて悲劇の運命を辿り短き命を終えるでしょう』神我見の母は嘆いた。
「ちょっと待って。今なんて…」
俺は今、闇の半身の魂を継いでいたと思っていたのに太陽の神の魂を継いで生まれてた?!
「ええ、侯輝さん、貴方は太陽の神の魂を継いでいるはずです。わたくしの一族は古より太陽の神の魂を持つ御子を授かり御守りしてきた一族なのです」
「なんと侯輝がその様な……しかし月の神は侯輝がその様な運命を辿ると仰ったのですか?!」
「はい、お告げ通りそのまま生まれていればいずれ侯輝さんは戦乱の果てに悲しき運命を辿るはずでした。ですがお話には続きがあるのです」
俺と土護兄がにわかに信じがたいと愕然としつつ様子を抑える様に神我見は話を続けた。
信仰する月の神の兄神である太陽の神の魂を持つ子がこの世に誕生する事は喜ばしい事だけれど、神我見の母は大事な我が子がその様な運命を辿るのは耐えられなかった。神我見の母は神に祈った。どうか我が子をお救い下さいと。そして神は答えた。『一つだけ可能性があります。それはあなたの命と引き換えになるでしょう』神我見の母は迷わずその方法を尋ねた。『この地より遥か西国の国、太陽の神の母たる大地の神の加護が厚いその地にて産み育てればその子は太陽の神の魂に縛られず健やかに生きて行けるかもしれない。だがそれも奇跡に近い…それでも是とするなら行きなさい』神我見の母はまだ幼い神我見と病弱気味だった神我見の父に別れを告げ、身重の身をおして僅かな従者を連れ西国へと旅立った。大地の神の神殿にたどり着くとその頃神殿を一時預かっていた副神殿長の土護の父に頼み土護の母のフォローの元、神殿で出産する事となった。
子が産まれる時、周囲に異変が起きた。何処からか漆黒の闇の様な魂が瘴気を纏い現れ、周囲にいた土護の父や神我見の母の従者の守りをものともせず神我見の母の胎に近づいた。その時、神我見の母はお産に苦しみながらも、その漆黒の魂を視るとおいでと呼んだという。すると神我見の母の胎の中から出でた輝く魂と激しく争う様に絡み合うと瘴気は祓われたが二つの魂は混ざり合う事無くそのまま胎の赤子に吸い込まれていった。なんとか赤子は無事に生まれてきたが神我見の母はその二つの魂を受け入れるべく身を挺し、赤子が生まれると共に命を落としてしまった。万が一の時はと託されていた土護の両親は、生まれたばかりの光と闇の魂を宿した赤子を大地の神の加護の元で我が子とし育てる事にした。この事実は従者によって東国に伝えられた。
「なんと…お母様がその様な…では侯輝は太陽の神とその…闇の魂?とを併せ持って生まれてきているのですか。しかし闇の魂は一体……」
土護兄も俺が闇の半身の魂を宿している事は知らなかったのか…。
「謎の闇の魂についてはわたくし達にも分からず…母が自ら受け入れたとはいえ、太陽の神と拮抗できる程の強力なものとなると余程のものかと侯輝さんの事を心配していたのですが」
ここまで話して二人は俺を恐れよりもただ心配そうにしてくれるのが嬉しかった。だから俺は二人には隠さずに話そうと思った。
「そこについては俺から話しておくね」
神我見の話を引き継ぎ、俺は二人に自分に太陽の神が忌み嫌い分かたれた闇の半身の魂が宿っており、記憶が断片的に存在している事、時折おかしくなる事があり天理に迷惑をかけている事を告げた。記憶が蘇ってくる様になったのは天理と結婚してからしばらくしてからで、天理には先日伝えた事を話した。神我見は驚くと祈る様に手を組むと悲痛な表情で俺を見、土護兄は俺を抱きしめていた。
「侯輝!辛かっただろうに…何の魂を宿していようとお前は俺の大事な家族だからな!」
土護兄が強くそう言い放つと神我見は感極まった様に微笑んだ。
「ありがと、土護兄。俺もホントはね、凄く怖かったんだ。闇の半身の力が暴れるんじゃないかって、でも闇の半身の心はもう俺の心でもあって切り離せるものじゃないみたいなんだ。それでも天理はそんな俺でも好きだって一緒にいてくれるって言ってくれたんだ。俺、自分の嫌な所嫌いだったけど、天理が好きだって言ってくれるなら受け入れられる気がするんだ。だから大丈夫だと思う」
「そうか…そうか…俺も土実も土花も侯輝の事が大好きだからな。どうか忘れないでくれ」
土護兄は天理にもまた礼を言わないとなと呟きながら再度強く抱きしめてくれた。
「うん。俺も土護兄も土実姉も土花姉も大好きだよ」と抱きしめ返した。
「土護さんありがとうございます。天理さんにもお礼を言わなくてはなりませんね。…ああ、これが月の神の仰られていた奇跡なのでしょうか…」
涙を流しながらそうつぶやいた。
「神我見さんも心配してくれてありがとね。」
「いいえ…もっと早く会いに来られなくてごめんなさい。元々病弱だった父が母と貴方の報せを受けて完全に臥せってしまい、巫女の務めや里の掟もあり来られなかったのです。」
「お父上はよろしかったのですか?」
「それが…1年程前に亡くなり、それでようやく里の長に許しを得てこの地を訪れたのです。母が命懸けで守ったわたくしの弟がどの様に成長しているのか……一目見たかったのです。父も最期まで気に留めておりました」
そう言って神我見は寂しげに微笑んだ。
「そうでしたか…神我見さんも大変だったのですね」
土護兄がそう言うと神我見さんは小さく首を振って微笑んだ。
「いいえ、わたくしも母も、そして父も、侯輝さんが幸せになってくれる事が何よりの望みです。並ならぬ神の魂をより複雑な形で継いだ事で心配しましたが、こうして侯輝さんが無事成長できている事、大地の神と何より土護様のご両親に父に代わり感謝申し上げたかったです」
「そう言って頂けるとありがたいです。よろしければ両親の墓参りをしてやってください。お母様の墓もご案内します」
「はい。必ず。母の事もありがとうございます」
「ところで俺、太陽の神の魂どころか闇の半身の魂まで受け継いで多分元通りの太陽の神の魂になってるんだよね?何かしなくちゃならない事とかあるのかな?俺、闇の半身の記憶はちょっとあるんだけど、太陽の神が闇の半身と切り離された以降の記憶全然無いんだけど」
俺、天理とただ仲良く暮らしてたいなぁ。
「何も…記憶無いのか?何か太陽の神がしたくて人の身として生まれてきた理由とか。何かしたくてたまらない衝動があるとか」
「無いよ?今知ったくらいだし。闇の半身の方は…ずっと閉じ込められてたから早く出して欲しかったとか、しんどかったー。くらい?あと封印から解放してくれた人に憧れみたいな感情があるけど。あとはその内何か思い出すのかな?」
土護兄と俺は神我見を見ると神我見も焦った様子だった。
「えっと…わたくしも…太陽の神のご意志までは…てっきり侯輝さんが何か覚えていて、その神の意志で働きかけがあるのであれば、お助けしようと思っていたくらいで…」
「侯輝、おまえが今、心から一番したい事を思い浮かべてごらん?」
土護兄は両手を俺の肩に置くと真剣な表情でそう言った。それはもちろんただ一つ。
「天理とずっと一緒にいたい!」
「うーん、太陽の神が世界の浄化を!とか闇の魂が世界の破壊を!とかじゃ、ないんだな?」
「うん。全然」
そういう凄そうなのは無いかな。闇の半身を意識してから闇の部分嫌だなって思う事はあったけど、天理のおかげでもう切り離したいとかは全然無いし、太陽の神に消されるかもって恐怖する事はあっても破壊したいとか無かったし。太陽の神の記憶戻ったら何かしないとならないのかなぁ。なんか嫌なんだけど。天理とのんびりできなさそうだし。
土護兄も神我見さんも唖然としていたが、すぐに納得した様に微笑んだ。
「そうか…まあ、おまえがそれを望むならそれでいいんじゃないか」
「そうですね。わたくしもなんだかそう思えてきました。侯輝さんがそこまで言う天理さんに会ってみたいです」
「いいよ!俺の自慢のパートナーだからね!その天理なんだけど天理も何かの神の魂を継いでいるらしいんだよね」
これにも二人とも驚いていたが天理の方は詳細不明な為、土護兄が調べておいてくれる事になった。
「侯輝、手紙を書くからまた天理に渡しておいてくれ」ギクッ「おまえが手紙書いてなかった事は今回はお小言なしにするから」
土護兄の説教が始まるかと一瞬構えたが土護兄は苦笑するだけにしてくれた。
「そだ、神我見さん俺の事呼び捨てでいーよ?俺の姉貴だったんだから」
「ええっとわたくしは、このままの方が…」
「そーなの?俺は神我見姉って呼んでいい?」
「神我見姉……」
「ダメだった?」
「いえっ姉と認識して貰えるかどうかも分からなかったですし、とても響きが新鮮で嬉しいです」
神我見姉は両手を頬に当てると少し頬を染めながら微笑む。涼しげな印象だけどこうしているとちょっと可愛らしい感じになるなと思っているとなんだか天理を思い出した。
「神我見姉はこの後どうするの?」
もう身寄りが居ないならこちらに住んでもいいんじゃないかと思ったんだけど。
「少し滞在したのち、また里に帰ります。巫女の役目もある中、無理を言って出てきているので…」
そう、残念そうにしていた。
それから俺と神我見姉は土護兄に連れられてこの地で亡くなった本当の母さんの墓参りをした。小さい頃から知らずに連れられてお参りしていた意味を、俺は漸く知ることになった。土護兄と神我見姉がそれぞれ信仰する神に祈りを捧げるのを聞きながら、命がけで生んでくれた母さんに心からお祈りした。
そのあと、神我見姉と育ててくれた両親の墓参りをし、病魔の被害者慰霊碑や制作中のエルブの碑、大地の神の神殿への礼拝、病魔の危険が完全に拭い去られた事により急速に復興しつつある街を案内して回ると、夜は実家に泊まり土護兄や土花姉、土実姉達にささやかな宴を開いて貰って一晩過ごした。
翌朝土護兄から天理への手紙を預かりながらお小言ついでにまた熱烈な別れの挨拶をされると俺と神我見姉は都へと旅立った。
都にたどり着き冒険者ギルドで完了報告をすると、あまりの早さにパルマに「あんた嫁の所に早く帰りたくて案内手ぇ抜いて無いだろうね?」と驚かれたが、笑顔の神我見姉に簡単に説明されると「じゃ早く上がった分はこの都の案内でもしてやるんだね」と神我見姉に気を使ってくれていた。
話しながら家に戻ろうとすると神我見姉がおや?と空を見たのでそちらを見上げると天理の[[rb:風の精霊 > シア]]が飛んでいた。
「あれ?シアだ。なんで飛んでんだろ。あ、あれね天理の契約精霊なんだー」
「天理さんは精霊使いなのでしたね。何か慌てて飛んで行ってしまわれましたが……」
シアはこちらは確認すると家の方に急いで帰っていった。天理と情報共有しているから、天理にはもう俺が帰ってくる事が伝わったはずだ。
家にたどり着くと、俺は玄関で出迎えてくれた天理に抱きついた。
「ただいま!天理」
「お、おかえり、侯輝。かなり早かったな。えっとそちらさんは……」
人前なるとちょっと慌てつつ恥ずかしそうにするもちゃんと抱き返してくれた天理の匂いを吸収する。1日半程度しか離れてなかったけどそれはそれだ。神我見姉は俺が道中ずっと言っていた”可愛いパートナー”天理の姿を見て目を見開いてまあ!と驚いていたが、微笑むと丁寧にご挨拶してくれた。
「天理です。はじめまして…姉?え、なあ侯輝、土護結婚したのか?何の連絡も無かったぞ?不知火は?」と慌て出す天理に故郷で話された俺の出生について説明すると漸く落ち着いてくれた。天理は俺が太陽の神の魂まで継いでいた事については驚いていたが、俺と土護兄に血の繋がりが無かったことにそこまで驚いた様子は無かった。
玄関から居間に移動し天理が出してくれたお茶でゆっくりと話をする事にした。
「天理は知ってたの?俺が土護兄達と血が繋がってない事」
「ああ、お前と結婚する前に土護に聞かされたよ。前々からそう思われるとこはあったけどな。でも土護達家族は誰もそんなこと気にしないでお前を家族として扱っていたから、俺がわざわざ話す事も無いと思ったよ」
結婚式でのあいつのスピーチ、親でもなかなか出来ないだろ?と言う天理に同意する。
「うん、俺も何も変わらないよ。あ、土護兄から手紙預かってきたよ」
ゴソゴソと荷物から手渡すと「だよな。お、説教されたか?」クスクスと笑う天理に「神我見姉のお陰でちょっとだけで勘弁して貰えた」と拗ねた様に言っていると天理が「いい姉ちゃん増えて良かったな」と笑うと神我見姉も笑っていた。とても安心している様に見えた。
神我見姉は清らかそうな見た目だが意外と恋愛話にも興味があるらしく、俺達の馴れ初めなどを質問した。とても恥ずかしそうにしながらも夜はどちらが上なのかと聞かれたので、俺が上だけど時々下になるよと伝えたら赤くなってかなり驚かれた。
こうして居ると神我見姉は都では珍しい俺達のワ式の家が里の物に近くて居心地がいいらしく、なんだか馴染んで見えた。天理は好奇心がそそられてワ式についていくつか質問して神我見姉が丁寧に受け答えしているとふと希守が覗き込んでいた。
「えっ!このお家には座敷童子がいるのですか?!」
神我見姉が驚くと希守はいつもの様にびっくりして引っ込んでしまった。
「ザシキワラシ?ブラウニーじゃないの?」
「ごめんなさい、驚かしてしまいました。こちらの都では家人に富をもたらす怪し…座敷童子の事をブラウニーと呼ぶのでしたね。わたくしの里ではそう呼ぶのです。滅多に会える存在ではないので驚きました」
神我見姉が頬に手を当て少し嬉しそうにしながらそう話していると天理が希守が消えた辺りに呼び掛けた。
「希守、大丈夫だから出ておいで」
希守が恐る恐ると出てくると神我見姉は「まあ可愛らしい!」と微笑むと希守はやはり壁に隠れた。
「ああ…嫌われてしまったでしょうか…」
「好奇心はあるんだけど恥ずかしがり屋さんなんだよ」
しょんぼりとする神我見姉ににこにことそう言うとはほっとした様にしていた。
しばらくして、希守はまたおずおずと出てくると天理の後ろへ隠れた。
「こうして見ると天理さんに少し似ていますね…あら?侯輝さんにも…」神我見姉は天理と希守と俺を見比べて顔を真っ赤にした。
「まさかお二人の子供…!!どうやって…」
「うん!そうだね!性格は天理似かな!」
「ちょっと違う!!…ああっ希守ごめんな驚かせたな」
神我見姉の天然ボケっぷりに俺が乗っかると突っ込んだ天理に驚いた希守を天理が撫でながらあやした。
「ね?天理、お母さんみたいでしょ」
「誰がお母さんだっ」
「すっかり仲良しですわね」
天理がこのボケ倒し姉弟が…と呟きながら、希守は中古のこの家に元々居て俺達が住み始めたらいつの間にかこの外見になっていた事を説明をすると神我見姉は少し考えてから話した。
「座敷童子が家人に似るという話は聞いた事がありません。ひょっとしたらお二人が神の魂を継いでいるのが関係しているのでしょうか……」
希守が特殊なブラウニーではなく座敷童子という事は分かったが、それで似るという事がないなら原因は確かにそこになるのかもしれない。天理は希守を撫でながら少し思い詰めたように考えている様だった。
「あ、じゃあ座敷童子がいるのにこの家がお金持ちにならないのって神の魂の影響だったりするのかな?」
「それは……」
「そこは叶ってるよ侯輝」そうはっきりといい放つ天理を見ると穏やかな微笑を浮かべて続けた「希守そのものがもう金には変えられない俺達の宝物だからな」
天理の言葉に嬉しそうにする希守と微笑を浮かべる天理を見ているともう親子にしか見えなかった。心の中が守りたいという暖かい気持ちで満たされる。
「うん!そうだね!希守は俺達にとって大事な家族だもんね」
希守は俺と天理を交互に見てはにこにことしていた。神我見姉はちょっとウルウルと感激していた。
「そうだ神我見さん、俺も何か神の魂を継いでいるらしいんだが貴女なら分かりそうか?」
「それが…侯輝さんの事はすぐに月の神を通じて太陽の神の魂と感じられたのですが貴方の事は分からなくて…天理さんから多くの精霊の加護と、とても澄んだ気は感じ取れるのですが…お力になれず申し訳ないです」
「いや、ありがとう。邪神やそれこそ貧乏神の類いでなければいい程度だったから気にしないでくれ」
土地神ですら分からない事だったがそれと同程度以上に見られる神我見姉の力の強さを垣間見た気がした。
それからうちの客間に泊まって貰いながら、俺と天理で都を簡単に案内して回った。都に興味深そうにしている神我見姉にやはり都に来られないかと神我見姉を誘ってみるもお役目の為と残念そうにしていた。お役目について確認した天理が「里での月の巫女の役割が本来太陽の御子を守る事であったなら、それを理由にこちらに居られるんじゃないか?」と助言を得るとそれならばもしかしたら…と神我見姉は少し顔を明るくしていた。
神我見姉はそれでも父の墓を放っておくことは出来ないのでと一旦里に帰る事になった。天理の助言によりお前も一筆書けと言われたので天理の監視の元、頑張って思いの丈を書いて神我見姉に渡すと大事そうに受け取ってくれた。
翌朝、都の外れから出発する商隊に混ざりながら里に戻る神我見姉を見送る。
「侯輝さん、天理さんお世話になりました。父と母を同じ墓に入れてあげたいですし、必ずまた戻ります。頑張って吉報を持ってきますね」
「うん!待ってるね!神我見姉」
「気をつけてな」
神我見姉は一礼して微笑むと商隊の出発に合わせて旅立っていった。
「神我見姉来れるといいな」「東の国も一度行ってみたいな」「今回は何だかんだで早く仕事終わって天理のとこに戻れて良かったー」なんて言いつつせっかく街中に出てきたのでランチを食べたり買い物したりデートしながら家路につく。ふとそよぐ風に先日家に帰る時に天理の風の精霊シアが飛んでいたのを思い出した。
「そういえば故郷から家に帰る時にさ、家の周りにシア飛んでたんだけど天理何してたの?」
天理はギクッとした表情を浮かべると逃げるように顔をそらした。そう、シアもこんな感じで俺を見た後なんか慌ててた。
「えっと…天気確認させてたんだよ」
「天気の為だけにシアをあんなに家の周りウロウロさせる必要ないよね?なんか他に理由あるでしょ」
ちょっと顔が赤い。絶対何か恥ずかしい事隠してるね?俺が居ない間に[[rb:風の精霊 > シア]]ウロウロさせる恥ずかしい理由って何?うーん分からないから本人に言って貰おう。じーっと見つめてみる。
「ぅ…ぃゃ…だからその、ぅ……あーお前がホントにそんなに早く帰って来るとは思わなかったんだ…油断して隠れ損ねた…」
なんだかぶつぶつと先に反省会し始めた。そういえば前も俺がこっそり土地神の所に行くのシアに尾行させてた事を思い出した。シアに俺探させてた?まさか。俺5日の仕事の予定だったし、そりゃ最短で終われば帰ってこれるけど。まさかまさか。ちょっと顔が緩みそうになる。
「えへ……えへへ~……ねぇ俺探しててくれた?」
「な、なんでもう笑ってんだよ。て、まだ何も言ってないだろ!」
よし、否定しないね?
「そうだね天理、5日の予定だったのに流石にまだ旅立って二日目ででは帰って来ないと思うよね。油断しちゃうよね」
みるみる顔を赤くする天理が可愛いくて仕方がない。寂しくて二日目で俺探しちゃう俺の嫁、往来だけど抱き締めていいよね?
「ああっくっそ把握したんならもういいだろ…」
いいや。ギュッ。
「寂しい思いさせちゃってごめんね。俺も早く会いたかったよ」
「な、おい、昼、ここ」
抱きしめると真っ赤になって固まってしまった。
「寂しくて普通ならまだ帰ってくるはずもない俺をシアで探してたんだよね?」
耳元に囁くとビクッと体を震わせて、恥ずかしそうに俯むいた。
「ほんのちょっとのつもりで気晴らしというか冗談で……ぅぅ……そう、だよ」
やっと観念して小さく肯定した。可愛い可愛い。ああもうキスしていいよね?いい!と天理に口付けようとするとやっぱり止められた。泣きそうになってきたので離してあげると天理はさっさと帰るぞと歩き出す。
「やっぱり探してたの恥ずかしかったから慌ててシア戻したの?」
「……それもあるけど、お前美人と楽しそうに歩いてるし。見ちゃいけないもん見た気がして」
まだその話続けるのかよと恥ずかしそうにする天理が可愛くて仕方ない。それで帰ってきた時少し様子がおかしかったんだね。
「やったぁ天理が嫉妬してくれた♪安心して?天理以外目に入らないからね♡ああ、待って待って置いてかないで。ゆっくり歩こーよ」
「早く帰りたいんだよ。……お前ねーちゃんねーちゃん言いっぱだし、そりゃ生き別れの家族なんだからそうだろけどよ。分かってるけどよ。あーっ」
わぁどうしよう天理が嫉妬で拗らせてる。どうしよう可愛い。自分自身に苛立っているのか拗ねたように歩く天理の手を握る。一瞬びくっとしたけど振り払われる事は無かった。
「天理、あのね、旅の間、俺、神我見姉の事、天理に似てるなって思ってたよ」
「えっ……失礼だろあんな美人に」
振り向いて本気で分かっていない目をする。
「もー、結構似てるんだよ。色白で黒髪のクール美人。恥ずかしがると可愛い」
「後半おかしいだろ……」
「だからねぇ旅の間早く帰りたいなーっって思ってたよ」
だから拗ねないで、ね?と覗き込むと、うぅと怯んでまたもスタスタと家に向かって早足になった。俺の手は握ったまま。待ってってば。
「せっかく街中来たんだしついでにゆっくり見てかないの?デートしよーよ」
「さっきから言ってるだろ……早くゆっくり二人きりになりたいんだよ」
スタスタと歩きながら顔を赤くする。
「!!そうだね!うん!帰ろう!」
「お、おう」
今日はデレの日かな。神我見姉効果凄い。ありがとう神我見姉。
手を繋いで家に辿り着き、家の門をくぐり数奇屋門をガラガラと閉めた瞬間天理が抱きついてきた。人通りもまばらな地域だが門の隙間から向こう側が半分透けて見えるし普段の天理なら考えられない事だ。家の中に入ってしまうと希守がお出迎えしてしまうからだろう。天理の可愛い行動が嬉しくて抱きしめ返す。
「改めて、ただいま、天理」
「おかえり、侯輝」
愛おしげに見つめてくる天理にキスをする。
「んっ……ふぅ……っ」
舌を差し入れて絡めると、恥ずかしそうにしながらも出迎えられた。
「っ……ぅ……っ……ぁ……」
しばらく絡め吸ったりしていると、息苦しくなったのか、背中を叩かれたので離してあげる。
「……はぁ……ふぅ。」
「はぁはぁはぁはぁ……お前少し加減しろよ」
恥ずかしそうに睨んでくるが、むしろ可愛い。
「もうデレモード終わり?」
「……夜まで待て」
「……っ!あーっ可愛いっ!可愛いよぉっ!大好き!あーっ!!」
「近所迷惑っ」
「ごめんねっ」
今夜は頑張るぞぉ!!
夕御飯は神我見姉に教えて貰った和食に二人でチャレンジしてみた。二人して初めて買った醤油の万能っぷりに感動しながら作った肉じゃかは美味しかった。まだそんなに気にしなくて良さそうなのに天理はヘルシーでいいなと気に入っていた。俺仕事の時はもうちょっとがっつり食べたいけどたまにはいいかな。
夕御飯を片付けて居間のソファでゴロゴロする。
「お前結局太陽の神の魂も継いでいたんだよな。俺の方はイマイチ進展無いけど」
「そうみたい、俺も太陽の神の方は全然記憶ないんだけどね」
「まあでもこれで誰が太陽の神だーとか恐れずに済んでよかったな。何せ自分自身だったんだから」
天理が自分の事の様にほっとして笑う。
「心配かけちゃってごめんね。それはそうなんだけど…なんか複雑な気分なんだよね。自分の中でせめぎあってる感があって。」
「まあ誰しも自分自身の中で葛藤があったりするもんだけど、お前の場合ホントに魂分かれてた上にケンカ別れな訳だろ?それでその気持ちが大きいんじゃないか?」
「そうかも……なんかさ、自分の中にもう一人の自分が居るって感覚で、でもそいつも俺なんだよね。」
「お前が時々不安定になる理由もその辺が原因なのかもな。ま、今更だ付き合うよ」
天理が慈しむように撫でてくれると俺の心の中の二つの魂も揃って喜んでる気がした。ただそうして認識しているとそれぞれの魂が少しずつ主張を始めた気がしてきた。俺が天理を一人占めしたい。と。
「ありがとね。……ねぇ天理、俺の光の部分と闇の部分どっちが好き?」
「…おい、なんか急に彼女キャラが二人出てきて選ばせるみたいな事を聞いて来たなお前」
どうせならセクシーかキュートとか可愛らしい二択にしてくれとぶつぶつ主張する天理にさらに詰め寄る。
「ねぇどっち?!」
「どっちもお前だろ。お前一人しかいないんだから両方好きでいいだろ」
「そうだけど!選んでよー。もし2人いたらの話!」
「どっちも何もお前が分裂した事がある訳でなし、俺はお前しか知らないし…」
天理が徐々に圧されて困った顔をし始めたその時、俺は視界が大きくブレるのを感じた。次に瞬きした瞬間、目の前で驚愕しているしている天理と……そっくりな俺が見えた。
「「俺が2人?!」」
片方の俺は金髪に白い肌、片方の俺は黒髪に小麦色の肌だ。天理はしばし唖然としたあと真っ青な顔をした。
「おい…え、と、侯輝、大、丈夫なのか?ええとひとまず白い方を光侯輝、黒い方を闇侯輝と呼ぶぞ」
「おっけー。よし、これで天理がどっちの俺が好きか選べるね!」
「え」
「そうだね。ねぇ天理、俺と光の方どっちが好き?」
「どっちかなんて選べねえよ。まず自分の事心配しろ!戻れなくなったらどうする!」
「天理が俺か闇侯輝のどちらかを選んでくれたら元に戻れる気がする!」
「待て、選ばれなかった方はどうなるんだ?」
「分かんないけど悲しいかな…消えちゃいたいかも」
「お前……そんな責任重大な事できるか。早く元に戻れ!」
「だって俺も戻り方わからないんだもん!でもさ……俺が消えたら……きっと天理は俺の事ずっと気にしてくれるよね?」
「お前……光とは思えない様な闇発想だな」
「甘いね!光侯輝!消えたら天理は俺が心も体も独り占めだよ!」
「お前はストレートだなぁ…色逆だったんじゃないか?」
「ねぇ天理は俺の方が好きだよね?」「俺の方が好きだよね?天理」
「どっちも侯輝だろ?!」
「そうだけど!ほら!俺キラキラな王子様だよ!天理、俺の事、太陽みたいでキラキラで好きだって言ってくれたよね!」
「言…ったけど」
光侯輝は天理の手を取りキザな仕草でその手にキスをすると満面の笑みで天理を見つめた。戸惑いながらも嬉しそうにする天理が可愛い。
「ず、ずるい俺だって天理ー…ぐすん」
「あーよしよし泣くな泣くな。お、お前の小麦色の肌も結構その、好きだから」
闇侯輝は丸まってしょんぼりとする。天理は恥ずかしそうに俺の肌を撫でながら慰めてくれた。俺が弱ってたり困ってたら心配したり甘やかしてくれる天理も好きだ。
「ずるいぞ!そうやって天理の気を引いて!カッコよくしといてよ!天理はカッコいい俺が好きなんだから!」
「なんだよ!そうやって見栄張ってたからいつまで経っても天理に手だせずにいた癖に!天理は甘えられたり、ちょっと強引な俺が好きなんだから!」
「なっ…」
光侯輝と闇侯輝が自分の好みを赤裸々に挙げられながら喧嘩し始めた天理は、顔を赤くして絶句した。
「強引が良い訳が無いだろ!強引にやろうとして天理を怖がらせて傷つけた事あったの闇だろ!」
「変にカッコつけて我慢して、ちょっとした嫉妬で耐えられなかったから光が萎んで俺が出てくしか無かったんじゃん!」
「……あーあの時のな」
天理が遠い目をしながら呟く。天理と恋人になり立ての頃、天理が他の冒険者と遺跡に行ってしまった事で嫉妬して強引に犯そうとした事があった。天理にとても怖い思いをさせてしまっている。
「あの時のはもう気にしてないぞ。お前のせいばかりでも無かったし、いい機会だった」
「ほらぁ!」得意げに指を指す。
「でも!あの時、天理震えて泣いてたじゃん!そんなの良い訳ない!」
天理は隠しているけど実は怖がりだ。でも一生懸命それを克服しようとしているのも知っているからそれを無碍にしてわざわざ怖がらせるなんてできない!
「う…まぁそうだけど、気使ってくれていつもありがとな」
天理はあははと力ない笑いをするも嬉しそうに礼を言い微笑むと、光侯輝はほらねとばかりに胸を張った。
「やっぱり天理の事を一番に考えてカッコよくする俺のがいいんだよ!」
「俺だって天理を一番に考えてるよ!」
「えー本当にそう?闇はさ、闇の半身の記憶の頃にあった、封印から解放してくれた人の事が忘れられないんじゃないの?」
「えっそれはちょっといいなっていうか憧れみたいな感じで、天理への想いとはまた違うよ!」
光侯輝がじーっと見つめてくる中、天理に誤解されないように必死で弁解する闇侯輝だったが天理が特に気に止めた風ではなかったのでひとまず安心していた。
「そういえば闇の半身は封じられていたのに、そいつがいたから開放されたんだよな。まがりなりにも神の封印を解いたんだろ?どんな人だったんだ?てかどこに封印されてたんだ?」
天理はどちらかというと好奇心の方が強そうに聞いてきた。
「えーっと俺も記憶が断片的なんだけど…凄く綺麗な幼い魂の人で…ていうか実際子供だったような気がする。あれ?大人だったかな?場所は故郷の街の大地の神の霊銅の地下あたり?そこからふらふら出てきたような」
それを聞いた天理は随分近所に封印されてたんだなと呟きながら何か思い出すように虚空を見つめると、ふと何かに思い当たったように重ねて聞いてきた。
「……なあ解放されたのお前が侯輝として生まれる直前?」
「そうだと思う。記憶ぼんやりだけど」
天理は口許に手を置きながらちょっと気まずそうに目を彷徨わせ始めた。
「どうしたの?天理。そういえば天理はその頃8歳位?なんか覚えてるの?」
天理は光侯輝と闇侯輝をそれぞれ見ると、お前が勇気だして言ってくれたのに俺がそれを違えるのはダメだよなと意を決した様に二人に向き直った。
「すまん!侯輝、闇の封印解放したの俺…かもしれない。20年前のお前が生まれた夏ごろ大地の神の霊銅に…その、遊びがてら探検しに行ってなんかそれっぽい遺物を見て何かと話した記憶がある。俺も何かの神の魂を継いでいるなら封印解除はできない事は無いのかもしれない。ガキだったから具体的にどうやったかは覚えてないんだが…」
「「ええっ!!」」
驚く俺達を前に天理は思い詰めた様に頭垂れると話を続けた。
「お前が闇の半身の魂を継いで生まれてきた事で辛い思いをしてるのはよく知ってるつもりだ。俺を恨んでくれて構わない、償いもする……っ、すまなかった」
拳を固め、涙声になりそうなのを必死で堪えている天理。
「ちょっ!そんな事言わないでよ子供の時の話なんでしょ?謝らなくていいよ天理!」
光侯輝は天理が苦しむような事はしたくない!と思ってもどうしたらいいかわからず慌てた。
一方闇侯輝はやはり自分の存在が天理を苦しめてしまった事を辛く思うのと同時に、自分の中の闇の半身の魂が感動に震えている事を自覚していた。あの時自分を解放してくれた憧れの人が今、心から愛している天理だった事に!考えるより先に懺悔の為に項垂れる天理の手を取ると涙を堪える天理を見つめた。
「じゃあ俺達運命で結ばれてるみたいだね♡」
「へ?え?」
天理は嫌われるのもやむ無しと覚悟していたところに目をキラキラさせてそう言われ、思わず間の抜けた声をあげてしまうと、闇侯輝は少し身を乗り出して続けた。
「天理にも辛い思いさせちゃってるし、償いと言うなら俺も一緒にだよ天理、だからそんなに自分を責めないで。だって俺の魂はこんなにも喜んでいるんだから」
そんな闇侯輝に光侯輝が割って入る。
「ちょっと待ってよ、それじゃ俺が天理の事好きなんじゃなくて闇の半身の魂が好きだったから好きになったみたいじゃん。俺は魂とか関係なく天理の事が好きだからね?ね?天理!」
分かって!とばかりに光侯輝も天理の片手を手に詰めよった。天理はまたも呆気に取られた後やっとホッとしたように微笑んだ。
「うん、ありがとな。何があってもお前に嫌われるのだけが辛かったから、お前にそう言って貰えて良かった。なら俺も一緒に、償わせてくれ侯輝」
「違うよ天理」
「一緒に幸せになろう。だよ」
「っ。ああ、一緒に幸せになろう。だな」
そう二人に向かって言うと二人に握られた手を離さないまま涙を交互に拭うと「えっと、そろそろ侯輝に戻らないか?なんかお前が2倍で落ち着かないんだよ」と照れながら呟いた。
「そうだ!まだ決着がついてないよ!」
「え」
「そうだね!天理がどっちの俺のが好きなのか!」
「いや、今いい感じにおさまろうとしてたろ。早く元に戻れ」
俺達は再び口論を開始すると天理がブルブルと震え始めた。
「……あーもう!うるさい!自分同士で喧嘩すんな!どっちか選べって言われても選べんわ!」
「じゃあ天理をより気持ちよくした方が勝ちってことで」
「いいね。受けてたつよ」
「は?はあ?!!ちょっと待て!!どうしてそうなった!や、ちょ」
光侯輝と闇侯輝は天理をがっちりホールドすると素早く天理の服を脱がせ始める。
「ホント待て!俺まだ風呂!準備してない!」
天理の主張に光侯輝と闇侯輝は顔を見合わせると、ならばと天理を風呂場に搬送する。
サシでも敵わない俺に天理の抵抗など無いようなもので、2人がかりで天理をあっという間に脱がすと自らも素早く脱ぎ去り、互いに風呂場でどこもかしこも洗い拭うと、あれよあれよと寝室のベッドの上へと運び、なすがままになっている天理を2人で愛撫し始めた。
「俺はこっち」「じゃあ俺そっち」
「んっ、ちょ!待て!待てって!」
「待たないよ」「待てない」
光侯輝は天理の胸の突起を口に含み舌先で転がし、闇侯輝は天理の下半身に手を伸ばし、天理のモノを手で扱く。
「んんっあっ、やっ馬鹿待っ」
「ねぇ、俺の方が気持ちいいよね?」「俺だよね?」
天理はなんとか一旦止めようと自分に伸ばされる手やらをそれぞれ掴むも徐々に力が入らず、与えられた体の震えを伝えるものにしかなっていなかった。
「んっ!ちょやめ!あっ、もっどっちも気持ちいいっから、もうっやめっあっ!」
「どっちも気持ちいいって事は、まだどっちが好きなのかわからないって事だよね?」「それじゃもっといくよ!」
「おいちょっとお前あっ!ぅあ!」
光侯輝が天理の乳首を舌で苛めると闇侯輝は天理の背筋を舌で嘗めあげる。天理の吐息があっと言う間に上ずってくると、2人は天理の中心を争うように嘗め始めた。
「あっそこや、やめ…」
光侯輝と闇侯輝は二人同時に、天理は前より後ろを弄られる方が好き!と思い直すと後孔に手を伸ばす。が、さすがにその手がかち合ってしまう。
「「天理の後ろは俺のだ!」」
一触即発でにらみ会う2人。
「も…ジャンケンでいいだろ…」
赤い顔をし、はふはふと息をしながらも、とりあえず仲裁をしてしまう天理の手前やむ無くジャンケンで決める。
「勝ったあ!天理の後ろは俺のね!」
「ううっ天理ぃ…..」
「あーはいはい、俺がもつか分からんけどちゃんと後で相手するから待ってろ…」
天理は少し起き上がって闇侯輝を撫でてくれる。
「そうだ!天理、俺に入れてよ!」
「は?え、お前、準備は」
「してあるよ!俺は天理の前を気持ち良くさせるよ。さっ俺に入れて天理」
「いいんじゃない?俺は天理の後ろを気持ちよくさせるよ」
闇侯輝は躊躇なくさっと天理の前で脚を広げ後ろを慣らし始める。
「んっあっ天理ぃ…」
「お、前…ちょ…」
そんな闇侯輝の姿を見て顔を赤くし始めていると光侯輝が後ろから覆い被さる。
「そっち見てるのもいいけど天理も慣らさないとね」
光侯輝は天理の後孔に手を沿わし慣らし始めた。
「っ…ぁ…」
「ふふ、気持ちいい?ここ好きだよね?」
天理は光侯輝に後孔を慣らされながら、目の前では闇侯輝が自分に入れられる準備をしている光景を見て興奮し、更に後孔を慣らされている指が前立腺をかすめる度に身体が跳ねた。
「あっ……んっ、ぁあっ」
「天理ぃ、も、俺入れていいよ?早く来て…」
「こっちももう大丈夫そうだね、入れていいよね?天理」
「あっも、分かっ、たから」
天理はこの倒錯的な状況に浮かされながら、もうどうにでもなれと闇侯輝に覆い被さると入れるぞ?とゆっくりと闇侯輝の中に挿入した。
「あ、天理のが…んっ……あっ、入って……くるっ」
天理がゆっくりと動き出すと闇侯輝は後ろで天理の中心を締め付け、天理の背中に手を回し抱きつく。
「っく…ぁ…っ…」
「ああっ気持ちいいよ…天理♡」
「ちょっと勝手に始めないでよ。俺も入れるよ天理…」
光侯輝の中心を天理に入れる。これで光侯輝と闇侯輝で天理をサンドイッチする形になった。
「あぁっ、ぁっ!ぁ、ぅ」
「ぁ♡天理のビクッてなったぁ…」
腰を動かすと天理は前と後ろに同時に刺激を受ける。その強い刺激に動きが緩慢になりそうになると光侯輝によって動きを支えられ前にも後ろにも逃れる事ができない快楽を与えられた。
「待っ、あっ!これ強っ、んっ!ぁっ!んっあぁ!あっ!」
「ふっ、んっ、くっ、気持ちいいよ、天理」
「あっ、あっ、あっ、あっ、気持ちいいよ♡天理ぃ」
天理を光侯輝が腰の動きをサポートして前と後ろから快楽を与えると天理は抑える事が出来ない声をあげた。
「ふふっ、可愛いよ、天理」
「あっあっ天理!ちゅーして」
「ん、むぅ、んん!んっ!」
「そっちズルい!天理、俺ともちゅー」
「んっ、あっ、もぅん!」
天理は2人の侯輝とキスを交互に絡めながら前と後ろを苛められつつ、更には乳首に背中に首筋にと競うように愛撫を受け快楽でどんどん蕩けていった。
「ぁあっ!もっゆっ!くり!あっ!同時、うっあ!ひっ!んあっ!あっうっ!あぁっ!」
「あぁっ!あぁっ!気持ちいい♡あぁっ!天理の、俺の中でビクビクする♡気持ちいいよぅ♡!」
「あ¨ぁっ!あ¨ぁっ!凄いよ!天理のお尻、キュウキュウして気持ちイい!」
天理の前では、天理に後孔を責められる度にビクビク身体を跳ねさせ天理の中心を締め付ける闇侯輝。
天理の後ろでは光侯輝が天理の腰を動かしながら時折天理の背中に吸い付き痕を遺す。
天理は引いても押しても際限無く与えられる快楽に声を上げるタイミングがもう分からなくなりひたすら嬌声を上げ続けていた。
「あぁっ♡天理ぃ!俺のっお尻気持ちいい!?」
「あ¨ぁっ!俺の方が天理のお尻気持ちよくしてるよね?!」
「あっぁっあっ!んあっ!もっ!あぅっ!あああっ!やっ!ぃっ!」
蕩けながらも必死で快楽に堪える天理の口は閉じる事ができず、ただただ喘ぎ声と涎を溢していた。
光侯輝と闇侯輝は天理の淫れた姿に溺れながら、天理がもう答える余裕も無いことにも気づかないまま2人で競うように天理を淫らに苛めたてた。
「ぐっ!あっ!あ”っ!俺の方が気持ち良いって言って天理!」
「あっ♡あっ!ああ♡俺の方が気持ちいいよね♡?天理?!」
「あああ!あああ!もっ!やっ!ば、だめ!だ、いっあ、いっ!あああああ!!!」
「っぐあ”っ!天理ぃ!」
「あああっ♡天理ぃ♡♡」
天理は2人がかりで身体中に刺激を与えられ快楽でめちゃくちゃになりながら果てると光侯輝と闇侯輝も同時に果てた。
「はぁはぁはぁ…気持ち良かった…。ね、天理」
「はぁ♡はぁはぁ気持ちよかったね天理♡」
「はぁっはぁっはぁっ、ん…っはぁっ、はぁっ」
「はぁ、ねぇ、どっちが良かった?」
「はぁはぁ、俺の方が気持ちよかったよね?ね?!」
「っは….ん..ぁ…い……いい加減にしろ!!!もう2人とも大っ嫌いだ!!そんなにシたけりゃ自分同士でやってろ!」
「「ヤダー!」」
「もうお前とは口聞かん!」
「ごめんなさい!」
分裂していた光侯輝と闇侯輝はショックで侯輝一人に戻ると天理の横で土下座した。天理は戻った一瞬ホッとした顔をするもすぐに腕を組みぷいと横を向いてしまう。
「天理、機嫌直してよ…」
「嫌だ。お前、光だろうが闇だろうが人の話全然聞かないし、どっちも強引だし。俺の気持ちとか考えてないし…」
「それは、だって……俺、もっと天理が好きな俺になりたくて…もうどっちが好きとか聞かないから嫌いにならないで……」
天理を後ろから抱き締めて半泣きで懇願する。嫌われたら生きてけない。
「……二つに別れてホントにもしもの事があったら俺どうすりゃいいんだよ馬鹿」
「心配させてごめんなさい」
俺だって、もし天理を失う事になったら……と思うと怖い。
「……どっちもお前なんだから、どっちが好きかとか聞くなよ馬鹿……全部ひっくるめたお前を…好きんなって結婚したんだよ俺は」
「うん…ごめんね」
「キスだって俺は一人しかいないんだから一人としか出来ないし…」
「うん…ホントは半分寂しかった」
確かに片方は満たされてるのに片方は寂しい気持ちで自分自身に嫉妬してるなんてごちゃごちゃした感情はちょっとだけ嫌だった。
「ちなみに…さっき一番嫌だったのは、その、最中にだなお前…」
まだちょっとだけ怒りつつも恥ずかしそうに言う天理に首を傾げる。
「悪いトコは直すよっ」
「いやその、俺のこと気持ち良くさせるばっかで…いやそれは悪くはないけど…その、お前さっきは……一度も好きって言ってないだろ……」
「!!ごめんね!そりゃ嫌われちゃうよね。大好きだよ。天理」
俺は大事なことを忘れていた。最後の方小さくボソリと言って俯いてしまった天理をぎゅっと抱き締めて後ろからそう囁くと、天理は真っ赤になって固まりボソボソと呟き始めた。
「ぁぁ……何言ってんだ俺……自分だって普段ろくに言えない癖に人に言わせるとか、ぅぁぁ……」
「ごめんね不安になっちゃうよね。天理の気持ち考えてなかった。お願い、天理こっち向いて?キスしよう?今からいっぱい言うから、ね?」
「っ……ぉぅ…..ん……」
まだ恥ずかしそうに顔を赤くしながら振り返る天理に口づけをする。
「俺も大嫌いとか言って悪かった……」
「ううん、俺が先に馬鹿やったんだから天理は悪くないよ。挽回させて?」
天理を抱きしめる手をお伺いを立てる様に少しだけ体を撫でる。
「ぅぅ…さっきみたいのは無しだぞ?」
「もちろん!今度は身も心もトロトロにしちゃうよ!」
「ふはっ、ほんと馬鹿だな」
俺は苦笑しながら体の向きを変えて抱きついてきてくれた天理をゆっくりと押し倒すと、深くキスをする。好きだよと何度も言いながら優しく抱くと、天理は抱かれながら愛おしそうな目で好きだと返してくれた。熱に浮かされながら愛していると呟けば天理はそれだけで体を震わせ幸せそうに微笑んで俺の名を何度も呼んだ。全身で、言葉以上に雄弁に、俺への愛を語るその様は本当に綺麗で……俺の心を掴んで離さない。
俺達はそれから何度と体を重ね、天理は俺の腕の中で幸せそうにウトウトしながら呟いた。
「魂が何だろうが…お前も俺も…これから何に変わっても…愛しているよ…侯輝」
「うん……俺も……永遠に……愛してる……」
俺はそう言って眠る天理を抱きしめて眠りにつく。
自分自身でもある太陽の神がなぜ生まれ変わろうとしたのかは分からないが、闇を自らに受け入れた俺が、天理と愛し愛される事で、ようやく本当の意味で生まれ変われた気がしていた。