結婚後小話 ラブ遺跡、夏の恋人、冬の恋人
侯輝×天理(年下×年上)絶賛リバあり。
1P:3人称 馬鹿なお話
2P:夏の天理視点
3P:冬の侯輝視点
言い訳コーナー:
重い話嫌じゃーうわーぁぁぁぁ!となって気晴らしで書いた小話集
久々に天理と侯輝は二人で古代遺跡の探索に出かけていた。
その遺跡は古代西暦期後期の建造物を比較的現存したまま残されていた遺跡郡の内にあった。比較的探索しつくされたエリアであり、天理としては歴史的な価値があるものはそこまで期待していなかったが、最近奇跡的に残っていた施設が偶然復活を遂げた為、当時の生活が垣間見える遺物などが見つかるかもしれないと冷静を装いつつ内心ワクワクしており、侯輝はそんな天理の内心を察してひっそりと微笑ましく思いながらも愛する伴侶を護る為、警戒を怠る事無く周囲に神経を尖らせた。
そこは古代の宿泊所らしく4階建てで随所崩れていたり蔦に覆われてはいたが、造形としては小さなお城にも見えなくもない建築物だった。入ってすぐのエントランスは狭いが二階までの吹き抜けになっており、奥に二階へと続く階段が見える。復活した施設の一部が稼働しており、所々チカチカと点滅していたり消灯していたが移動するには不自由ない程度に灯っていた。受付らしきカウンターを探索すると施設内のキーらしきものが見つかったので各部屋の探索の為、拝借しておく。
「天理、モンスターの気配は無さそうだね。宿泊施設なら罠の類も無さそうだし、端から調べていく?」
「ああ、そうしよう」
その宿泊所はラウンジや喫食エリアが存在せず素泊まりの宿泊施設なのか?と思いつつ手近な部屋の扉をキーで開けて入ると普通の宿泊施設にしては違和感を感じた。入ってすぐはソファーなどありがちなもので構成されていたが、他の構成が少しおかしい。天井にはなぜかミラーボール、豪華なシャンデリア、ガラス張りのシャワールーム、天蓋付きキングサイズのベッド、ベッドの真横と天井にもなぜか鏡。ベッドサイドのパネルには謎のボタン装置。
「これは………..」
「ねーねー天理、この部屋っていうかこの遺跡さ、ラブホテルっぽくない?俺ちょっと興奮してきたかも♡」
「……お前なぁ」
はしゃぐ侯輝を見て呆れた表情をしつつ、古代技術が駆使されたラブホテルという空間に少なからず興味があった天理は内心ドキドキしていた。
「んー?天理こういうの嫌いじゃないでしょー。顔赤いよ」
「うるさい、次行くぞ!次!」
「えー見てかないの?ボタン押せば動くかもよ?天理の大好きな遺物だよー?」
古代語は読めない侯輝だったが住居内に危険は無かろうと適当にボタンを押してみる。するとまだ動作する様でどこからともなく音楽が流れてくると同時に壁だと思っていた所に映像が映され、音声が流れてきた。
『二人のラブを試そう!ラブラブアドベンチャー!エントリー受付中!』
「なっ!んだこれ?!」
「凄い!なんかおもしろそうだよ天理!」
侯輝が目をキラキラさせながら興奮し、天理がその現代では実現不可能な技術に唖然とする中、『♡遊び方♡』と記された映像が流れる。なんでも古代のラブホテル協会とやらが制作したらしい。このラブラブアドベンチャーとやらは、画面に映るレースマシンをカップルで操作し、ゴールを目指すというものらしく、セックスの行為によって得点を競うゲームなのだとか。全国のラブホテルに通信で繋がっているらしく優勝したカップルには豪華景品が貰えるらしい。
「ふーん……」
「えーっ!もうちょっと興味持とうよ!やろうよ天理ー!俺達なら優勝間違いないよ!」
「は、はぁっ?!」
古代の高度技術には非常に興味がありつつもその内容に全力で興味の無い態度をとる天理に侯輝は興味を引く様に熱心に語りかける。
「天理ほんとは興味はあるんでしょ!?遺物だよ!?セックスしたらどんな仕組みで動くとか興味絶対あるでしょ?豪華景品も未知の遺物出てくるかもよ!こんなにちゃんと動く遺跡なかったじゃん!ね?ね?」
「うぐ…そ、それは……まぁ……ちょっとは……」
天理の遺物好きを巧みに突きつつその気になる様にさりげなくボディタッチを織り交ぜると「ぅ…分かった…やる」とまんざらでもない様子の天理に侯輝は内心ガッツポーズをしたのだった。
室内の安全を確認し、ガラス張りのバスルームで水しか出なかったが体を清めつつ、やっぱりそこでもはしゃぐ侯輝を横目に初めて使うラブホテルでかつ遺跡という稀な環境になんだかんだでワクワクとしてしまう天理だった。
すぐに脱ぐ事になるだろうと一糸纏わぬ姿でベッドに戻ると早速ラブラブアドベンチャーにエントリーする。ライバルのカップルはウサギやら犬やら可愛らしいキャラクターで表示され自分達は猫らしい。今からやる事を考えると天理はちょっと複雑な気分になった。ゲームの操作はどういう原理か分からないが二人の首にチョーカーをセットし、そこからセックスで生じる快楽などからラブラブポイントを取得、ゲームに反映させていくというものらしかった。
エントリーするとベッド脇の壁が小さくパカリと開き出てきたチョーカーを互いの首に付け合う。天理は普段のセックスと違い今からする事がなんとなく恥ずかしくなり俯いて顔を赤らめた。
「天理、やっぱりこういう遊びながらスルの、嫌?」
「……いや、たまには楽しまないとな。お前と一緒なら大丈夫だ」
侯輝が気遣う様に言うと天理は首をふるふると振り微笑み、侯輝はにこりと微笑み返した。
「無理しないでね。でもせっかくだからいっぱい楽しんで気持ちよくなろーね」
「ん」
侯輝がリラックスさせる様に天理に優しくキスをし、天理は照れつつも微笑む。二人の間に愛情の籠った交わりを予感させる雰囲気が漂って……いたのだが。
『スタートボーナスゲット!~♪』
二人が見つめあっているといきなり画面に表示され派手な音楽と音声が流れる。
『チョーカーをセットした瞬間からラブラブアドベンチャーは始まっています!いい雰囲気頂きました!本番も大事ですがお互いを想い合う心も大事!猫チームのお二人にはスタートボーナスを進呈です!』
「えぇー……」
「……そのいい雰囲気がぶち壊しだよなこれ」
侯輝はボーナスとやらは嬉しいが折角天理が可愛くなったところだったのにとがっくりし、天理は気遣ってくれた侯輝に内心ときめいていた所を水をさされたので不満を漏らした。
「あーもう!こうなったら絶対優勝だよ!俺達が一番ラブラブなんだから!」
「ああ、そうだな」
もうこういう雰囲気でやるゲームなのだろうと、ややヤケクソ気味だったが侯輝がさっと気持ちを切り替えると天理もそれに見習い続く様に同意した。
『ではレーススタート!レッツラブラブセックス!まずはキスから!ディープキス推奨!GO!GO!!GO!!!』
画面上に可愛らしいイラストの猫の乗ったレースマシンが映し出されスタートした。2人の首に付けられたチョーカーからラブラブポイントが取得され、画面上に表示される。
侯輝は天理の腰に腕を回し抱き締めながらキスをし、天理は侯輝の首に腕を回しキスに応える。角度を変え互いに味わいつつ時折愛おしそうに目線を交わしながら深く深く口づけを交わす。
『おおっと!猫チームいきなりラブラブムード全開!これは激しいぞ!みるみるポイントをゲットしていくー!』
実況音声が二人のラブラブっぷりを盛り上がる。
「んっ……天理…ふはっ……んんっ……♡」
「んっ……んっ……侯輝…んんっ……んっ……♡」
『ここで犬チームが早くもボディタッチに移行!犬チームの彼女さんの乳首は敏感なのかな?!大きくポイントゲット!猫チームに追い上げを見せているぞ!』
「ふは…これは負けてられないね。猫チームの彼女さんも凄い敏感だって事知らしめてあげるよ!」
「誰が彼女さんだっ!あっ♡」
侯輝は天理をベッドに倒すと片方の胸の突起に指を這わせ摘まんだりつつもう片方に吸い付くと、天理はビクビクと体を震わせた。
『おおっと!猫チームの彼女さんも敏感だ!またまた大量ポイントゲットで引き離すー!』
「ほーら俺の天理の方が敏感だもんね。どんどんいくよ!」
「ああっも、ばかっばかっあぁっ♡」
天理は得意げにドヤ顔する侯輝に羞恥のあまり涙目で力なくぽこぽこと叩くも、侯輝にしてみればそんな天理も可愛いらしく興奮する材料にしかなっていなかった。侯輝は天理の胸の突起を可愛がりつつ脇腹をアダムタッチで天理を震わせつつ下へと手を滑らせていく。立ち上がったそれを握りこむと優しく揉みしだいた。
「あぁっ……♡んっ……ぁっ……♡」
『おおっとぉ!ここでウサギチームいきなり挿入キター!物凄い勢いで追い上げてきたぞ!トップの猫チームを追い抜いた!』
「むぅっ!天理だってこんなに感じてるのにっ!でもこれからだよっ」
「んっ…侯…輝…」
『ここで犬チームも挿入開始!ウサギチームとの混戦になるのかー!?頑張れ猫チーム!』
侯輝は少し焦りつつ天理の後孔に手を伸ばし、ローションを使いいつもの様に解しつつ前立腺を責め天理をさらに溶かしていく。されど画面のレース展開は芳しくふるわなかった。
「あっ……♡はっ……んっ……♡」
「うぅ~天理のここ凄いトロトロで気持ち良さそうなのにぃ」
「はぁはぁ……焦るな侯輝」
「えっ」
天理は甘く吐息を漏らしながらも侯輝の頬を両手で包み込むと落ち着けと侯輝を諭す。そしてそして首のチョーカーに指をなぞらせた。
「ラブを測るチョーカーは俺とお前二人についているんだ…俺だけがヨくなってもダメなんだよ……つまり」
侯輝は天理のもう入れろという意図を理解つつも躊躇った。女性ではない濡れない天理はろくに慣らしもせずにいきなり挿入すれば傷つけてしまう。侯輝とてどうしても遅れは否めない事は分かってはいたのだ。
「でもっまだ入れるのは早いよっ」
「ありがとな、もう、大丈夫だから。絶対、優勝、するんだろ?」
「無理してない?」
「ん…だいじょぶ、だ…それに、お前にも気持ち良くなって欲しいから」
天理は侯輝の頭を撫でると照れつつも優しく微笑む。侯輝は天理の笑みにきゅーんと胸を高鳴らせると、せめて痛みを軽減できる様にと更にローションを足そうと手をのばす。するとチョーカーが出てきた壁の扉の下に、最初は無かったローションらしき物が追加で置いてある事に気づいた。
「なにこれ?追加サービスかな。古代語読めない……」
ローションを手に取りそう呟く侯輝に天理が代わって読み上げる。
「ん、何々…スタートボーナス スペシャルローション?新処方の天然ハーブ配合で感度倍増、弛緩効果とリラックスアロマの香りでスムーズな挿入を助けます。これを使えば優勝間違いなし!だと」
「「……これだ!」」
侯輝は早速蓋を開けローションを手に取り、スペシャルローションを自分の性器に塗りたくる。そして顔を赤くしながらもさあ来いとばかりに脚を開き受け入れる態勢をとる天理の後孔にも塗り込んだ。
「うわ。これ凄いなんかもうちょっとゾクゾクする」
「っ……早く来い」
スペシャルローションの効果で微かに震える侯輝を見て少しだけむっとしたように天理が早くと促す。気持ち良くなるのは俺に入れてからにしろよなんて天理は恥ずかしくて言えなかったが。侯輝はそんな天理を察し、可愛いくて仕方がないと顔がゆるゆるに緩みそうになったが気分を損ねてはなるまいとローションの効果に堪えるよりも必死で抑えた。
「一人で気持ちよくなっててごめんね。じゃあ、いくね?」
「ん…」
そう気遣って貰えるとむっとした気持ちなどあっという間に霧散して天理は体から力を抜き受け入れやすいように心も体も侯輝に開け放った。そんな天理の様子を見て侯輝は一安心しやっぱり可愛いなあと結局顔を緩めてしまいながら天理の腰を掴むと後孔目掛けて己自身をゆっくりと埋め込んだ。
「あぁぁ…♡♡……あ?!ああっ!!♡♡」
「っ……くぁっ!!♡」
天理はまず、いつもの様に挿入時に感じるビリビリとした身動き一つ取れなくなる程の感覚が全身を駆け巡っていた。と程なくしていつもとは違う何かが体を覆い始め天理は困惑し侯輝を締め付けていた。
『おおっとぉ!遅れ気味になっていた猫チームが一気に追い上げてきた!まだレースは分からないぞ!』
「あっ!なっん、だこれっ!ああっ♡や、あっ♡ああっ♡♡」
「ああっ♡天理♡これ凄いっ♡気持ちいっ♡天理っ♡天理っ♡」
スペシャルローションの効果で想定されていた痛みは無くなり、程よく滑らかな粘液が注挿が動きをより激しくし、互いの秘所から伝わる快楽を倍増させる。侯輝と天理はその麻薬にも似た効能に溺れそうになりながら互い腰を揺すり合い、打ち付け合う。二人の結合部からはローションと腸液と先走りの混ざった淫靡な水音が響いていた。
「ああっ♡あっ♡うぁっ♡ああっ♡♡ひぁっ♡♡だめ!ぅあ♡侯輝♡だめ♡ああっ♡侯輝っ♡」
「くっ♡うっ♡ああっ♡天理凄い♡凄い♡あ¨あっ♡天理♡天理♡天理ぃっ♡」
天理はその快楽の強さにダメダメと黒髪を振り乱しながらも勝手に動いてしまう腰と更にどうしようもなく求めてしまう体に涙を流し鳴き喘いでいた。
侯輝はそんな天理の痴態にさらに煽られてしまい、もはや自分が何を言っているのかすら分からなくなっていた。ただひたすらに愛しい人の名前を呼び、獣のように欲望のままに腰を打ち付ける。
『凄い!猫チーム更に加速!単独トップに躍り出た!犬チーム、ウサギチームが追い上げを見せるがどんどん差が広がっていく!されどハイペースすぎないかー!?』
「ああっ♡だめっ♡だ♡もっ♡いくっ♡いっ♡侯っ♡俺っ終わっちまう!」
独走態勢に入ったとはいえレースはまだ終盤を残していた。欲求に従いここで精射して終わってしまえば優勝を逃してしまう。こんな所も自分が男で何度もいけない体である事の弊害を感じてしまって悔しく思う天理。
「任せて!」
だがそんな杞憂を払うように侯輝は声をかけると、そそり立ち今にもいきそうに前走りを滴たらせた天理の陰茎の根本をぎゅうと握り込むと、激しい動きを再開した。
「あっ!?やっ♡なにすんっ!あっ♡ああっ♡離せっ♡やああっ♡」
「ああっ♡更に締まった!頑張って!天理♡天理ならできるはずっ!」
「っを?!あっ♡やっ♡ああっ♡離しっ♡やだっ!んっ♡ああっ♡ああっ♡」
射精を封じられた事で苦しそうに悶える天理だったが、侯輝は腰の動きを早めていく。レースは止まらずにすんだが、いきたくて出したくて堪らない天理の体にスペシャルローションがもたらした効果なのかまた異変がおこる。後孔の中を擦られる度に、ビリビリとした感覚が背筋を走り抜け脳髄が蕩けそうになっていた。
「やだっ♡頭おかしなっ♡ああっ♡ああっ♡侯輝っ♡侯輝っ♡も、らめっ♡やああああ♡♡ーーーっ♡♡♡」
「んぐっ!」
天理は射精できぬまま、侯輝に後孔を突かれ続け、ついに後ろだけで達していた。侯輝はその強烈な締め付けにギリギリ耐えると、少しだけ動きを止める。
『猫チーム、更に加速!心配されたペース配分をものとせず独走態勢だー!!このまま優勝か!?だがペースが緩んだぞ!』
強烈な快楽の中後ろだけで達した天理は荒く息を吐きながら放心状態。侯輝はそんな天理を抱きしめ、労るように背中をさする。
「後ろだけでいけたね♡凄い♡天理♡」
「はぁ♡はぁ♡ぅぅ♡はぁ……♡ん…♡」
侯輝は優しく頭を撫でながら天理の耳元に囁くと、まだ敏感な天理の体は小さく震え、天理は出してもいないのに嘘の様な気持ち良さと未だに感じて止まらない体に困惑していた。だが撫でてくれる侯輝は未達である事を思いだし力無くも声を出す。
「ま、だゴールしてない、よな……」
「うん、ごめん。もう少し頑張れる?」
「ああ、お前の好きに、動いて良いぞ」
侯輝の言葉に天理はこくりと小さく首肯すると、力なくも微笑んだ。
「えへへ♡ありがと♡でも一緒に気持ちよくなろ?♡」
そう言うと侯輝は腰をゆっくりと動かし始める。それは先のような激しさはなく、ゆっくりじっくりと確かめ合うような動きだった。
「ふっ、あ♡あぁ……♡侯輝、あ♡あぁ♡気持ち、ぃ♡侯輝♡気持ちいいか?♡ん……♡侯輝♡あぁ……♡」
「あぁ…♡うん♡気持ち良いよ天理♡離さないでって♡いっぱい絡み付いてくるよ♡」
喘ぎながらの問い掛けに侯輝がうっとりと答えると安心したように表情を和らげる天理。侯輝はその顔に愛おしさが込み上げて、思わず口づけると舌を絡める濃厚なキスをした。
天理は侯輝が愛おしそうに自分を見つめ自分の体に悦んでいる姿を見て心の底から快楽に溺れ、侯輝は天理が幸せそうに快楽に浸かり自分が求められている事に全身で幸せと愛楽を感じていた。
後孔だけでイク事を覚えた天理はその後何度も小さく達し、その慣れぬ感覚に戸惑いつつも、何度も愛おしそうに求められると侯輝の腰に脚を、背中に腕を回し、離れまいと必死に抱きつく。応えるように侯輝も天理を力強く抱きしめた。その行為は激しく無くともその愛に満ちた交わりは画面上のレースマシンを他の追随を許さぬ程に加速させていた。
『凄いぞ猫チーム!再加速したまま止まらない!犬チーム、ウサギチームが追い上げを見せられるか!おおっと!ここでウサギチームが脱落!残るは猫チームと犬チームのみ!ゴール目前!さあ優勝するのはー!?』
「ああっ♡天理♡好きだよ♡天理♡天理♡♡」
「あぁっ♡ぁっ♡♡好きだ♡侯輝っ♡侯輝っ♡ああっ♡♡」
力強く腰を打ち付ける侯輝と腰を揺らす天理の動きがシンクロした瞬間、二人は互いに強く抱きしめ合い、互いの名を呼び絶頂を迎えた。
「んーーーっ♡♡♡」「くっあ¨ぁぁっ♡♡♡」
天理の体がガクガクと震え侯輝を締め付けると、どくんと侯輝の体が脈打つと同時に、熱い飛沫が天理の腹の奥底へと注ぎ込まれた。
『ゴーーーール!!!優勝したのは猫チームです!!!おめでとうございます!!!~♪』
画面の猫のレースマシンがハートのゲートを潜り抜けると祝いのファンファーレが鳴り映像に♡Love Congratulation♡の文字が派手に映された。
「はぁっはぁっはぁ♡やっ、たね、天理♡」
「はぁっ♡はぁっ♡はぁっ…♡ん…♡」
侯輝は荒く息をしながら天理に声をかけるが興奮冷めやらぬのかその声は甘く掠れて熱を帯び、天理は余韻に浸っているのかぼんやりとした様子で、侯輝の声にもただ荒い息を吐き辛うじて微笑むと頷いた。
『素晴らしいラブラブポイントを記録し見事優勝された猫チームには優勝賞品が授与されます!ラブラブなお二人のLOVEな生活に是非ともお役立てください!ご使用になったチョーカーは参加賞になります。それでは!ラブラブアドベンチャーへのまたのエントリーをお待ちしております!~♪』
ゲーム終了の音声と共にチョーカーが出てきた壁の扉から、優勝賞品とおぼしき薄手の小さな箱がまだ荒く息をつく二人の横にぽとりと落ちた。
「はぁ、ふぅ♡賞品なんだろ、面白い遺物だといい、ね。ん?天理?」
賞品の箱の中身を確かめようと手を伸ばそうとする侯輝の手を天理が留める。賞品早く見たくないのかな?と天理を見るとやはりまだ息が荒く顔を火照らせ甘い吐息すら漏らしながら侯輝を見上げており、侯輝は達したばかりだというのに思わず喉を鳴らした。
「はっ♡はっ♡んっ♡なぁ侯輝、俺、なんかおかしいんだ。まだ、その……後ろが疼いて…お前さえ良ければ助けてくれ……ダメなら一人でスるから…」
「!!!」
恥ずかしそうに脚をもぞもぞと擦り合わせ、切ない声で訴えてくる天理の姿に侯輝は興奮しすぎてくらりと目眩がし、実はまだ少し興奮気味だった侯輝の侯輝は驚くほど見事にビン!と復活した。ふと侯輝の視界に先ほどのゲーム中にゲットしたスペシャルローションが目に入り手に取る。
「任せて♡実は俺もなんかいつもと違くて…ねぇ天理、今の状態、ひょっとしてコレのせいなんじゃ?」
「あ…!」
先ほどは情事中だった為、確認を疎かにしていた事を天理は思い出した。体をムズムズとさせながらも侯輝が手にしたスペシャルローションの注意書きを改めて読み直す。感度倍増やリラックス効果の他に記述された小さな注意書きを読み直す。
「効果時間は個人差はありますが……おおよそ一晩です?!この状態が一晩?!」
「わぁ……これ凄いなぁ」
顔がまだ火照っているのに器用に青ざめる天理と対照的に感心してスペシャルローションを眺めている侯輝。
「歓心してる場合か馬鹿っ!一晩中後ろ疼きっぱなしとか耐えられるか!」
脚をもぞもぞと擦り合わせ半泣きで訴える天理に侯輝は照れた様に笑いながら「そお?」と呟く。
「大丈夫!任せて!俺もスペシャルローションの効果でビンビンだから朝までだって付き合えるよ♡」
「なっ……体力モンスターのお前じゃあるまいし俺にできるかっ!よし分かった。侯輝、俺を気絶させろ、そしたら俺は寝て起きて朝だ」
天理のモジモジとした仕草に興奮し、早速盛り上がろうとしていた侯輝に、天理は反論し、自分だけ気絶して朝まで乗り切ろうと提案する。
「やだー!酷いよ、俺、愛しい人のこんなエロい姿を見て朝まで一人でシてろって言うの?!」
「じゃあ俺を眠姦すんの許してやるから」
「そんな酷い真似俺ができる訳ないでしょ!?寝てる天理としたって俺全然嬉しくないよ!ねー俺頑張るから、天理ができるだけ疲れない様にするから、がんばろーよー天理ー♡天理ー♡」
お互いむずむずと火照った体のまま口論し、侯輝が天理の無茶振りに反論しこんな時は実力行使あるのみと天理をぎゅうぎゅうと抱きしめお願い♡お願い♡と天理をその気になる様に焚きつける。普段ですら侯輝のスキンシップお願い攻撃に弱い天理は火照った体が耐えられる訳も無くぐらりと心が傾いてしまった。
「ぅぅ……分かったよ」
「やった♡よーしじゃあがんばるね!♡」
「……媚薬の効果が続いても、俺の体力が朝まで持つか分からないからな?」
天理が頷くと侯輝はもう十分興奮していたので早速ニコニコと天理に覆いかぶさりキスをした。天理は苦笑しつつも何のかんの侯輝に求められる事が嬉しくて自分からも侯輝の背に腕を回し、媚薬のせいなのだと自分に言い訳しながらもう一度とキスをねだるのだった。
結局明け方近くまで盛り上がってしまい、流石に疲労困ぱいした二人はそのまま泥の様に眠りこけた。目覚めた時には既に昼過ぎになっており大幅に予定が狂ってしまった事で遺跡の探索を簡単に済ませると急ぎ帰還する二人だった。
尚、ラブラブアドベンチャーの優勝賞品は全国ラブホテル共通プリペイドカードで、現代では使い物にならない代物であり、状態こそ良かったが解析も難しく古代資料室の片隅にひっそりと追加される事となった。勿論正確な入手経緯は恥ずかしすぎると天理によって伏せられた。
そしてスペシャルボーナスとしてゲットしたスペシャルローションはアダルト商品とはいえ価値ある遺物である事には違い無い為、正式に成分の鑑定を依頼したところ、確かに短期的に一、二時間程度の媚薬効果は存在するが商品説明の通り朝まで持続する効果は無く、朝方まで遺跡ラブホテルで盛り上がっていたのはローションの効果でも何でも無い事が判明すると天理は真っ赤になって恥ずかしがる事になった。
「天理、俺達薬なんて無くてもラブラブだね♡」
[newpage]
陽光が強く地面を焼く頃になると、侯輝はまるで太陽のエネルギーを吸収したかのように元気いっぱいになる。一方俺は容赦ない熱気に包まれ虫の求愛の歌が鳴り響く中、体のだるさに抗えなくなるのだった。
だが先日近代遺跡で見つけた遺物を改造した空冷機のおかげでなんとか快適に過ごせる様になったのだ。発掘した遺物のマイベスト3に入るだろう。魔力で冷やされた空気がそよそよと俺を癒す。素晴らしいぞ空冷機。素晴らしいはずなんだが今は暑い。背中が。
「ふふふ、天理は暑いのダメだもんね。ぐったりしちゃっていつも可哀想だったから良かったよー」
「……その良かった感を噛み締めたいからちょっとどけ、暑い、重い」
侯輝である。伴侶という間柄になる前から年中スキンシップを好む侯輝は夏になると俺に邪険にされては叱られた犬の様にしょんぼりとし、見かねた俺が引っ付くのを許可し結局俺がぐったりするという流れが出来上がっていたのだが今年は違うのだ。
「やだ。夏になると天理引っ付かせて貰えないから、これからは空冷機かけて天理にいつでもぎゅうってできるよ!」
「……だが暑い。早くどけ」
嫌ではないんだが。恥ずかしさで暑くなるからどいて欲しいのだ。
「やだー。天理最近ずっと仕事で忙しくて、全然構ってくれないじゃん!寂しかったんだよ!?」
「……悪かった」
確かにここ最近は色々と予定が詰まっていた。侯輝の仕事のタイミングとの兼ね合いが悪く会えないでいたのだった。正直今こうしてぎゅうぎゅうされているのも嬉しかったりするのだが、いかんせん暑いものは暑い。
「だから、沢山ぎゅーってしようね♡」
「ああもう分かったから」
侯輝を背中に張り付かせながら俺は畳の上を這い空冷機ににじり寄った。うーん涼しい暑いのコラボレーション。
「ねぇ天理、やっぱり暑いからどこも行きたくないよねえ?」
正直な所、家の中でのんびりくっついていたくはあったのだが、俺を気遣ってくれているのか遠慮がちに聞いてくるので少しは聞いてやる事にした。
「まあなあ……どこか行きたいとこでもあるのか?」
「うん、俺さ、天理と海に行ってみたいなーって」
「海か…そういえばしばらく行ってなかったな」
故郷にいた頃、まだ小さかった侯輝や土護と近場の海に行った事はあったが大人になり上京してからは機会がなくすっかり足が遠退いていた。たまには悪くないかと思い、少しだけ乗り気になっていれば近場の海水浴場が最近海開きの儀式をしており、今年は大変綺麗に仕上がっている事を熱心にアピールされそこへ行く事に決めた。正直暑いが侯輝が楽しそうだからいいだろう。
「じゃあ決まりだね♪楽しみ♪水着買わなきゃだね♪」
「俺も泳ぐのか」
「もちろん泳ごうよ。オイル塗ったげるよ?あ、天理は日焼け止めのがいいかな?」
そう言いながら夏だというのに真っ白い俺の腕を何かを塗る様な手付きで触ってくるので気が早いとぺしっと叩き落とす。
「別に日焼けしても問題はないけどな」
「駄目だよ、天理は肌弱いからちゃんと紫外線対策しないとね」
まあお前みたいに綺麗に焼けないけどな。いつもなら、侯輝であれば光の精霊魔法で陽光弱めて紫外線対策だってできるんだぞと説教してしまう所だったが、それは太陽の神の魂を継ぐ侯輝を否定してしまう様で嫌だった。
「あと、浮き輪とかビーチボールも持って行こうよ、夜は花火しようね♪」
「はいはい」
楽しそうに予定を立てる侯輝に相槌を打っていると少しだけ夏もいいかなと思う。プランが一通り纏まると改めて抱き締めてきた。
「ねえ、もっとぎゅっとしていい?冷房効いてるから大丈夫だよね」
「……いいぞ」
「えへへ、やった。天理大好き♪」
ぎゅうと抱きつかれやっぱり暑いぞと返しつつ、なんのかんのでじゃれ合って、どちらからともなくキスをして。触れあって気づいたら組み敷かれていて、空冷機の前で汗をかく行為をして馬鹿だなぁと冷たいシャワーを浴びながら笑いあっていた。仕方ないのだ、俺だって久しぶりに侯輝とのんびり触れあえたのだから。
スッキリしつつも心地よい疲労感を覚えた俺は侯輝を枕にしながら空冷機の効いた部屋で昼寝を決めこもうとすると、涼しげな浴衣の希守が一緒に寝たそうにしていたので二人で迎え入れ川の字で寝た。なんと贅沢なのだろう。
次の休みの日、俺達は予定通り近場の海水浴場に向かった。お天気男侯輝のお陰様々で鬱陶しいほどいい天気だ。広い砂浜には俺達と同じく海水浴に来た人々がパラソルを立てて思いおもいに過ごしており、幾人かのライフセーバーを兼務する海の神の神官が軽装で巡視しているのが見えた。俺達も適当な所にレンタルしたパラソル席で一旦腰を落ち着かせた。
「天理日焼け止め塗ってあげるね。脱いで♪」
「ああ」
言われるままに薄手のパーカーとパンツを脱いで海パン一枚になった。俺の水着はなんでもいいだろと言ったのだが、やっぱりあれこれ着せ替え人形にされて侯輝が決めた物になった。水着の色は黒に近い紺色に白いラインが入ったサーフパンツタイプの短めの水着で着心地もデザインも良く、やはり侯輝のチョイスセンスはいいなと思ったものだ。シートの上にうつ伏せになると侯輝が手際よく俺に日焼け止めを丁寧に塗り始める。俺はされるがまま侯輝に身を任せた。
「ふふ、天理の体引き締まっててすべすべして気持ち良いなー。ずっと触ってられるよ♪」
「俺で遊んでんな」
俺はお前の体の方が逞しくて好きだけどな。もう散々隅々まで触ってるだろうに飽きないものなのか。
時々くすぐったくて身体がビクッっと震え、声を上げそうになるのを何でもないフリをして我慢していると耳元に近づいてきて囁かれた。
「やっぱり敏感だね」
くっそやっぱりバレてんのか。少し耳が熱い。恥ずかしいから無視してやり過ごす事にしたのだが耳元でクスクス笑われた。擽ったいからやめろっての。
なんとかやり過ごし次は侯輝にオイルを塗ってやる事になったのだが。
「お前……」
侯輝は着ていた薄手のパーカーを脱いで水着一枚になる。冒険で鍛えられた逞しい体に派手なオレンジとブラックのゼブラ模様の際どいビキニパンツ。体に自信満々の侯輝でなければできないセクシースタイルだ。周囲の女性と心なしか一部の男性の目も引いている気がする。まったく、そんな人目を引くスタイルしやがって。
「なーに?天理。見惚れちゃった?」
「うっさい。いいから寝転がれ」
「はーい♪」
侯輝がシートにうつ伏せになると、俺は手にしたオイルを侯輝の肩から背中にかけて塗っていく。やっぱりお前の肌の方が触っていて気持ちいい。この美しい身体が俺だけのものかと思うとちょっとだけ優越感に浸ってしまうと口角が緩みそうになるのをぐっと堪えた。侯輝の背中をマッサージするように揉み込んでいく。
「天理上手だね。あ、そこ、きもちぃ♪」
「おう…こら、変な声出すな」
きゃっきゃっとはしゃぐ侯輝に軽く咎める。因みに本気で感じている時はこんな声は出さないので軽く咎める程度だ。はしゃぎたい気持ちは分からなくはなかったから。
互いに塗り終わり荷物を預け、海に出て二人でビーチボールで遊んだり水をかけあったりして童心に返った様に遊ぶ。例によってなかなかの容姿の女性達に逆ナンされ俺が困惑、侯輝がキラキラ笑顔でお断りするという、侯輝とデートしていると良くあるパターンが発生したりしていた。毎度不甲斐ないばかりだ。侯輝がモテるのは誇らしいやら独り占めしておきたいやら複雑な心境になる。だが今日は特に多い様だ。やはり侯輝の爽やかイケメンにムキムキが合わさると効果倍増だな。
「やっぱりお前モテるなあ」
「やっぱり気づいてないし」
歓心し苦笑していたらなぜか呆れた様に溜め息をつくと俺の魅力を力説してくれた。いつも思うが凛々しいやかっこいいはともかく可愛いとは何なのか。お前みたいな格好いい方がいいと思うのだが。明るくてたまに馬鹿やるけど頼りになるし。可愛いというならお前の方だしそれでいてしムキムキだし。小首を傾げてむむと疑問符を浮かべていると侯輝がまた大きなため息をついた。
「とりあえず一人にならない様に気をつけてよね。ね、あっちの岩場行ってみよ」
なぜか釘を刺された。俺は子供か?不服そうな顔をしている俺に、侯輝はさっさと手を引いて人気の無い岩場へと歩き出した。
静かな波の音と潮の香り。岩陰には小さな蟹がいた。照りつける太陽と青い空をほんの少し遮るように岩場の陰ができているそこは、涼しい風が吹いていて気持ちいい場所だった。丁度いい岩を見つけて並んで腰かけた。
「ここ涼しいね。ここならいいんじゃない?」
「そうだな。お、魚泳いでんな」
色とりどりの小魚が群れを作ってすいーっと泳ぐ様は見ていて飽きないものだ。
「ほんとだ!綺麗だねー潜れたらいいのに」
「できるぞ?ウィンに頼めばいける」
「ほんと!行きたい!」
「よしきた。ウィン、シア」
俺は指をパチンパチンと二鳴らしすると契約精霊の[[rb:水精霊 > ウィン]]と[[rb:風精霊 > シア]]を呼び出した。呼び出されたウィンは元気よく俺の周りを飛沫を散らしながらくるくると回り、シアは澄んだそよ風を漂わせながらふわりと俺の指に止まった。
『デートの手伝いかー?』
「ぐ、まあそうだ、俺達二人で海に潜りたい。呼吸と泳ぎの補助をしてくれ」
『あいよー!』『わかった』
「ウィン、シアよろしくね♪」
『おー任せろ!』
侯輝の挨拶にもウィンは元気に応えシアもコクリと頷いた。侯輝が俺の精霊ともすっかり馴染んできたのは嬉しいが時折俺をスルーして簡単な願いなら聞いているのは制御している召還主としては微妙な気分である。
ウィンとシアは俺と侯輝の周りをまとわりつくように飛ぶとその力を貸し与えてくれた。これで水中の中でも呼吸が出来るし、水中での推進力も得られる為移動もスムーズになる。音も伝えてくれるから会話も可能だ。
「それじゃ行くぞ」
「うん!」
侯輝はワクワクとした様子で目を輝かせている。俺はそんな楽しそうな恋人を見て嬉しくなり、思わず笑みが浮かんだ。俺は侯輝の手を取り揃って海中へ潜った。
海の中はとても静かで、サンゴ礁や熱帯魚の群れなどが見え、美しい光景が広がっている。海面を見上げると太陽の光が差し込んでキラキラと輝き、光のカーテンの様なそれはとても神秘的で美しかった。
「凄いねー!」
「ああ…凄いな」
何より隣にニコニコと笑いかけてくれる人がいる事が嬉しい。いつもはセットされた金髪がふわふわと揺れその笑顔が少し幼く見えた。俺達は手を繋いでゆっくりと泳ぐ。時折小さな魚の群生が見えたり珊瑚の間を小さなエビなどが移動していたりして楽しいし面白いし飽きない。
目を閉じて耳を澄ます。
聞こえるのは侯輝の楽しそうな鼻歌とウィンが奏でる水のせせらぎのみ。とても心地よい空間だ。
「侯輝」
「ん?」
俺は侯輝の手を握り直すとそのまま引き寄せて抱きしめる。侯輝は一瞬驚いた顔をしたもののすぐに嬉しそうに抱き返してくれた。
重力にほとんど縛られないゆらゆらと揺らめく海中での抱擁は少し不思議な感覚で、お互いを抱き締める感覚だけが確かで他は曖昧に溶けていく。俺達は軽く触れるだけのキスをした。嬉しそうな侯輝を見ていると自然と笑みがこぼれた。
幸せだな。
「天理、あれ!」
「あれは…沈没船か?」
「行ってみようよ!遺物とかあるかもよ」
またしばらく泳いでいると目の良い侯輝が海の深い方に沈没船らしき物が沈んでいるのを見つけた。残り魔力やモンスターを心配したが、今年は癒しの力も司る海の神の加護もこの辺りならまだ届いているだろうし、古い物なら遺物があるかもしれない。一度下見として行って帰るくらいならできると思われた。少し深く潜っていくと光が届かなくなってきたので今度は侯輝が光の精霊魔法を使い明かりを照らし先に進む。辺りは暗く自分達の周りだけが光が灯されていて、慣れない環境に少し恐怖を感じた。ギュッと握る侯輝の手の温かさに心強さを感じ握り返すと侯輝がこちらを見て安心した様に微笑んだ。俺が支えて貰えて貰うばかりでなく、俺も侯輝を安心させてやれていると良いのだが。
たどり着いた海底の沈没船は数人乗り程度の木造中規模の船で、損傷は大きかったものの腐敗は進んでおらず近代の物である様だった。故に古い遺物は期待できそうに無かったがそれでも何かないかと割れた舟板の間から入り船内を調べてみる。樽やチェストなどがその中身と共に散乱した倉庫らしき一室で、小さな麻袋の中に魔蓄石が大小三つも入っているのを発見した。万年魔力不足の俺としては良い拾い物だと嬉々として回収した時、俺の太股辺りに何か強く吸い付く様ないくつもの感触が絡み付いた気がした。地味に痛い!そして近くの大きな樽辺りに引っ張られている!脚を見るも何も付いていないように見えるのにだ。
「なっ!?!」
「天理じっとしてて!樽から何か出て絡み付いてる!はぁっ!!」
侯輝が慌てて近場に転がっていた錆びた剣に光の精霊力を宿し俺と樽の間辺りを引き切る様に振り抜くと、俺に絡み付いていた触手が切断され見えるようになった。切断面から青い体液が辺りに漂う。推定蛸であったが透明化できるタイプの様だ。倒れた樽から出てきたソイツは俺達と同じくらいの大きさで、かなり力が強い。海の神の加護があるというのに好戦的な質なのだろうか。
ダメージを与えたからか本体も少し見えやすくなったが体液で視界が悪くなった隙を狙われ、もう1本の蛸足が俺の腰に絡み付き引き寄せられてしまう。
「うわあっ!!」
「天理どこ?!燦然と輝け!光の精霊!」
「!」
その声で咄嗟に目を瞑ると瞼の裏からでも分かる強い光が辺りを覆う。すると蛸の目を眩ませる事ができたらしく蛸が怯んだ隙に精神を集中するとウィンに命じた。
「ウィン![[rb:真水に変えろ > ピュリフィケーション]]!」
『あいよ!』
辺りに漂っていた青臭い体液が消え去り海水が浄化され透明度が増した。半透明だが蛸の輪郭がはっきり見えるようになる、だが蛸は俺を離そうとしない。そして他とは少し違う形をしたもう1本の足が地を這うように迫っていた。ウィンに命じて蛸を斬り刻んでやろうとしたが、気づけばいつになく興奮し瞳を金色に光らせた侯輝が光剣で突きの構えをし、ウィンに背中を押されながら突進してきていたので一旦取り止めた。
「俺の天理に何してんの!!このスケベ蛸おおお!!」
なぜ蛸がスケベなのか一旦置いておいて、侯輝の光剣が蛸の目を正確に貫き蛸が悲鳴を上げる。ついでに蛸の墨袋が破れたのか辺りに今度は黒い液体が漂い視界が悪くなった。蛸が俺毎踠く様に暴れ始めるがなんとか堪えてウィンに命じる。
「っ!ウィン、切り刻め!」
『まかせろ!ウィンジェットカッターぁ!うりゃー!』
また技に謎名付けたなって思ったのは一旦置いておいて、ウィンが高速で蛸の周りを旋回し俺を掴む足、胴体、残りの足をズタズタに切り裂いた。
「うわっと!ウィン![[rb:ピュリフィケーション > もう一回だ]]!」
『会心の!くーりあー!』
「天理っ!」
俺を掴んでいた足が切り離され墨だらけの中放り投げられた。握っていた魔蓄石を使い潰しながら、ウィンに再度辺りの水の浄化をさせると墨で覆われていた視界がまた鮮明になる。慌てて侯輝が俺を抱き留めてくれた。バラバラになった蛸の体がそこかしこに漂い蛸は沈黙した。ひとまずなんとかなった様だ。
「大丈夫?」
「大丈夫だ」
侯輝が心配そうに俺を見つめてくるので安心させるように微笑みかけるとホッと一息つき俺を放すと体を検分しはじめた。蛸足が俺の太股やら腰やらに巻き付いたままだ。
「これ引っぺがさないとな。っ!いててっ」
「わぁっ、待って。無理やり引っ張っちゃだめだよっ」
蛸足を力任せに引き剥がそうとすると強い吸盤の力で吸い付かれており痛みが走る。全部剥がすとなると、少しきついが我慢するしかないかと覚悟していれば侯輝に慌てて止められた。
「蛸の吸盤はね、指でぐるっと摘まむ様にしてゆっくり外すと痛くないんだよ。ほらこうやって……」
「んっ、おお、痛くない。流石だな」
侯輝は冒険者仲間や冒険先で色んな雑学を教わっているので物知りだ。頼りになるなと笑みを浮かべると侯輝は嬉しげに微笑み返してくれる。俺の体についた蛸足を優しく触れながらゆっくりと全て外してくれた。蛸の体は元の樽の中に収まって貰うことにする。
「あー跡残ってる。天理の綺麗な脚がぁ……あのスケベ蛸ぉ……」
「ちょっとヒリヒリするけど大丈夫だって」
確かに少し赤くなってるがそんな気にするほどでもないと思うんだが。俺の脚や腰を労る様にそっと撫でていた侯輝だったが不満げに口を尖らせた。
「天理の体に跡付けていいのは俺だけだもん……」
拗ねたように呟いた後ちゅっと音を立てて吸われたり舐められたりされてくすぐったくて身を捩ってしまう。すると余計に強く吸われてまた跡をつけられてしまった。
「んっ、こら、何蛸に対抗してんだ」
太股の内側とか際どいところまで吸われてしまい、抗議するように軽く頭をコツンとすると侯輝はえへへと笑い俺の耳に唇を寄せ囁いた。
「ね、海の中でえっちしたらどんな感じかな?気持ちいいと思う?」
「は!?お前何言って……」
俺が戸惑っている間に俺の腰を引き寄せると侯輝の手がするっと水着の中に入ってきて直接尻を撫でられる。
「ね?ちょっとだけ」
「っ、ま、魔力が持たないって」
常に無さすぎる環境への不安から何とか回避しようとしてみれば侯輝はにっこり笑ってもう一つ見つけたらしい魔積石を俺に握らせてきた。そうまでしてヤりたいか。……ちょっと興味はあるんだが。いや落ち着け俺。ここは海の中だぞ。屋外だ!青姦ってやつだ!恥ずかしい。何とか逃れようとして、他にモンスターがと言えばまた俺をスルーしてウィンに周囲を確認して貰ったらしく、海中での未知の身体被害がと言ってみれば、海中には微生物がいるけど、さっきウィンがこの船室一帯の水綺麗にしてくれたから大丈夫と言い、水中だと滑りが……と言えばさっきチェストから見つけた昆布のヌメヌメがローションの原材料だから代用できるんだよ♪と雑学王っぷりを発揮していた。
俺と、海中セックスする為に。呆れるやら歓心するやら嬉しいやら。
「それにほら、ここは俺達だけだよ?ね?」
侯輝は俺を説得する間も大人しく撫でているだけだった俺の尻を割れ目からゆっくりなぞる。体が微かに震えた。
くそ、好奇心が疼く。
「っ、ああ、も……分かったから」
光が僅かしか届かない海の中、愛する侯輝と二人だけの空間。その特異な環境に俺の箍も外れてしまったのか、俺は侯輝の首に腕を巻き付けキスをした。こうしてると俺も蛸みたいだよな。
「ん、ふぅ……んっ……」
舌を差し入れれば侯輝も嬉しそうにそれに応えてくれる。脚を絡ませながら俺達は夢中で口づけを交わした。その間も俺の尻をなぞっていた指が俺の後孔に辿り着き、これからを思わせる様にマッサージを始める。俺があれこれと逃れようとしている間にも薄い海パン越しに感じる互いの雄は実はもうとっくに臨戦態勢だったそれを、俺は侯輝の指の動きに合わせて腰を揺らし擦り付ける事でより明確に感じさせる。
そうやって互いに高め合ったところで口を離せば侯輝の嬉しそうでいて欲情しきった表情が目に入った。俺を欲しいのだと語るその目が愛おしくて堪らない。ああもっと俺に興奮してお前の金の瞳を見せて欲しい。
俺達は再び抱き合い、今度は俺の方から侯輝の耳元へ囁いた。
「早くお前をくれ、侯輝……」
「うん!俺も欲しい!」
侯輝は目を細めて微笑むと、俺の海パンをずり下ろした。侯輝のビキニ海パンも降ろせば、もう立ち上がった雄が勢いよく飛び出してくる。どこかに流れてしまわないように海パンを腕に通しながら、その元気な雄の様子に思わず笑みを浮かべてしまった。
「ふふ、いつでも元気だなお前……」
「だってぇ……天理が可愛いんだもん」
そう言いながら首、鎖骨、胸の突起へとチクりとした痛みを伴いながら吸い付かれていった。その痛みは毒など持っていないのに痺れる様な感覚を呼び起こすもので、俺は小さく声を上げながらもその快楽に身を任せたくなる。水中で漂いながら受ける愛撫は縋るものが侯輝しかなくて、愛撫を受ける度に震えや力みが侯輝に伝わるのが恥ずかしくて堪らない。
「んっ……っ!そこばっか吸うな……」
吸われる度にビクビク反応してしまう身体を抑えようとすればするほど余計に強く吸われてしまい俺は慣れぬ水中で身を捩って逃れようとするのだが、蛸のように力強く俺に絡み付いた侯輝の腕が外れる訳もなく、逆に更に強く吸われてしまった。
「あっ……あぁ……っ」
「ふふっ美味しいよ、天理。こっちも上書きしなくちゃね」
侯輝は俺の下腹部に唇を移動させると、蛸に貼り付かれ赤くなってしまった箇所をチロチロと上書きするかの様に舐め回し始めた。くすぐったくもその度にゾクゾクとした震えが走って堪らない。太股の内側秘所の際を音を立てて吸い付かれれば俺の身体がびくっと跳ねそれすら楽しむように執拗に舌を這わせていく。
「やっ……もっ……しつこい……っ!」
「でも俺の印で上書きしないとだし……」
そう言って更に吸い付こうとする侯輝の頭を押さえ制止させた。下肢への愛撫は縋るものが無く、自分を抱きしめる様に堪えるしか無くて気持ちは良くても、少し、寂しくなってしまう。
「これからだって沢山付けてくれるんだろ……?」
言ってて恥ずかしくなったが、侯輝はその俺の顔を見ると嬉しそうに笑って俺の手を握り締めてきた。
「うん、そうだね。ずっと一緒だもんね!」
「お、おう……」
こうも真っ直ぐ言われると照れてしまう。そんな俺を見て侯輝はクスリと笑うと俺の頬に軽くキスをした。
「それじゃ、後ろしようね」
そう言えばローションは昆布からとか言ってたがどうするんだ?と首を傾げていれば、侯輝は「ちょっと待ってね」と言うと近場に漂っていた昆布を口に含み、俺を俯せ方向に反転させると、両手で俺の尻を掴みその谷間に顔を突っ込んできたので体を半分ひねって慌てて制止した。
「え!?ちょ、侯輝、何して……!」
「口で入れてあげるよ?お尻に」
当然の様な顔で言う侯輝に俺は唖然とした。つまりローション代わりの昆布のヌメヌメを口から俺の尻に入れると?!マジか?
「な!!汚いって!」
「大丈夫大丈夫ピュリフィケーション効いてるから天理のお尻も綺麗綺麗。そうじゃなくても綺麗綺麗。ダメ?」
馬鹿なのか?ほんと馬鹿なのか?……そんなお前が好きだけどな。その行為に羞恥で顔が真っ赤になる。ぐぅぅと葛藤する事しばし。やはり俺は侯輝に敵わないのだった。
「ぅ……や、やってくれ……」
「天理ありがと!頑張ろうね!」
「うう……」
実のところさっきから愛撫され過ぎててお前と早く繋がりたくて仕方ないんだ。俺が傷付かない様にやってくれると言うならむしろ感謝すべきだろう。趣味とかじゃない事を願いつつ。
そうこう考えている内に侯輝は俺の腰に腕を回すと尻に顔を近づけて舌で丹念に解し始めた。尻に舌を入れられる事などはじめてで羞恥で全身が熱くなる。
「ぃぅっ……っ、……んっ」
「大分解れたかな?じゃヌメヌメ入れるね」
侯輝は口に含んだ昆布から抽出したヌメヌメを俺の後孔に注入してきた。もっとでかいものをいつも尻に入れているがこれはこれで異物感や恥ずかしさが半端なく堪らない。水中でなければ泣いていたのがバレていただろう。
「ぅわっ、……ぅぅっ」
「これくらいでいいかな?大丈夫?あ……ごめんね天理泣かないで……」
侯輝は俺を再び反転させ俺の顔を見ると慌てて抱きしめながら慰めてくれてくれた。なんでバレたんだろう。顔に出さないつもりでいたのに情けない。お前にそんな顔をさせたい訳じゃないのに。
「大丈夫だ、入れてくれ……」
「ホントに?無理してない?」
「すまん、侯輝。ちょっと慣れなかっただけだ。早く、お前のをくれ……」
繋がりたいのは本当だ。侯輝の首に腕を絡ませ、愛し合いたいのだという気持ちを込めて見つめる。
「……うん!俺も早く繋がりたいや」
侯輝は俺が侯輝にしっかりと捕まるのを確認すると昆布の滑りが施された俺の後孔へとヌプヌプとその熱い猛りを埋め込んでいった。
「あ……あぁ……あ」
「あぁ、凄……天理の中あっつい……」
ゆっくりと押し入ってくる感覚に俺は喘ぎ、侯輝はうっとりとした声で呟いている。お前の猛りの方が余程熱いと言いたかったが俺は入りたての圧迫感や刺激に堪え巻き付けた腕に力を込め喘ぐので精一杯だった。侯輝のカタチに慣れる間、まだ心配されているのか顔中にキスされながら優しく抱きしめられると身も心も満たされていく気がした。
「侯輝……」
馴染んだ頃を見計らって名を呼べば心得ているとばかりに優しい口付けをされる。その心地よさに陶酔しているとズルリと中のものが引き抜かれる感覚があり咄嗟に離れまいと目の前の体にしがみついた。しかしそれは一瞬の事ですぐにまた奥へと突き入れられてしまう。そしてそのまま律動が開始された。
あられもなく声を上げそうになり、まず誰も来ないであろう海の中だとしても屋外だと思いだし声を我慢しようとしていれば、それに気づいたらしい侯輝が宥めるように頬にキスを落としてくる。
「声、聞きたいな、誰もいないし、ね?」
そう耳元で欲を孕んだ声で囁かれれば自然と体から力が抜けていき、抑えていた声が口から漏れ出すようになった。
「……ぁ、ぁっ、ぁぁっ、あっ……ぅんっ!」
「は、ぁ……っ……」
最初は恥じらいを覚えたが俺は侯輝の望むままに声を上げる。すると侯輝が嬉しそうに興奮し、侯輝の雄が中でさらに質量を増し、吐息混じりの声を漏らした。侯輝が俺で悦んでくれているのが嬉しい。侯輝は水中故に突き入れた反動で逃げてしまわない様、俺の腰をがっちりと掴み激しく腰を打ち付けてきた。俺はそれに合わせ腰を揺らし快楽を追い求めるように自ら動いていく。
やがて強い快楽に腕が震え、もうダメだと逃げ出したくなるくらいだったが、俺はそれ以上に侯輝との愛に溺れたいと思いその項に必死にしがみついていた。
「ぅあっ!……ああっ!……ゃあっ!」
「はぁっ、……っく、……あ"ぁっ」
世界にたった二人しかいなくなった様な錯覚さえ覚える薄暗い海の中、こうして交わっていると、もう世界に二人しかいなくても、こうしてお前と繋がれるならそれで良いような気すらしてくる。小さな光の精霊が灯す中に映される侯輝の金の瞳は情欲と愛に満ちていて、俺だけを映し見つめている。それが堪らなく幸せだ。
しかし次第に限界が近いのか腰の打ちつけ方が早くより力強くなってきた。俺も知らず巻き付けていた脚を更にきつく絞め腰を侯輝の腰に合わせて打ち付ける。
「ああっ!侯輝っ、侯輝っ!侯っ……!!」
「天理!天理!天理っ……!くぁっ……!」
侯輝の熱を最奥で受け止めながら、俺も侯輝と共に果て、荒い息を吐きながらそのまま二人で抱き合って海中を漂う。それからどちらからでもなく顔を近づけ口付けを交わした。
ああ、このまま時間が止まれば良い。
愛してるよ。侯輝。
暫くして侯輝が俺の中から出ていき、俺の身体を抱き寄せてきた。侯輝はやはりニコニコと嬉しそうに俺を抱きしめてくる。先程までの熱が覚めてくると俺は恥ずかしくなり照れ隠しに態度が素っ気なくなってしまうのを直したいのだがなかなかいかんともし難かった。いつもなら俺が吐き出した白濁は侯輝が拭ってくれているのだが、ふと見るとその辺にクラゲの様に漂っていたので恥ずかしくて慌ててあっちに行けとばかりにシッシと手で追い払おうとしたが無情にもその辺にプカプカ浮いていた。それを悔しがっていると侯輝にクスクスと笑わられてしまい顔が赤くなるのを抑えられなかった。
「えへへ、ちょっと大変だったけど気持ち良かったし、今日も天理が愛してるーっていっぱい言ってくれて嬉しいな」
「言ってはないだろ」
言葉では。……多分。幸せそうな顔でそんな事を言うものだからやはり照れ臭くてそっけない返事になってしまう。
「えー?言ってたよー?」
そんな俺に構わずニヤニヤしながら言ってくるのだから悔しくて、その緩んだ頬をむにと引っ張ってやると[[rb:痛 > ひた]]ぁいなんて言いながら笑っていて本当に幸せそうなものだから俺も釣られて笑ってしまうんだ。
「も、地上に上がるぞ。魔力も持たないし。ほら俺の海パン返せっ」
照れ隠す様に魔力切れを言い訳にして海面を目指す事にする。結局めぼしいお宝は魔力が僅かに残る小さな魔蓄石一つになってしまったがこの体験は忘れられない思い出の一つになるだろう。始めての屋外プレイが海の中になるとは思わなかったが。侯輝と一緒だと飽きることが無いな。
ウィンに浮力を調整して貰いながら海中から浮上し元居た岩場に上陸すると、やや傾いていた太陽だったがまだ光が眩しかった。
「うわっ、あっついね!ちょっと忘れてたや」
「そうだな……ウィン、今日はお疲れさんシアもフォローありがとな」
「ウィン、シアありがとー!」
『おー、またなー!』
飛沫とそよ風を残しニ精霊が消えると、腹も空いてきたし仲良ししてちょっと疲れたし海の家にでも行こうとすると侯輝に引き留められた。
「ごめーん、天理、そのままじゃ帰れないかも♡えへへ」
なにがだ?と首を傾げていると俺の首筋や胸元やらを指差す。
「痕♡」
「!」
てへ♡と笑う侯輝。俺は自分の身体を確認した。胸元、脚、蛸の跡なんぞ目じゃない程に付けられた紅い侯輝の印。俺は羞恥のあまり顔を真っ赤に染め上げわなわな震えながら叫ぶしかなく。
「ば!…か!これじゃ恥ずかしくて帰れるか!」
「だよねーごめんねパーカー取ってくるから待っててー」
「まったく…!こんな付けやがって」
「付けて欲しそうだったしつい♡」
「ばーかー!!」
侯輝は笑いながらダッシュで荷物を取りに行くと程なくして俺のパーカーとパンツを持って戻ってきたので素早くそれを着込んだ。良く見ると侯輝にも俺が跡をつけてしまっていたので気にしないと侯輝は言い張ったがパーカーを着させた。
「首筋の痕まだ見えるね」
「マジか。お前なあ……。ふぅ……」
どんだけ付けたんだ。仕方なくフードも被ると日が当たらないがこのままでは風か通らない分暑い。魔力が潤沢だったらシアに纏わりついて貰って涼しくして貰うのだが。何かこういう遺物発掘できないかな。小型の冷風機搭載衣服みたいな。
「早く海の家で涼も?お腹も空いたし」
「ん……そうだな」
先程の行為もあり少し気だるくしていると目敏く気を効かせて差し出してくれた手を嬉しく思いながら取り、俺達は海の家へと向かった。
飯時を過ぎた海の家は混雑のピークは過ぎていた様だがまだちらほら人が居た。空いた席に座り店員に注文する。頼んだ焼きそばがやってきた。
「いただきまーす!天理、あーんして♪」
「できるか!」
家ならともかく。言いながら後から来たフランクフルトをあーんと待ち構えてた口に突っ込んでやった。これでいいにしろ。
「わーひ♪」
いいらしい。嬉しそうにもぐもぐ食べる様は微笑ましいものだ。と思っていたら俺にも「あーん♪」と差し出して来るので一口齧って返す。もっと深い関係であるのに今さら間接キスなど気にもしないがこそばゆい。近くにいた女性グループがキャー♡と小さく歓声を上げているのが見えたが見なかった事にする。恥ずかしい。平然としておくのがベストだろう。
「しかしあの蛸には参ったな」
「そうだね、油断してた。スケベ蛸じゃなかったら持って帰って食べたのに」
そういえばそうだったと思いつつ気になっていた事を聞いた。
「なんでスケベ蛸なんだよ。俺食われかけてただろ」
「違うよ?天理生殖されそうになってたよ?」
は?蛸に?なんで蛸の気持ち分かんだお前、動物的勘か?と驚きの視線を向けていれば俺はまた侯輝の雑学王っぷりを知らされる事になるのだった。曰く、吸盤の形からあの蛸が雄である事、そして俺に迫っていた足の内一本は生殖用の足で俺はなぜだか雌と勘違いされその足で種付け寸前だったのだそうだ。嘘だろ?
「勘だけど寝ぼけてたんじゃない?あの蛸。まあ俺は許さないけどね」
戦闘では派手に戦っている様に見えて意外とクレバーな側面を持つお前が随分と激昂していたのはそのせいだったか。思い出したのか少し憤慨している様子に思わず笑ってしまったが本人はいたって真剣だったらしくちょっと拗ねられたので真面目に謝罪する事にした。
「……手間かけた、すまん」
「ううん、俺がついてたのに怖い思いさせてごめんね」
シュンとした侯輝にでもお前のお陰で無事だったろ?とまだ少し湿った髪を撫でてやる。すると嬉しそうにふにゃりと笑うので笑い返しているとまた背後で小さくキャー♡と聞こえたが気合いで平静を保った。デートするには少し落ち着かないな。
俺達は遅い昼食を終えると夕方まで近くの露天を冷やかしたり波打ち際で遊んだりして過ごした。綺麗な貝殻を見つけて希守への手土産にする。
暗くなってきて人も少なくなってきた。もういいだろうとフードを外せば通りすがりの風の精が気まぐれに首元を心地よく涼めてくれた。
俺達は再び海辺を歩く。波の音を聞きながら。潮風を感じながら。何を話す訳でもないけれど、手を繋ぎただ一緒に歩いているだけで心地好いと感じる。しばらくすると遠くで親子連れが花火やっているのが見えた。騒ぐ子供が侯輝の様だと思わず吹き出すと侯輝が頬を膨らませるものだから余計におかしくて笑ってしまった。機嫌を取るように花火で遊ぼうぜと言うと満面の笑みに変わるのだから可愛いものだ。
浜辺の近場で露天売りしていた花火を買い再び浜辺へと移動する。
「よーっし!まずは派手なのやりたい!」
「おう。火、つけるぞ」
「おねがいー」
付属のマッチが湿気ていたので魔蓄石の最後の魔力を使い[[rb:火の精霊 > ブラム]]を呼び出す。『遊びで私を呼び出すな』と文句を貰いつつも火を付けて貰う。
ブラムが花火に点火する。シュバーっと派手な音を起てながら色とりどりの花が咲く。花火とはよく言ったものだ。
「きれーーっ!」
「だな。」
侯輝は目を輝かせて花開く様を見つめていた。次々に点けては子供の様に騒ぎを繰り返し、やがて線香花火を残すのみとなる。
侯輝の持つ最後の一本に俺は静かに着火した。すると、最初はパチパチッと弾けていたが次第にパチッ…パチッ…と小さくなり、最後にはポトッと落ちた。
静けさが訪れ、思い出した様に波の音が小さく聞こえてきた。
「終わっちゃった」
「なんか、寂しいな」
「ね。でも、俺は楽しかったな」
「俺もだ」
月明かりがほのかに照らす中、二人で顔を合わせて笑い合う。
花火を片付け、遠巻きに巡視していた海の神の神官に挨拶をすると、侯輝が差し出した手を素直に握って帰路についた。小さな街路灯だけが点々と灯る海岸沿いの少し小高い道を通ると広い海を一望出来るスポットにかかる。月明かりに照らされて海面がキラキラと波打つ様子はとても幻想的だった。空を見上げれば満天の星空が広がっている。
「星が降ってくるみたいだ……」
ほんの一時星に見とれていると侯輝に背後からぎゅっと抱きしめられた。
「天理は本当に星を見るのが好きだよね」
苦笑され項にかかる吐息がくすぐったい。その声にはほんのりと拗ねたような甘えたような、それでいて……不安が少し混じっていた。後ろ手で侯輝の頭を探り当てると優しく撫でる。そうすると首筋に鼻を擦り付けてきたのでくすぐったくて思わず身を捩ったけれど、行かないでとばかりに離してくれなかった。俺はまだお前を安心させてやれていないのかな。
「それでも…お前が一番好きだぞ、侯輝」
そう言って抱きしめられた腕をそっと撫でると腕の力が緩んだ。その隙をついて体を反転させ正面から抱きしめる。どこにも行かないぞと伝えるように。すると背中に腕が回されてきつく抱き締められた。
「……うん、知ってるよ……」
そう呟いた声は消え入りそうで、今にも泣き出しそうだった。大きな背を慈しむ様に撫で言葉を探す。普段雨霰の様に愛の言葉を投げ掛けてくれるお前の様に返せない自分がもどかしい。
「愛してる、侯輝。」
俺にはそれしか言えないから。せめてこの気持ちが伝わるよう願いを込めて真っ直ぐに見つめると泣きそうな笑顔があった。それはとても綺麗で愛しさが込み上げてくる。吸い込まれる様に口付けると嬉しそうな吐息と共に舌が絡まった。
「また来ようね」
「ああ、そうだな。夏も、たまにはいい。」
「えへへ。良かった♪」
繋いだ手を振りニコニコと侯輝が笑う。これだけ沢山侯輝の笑顔を見られるなら、これからの夏はきっと悪くない。
[newpage]
空気は鋭い寒さに満ち、息をすれば白い息がひとときの命を得て踊る。枝には霜が降り、辺りは凛とした静けさに包まれた。晴れ渡る日は続けども、空に昇る陽の光はなぜか寒々しくて、あまり着込むのを好まない俺にとっては苦手な季節。でも天理が遺跡から発掘し、学院の魔工技士によってカスタマイズされた遺物のコタツはその冬のあり方を一変させた。ぬくぬくとした暖かさは魅了の術でもかかっているかの様に俺を虜にした。もうずっとこの中で暮らしていたい。
なのに今日の様に澄み渡った夜になると、俺より冷えやすい体を持ちながら、寒空の下へといそいそと天体観測をしに行きたがるのだ俺の可愛い恋人は。
「侯輝、離せ。俺は庭に出たい」
「やだー。寒いよー。コタツで一緒にいよーよー」
なので俺は今その恋人の背中に引っ付き虫として張り付いているのだ。幼少の頃は自分より大きな背中だったのに今では覆えるほどになった。なんて感慨深く思う。折角夏の様にくっついても嫌がらない天理とコタツという素晴らしいコラボレーションが成立しているのにどうして外に出なければならないの?という思いを籠めぎゅうぎゅうと抱きつく力を強める。
「俺一人で見てくるからとにかく離せ」
「やだやだやだ一人やだ!寒いのもやだーっ!!」
「駄々っ子か」
そんな身も心も寂しくなる事言わないでよと更にぎゅっとしがみつく。天理は俺の腕をぐぐぐと引き剥がそうとしたが俺が意地になってしがみついていると抵抗を止め諦めてくれた。……と思ったけどやっぱり行きたいらしく、むぅと唸ると俺の腕に手を添え振り向き困った様な顔をして口を開く。その顔もかわいいな。
「侯輝、今日は絶好の観測日和なんだ。一緒に見に行こう?な?」
「う、で、でも寒いよう……」
危ない危ない、下手に出て無自覚甘え上手攻撃に流される所だった。負けるもんかと意思を固めているとコタツの隣の辺の布団から突然希守がひょっこり顔を出した。その手には天理がよく天体観測をする時に使う星座早見盤を手にしていた。
希守は外の事が知れて嬉しいのか、天理の遺物コレクション部屋でよく遺物を眺めており、大体何があるか把握していて小さなものなら運べるらしい。
まさか希守も星見に行きたいの!?俺はその瞬間敗北を予期した。そして希守が現れると親の様な顔をし出す天理が優しく、そして天理も希守の意思を察したのか少し嬉しそうに語りかける。
「どうした、希守。お前も星見たいのか?」
こくっと頷く希守を見て俺は敗北が確定した事を悟って天を仰ぎ、天理は俺を見るとニヤリと笑った。
「だ、そうだ侯輝」
「分かったよー!俺も行くよー!」
ヤケクソ気味に叫ぶ俺に愛する天理と可愛い希守の二人が揃って笑う。ああもう、そんな楽しみな顔されたら俺が動かない訳にはいかないでしょ!
俺と天理はモコモコの上着に帽子、マフラー、手袋を身に着ける。希守は妖精なので寒さは関係無い様だったけど俺たちが防寒着を着ると魔法でポンッと暖かい格好にしていた。いつも纏っている着物の上にドテラと言う厚手の上着を纏い、手にはキルトのミトン、足は足袋の上に藁でできた深靴を履いてワクワクとした顔で待っている姿が愛らしい。俺は天理の遺物コレクション部屋にある天体望遠鏡を担ぎ上げ庭の開けた場所へと持ち出した。この辺りは平屋が多く落葉樹が多いので敷地内でもそれなりに観測できるのが強みだ。何より家から離れられないブラウニーこと座敷童の希守と一緒に居られるのが良いよね。
外に出るとキンと冷えた空気が肌を刺す。空は雲一つなく澄み渡り満天の星が瞬いていた。希守が小さなランタン型魔光灯で照らしてくれる中、俺は持ってきた天体望遠鏡を設置し、天理が方角の調整やレンズを覗き込みピントを合わせた。天理が細かな調整をしている間、俺が寒そうにしていると希守が可愛らしく抱っこのポーズで手を広げていたので懐に入れてみた。不思議と暖かーい。
「よし、調整できたぞ……って何だよお前らばっかぬくぬくしやがって」
「えへへーじぇらしー?」
「ねーよ」
俺がからかう様に言い天理がむぅと表情を変えていると、腕の中の希守が天理にも腕を伸ばそうとしていた。天理はそんな希守を苦笑しながら頭を撫でる。
「はは、俺はいいよ希守、そのまま侯輝を暖めてやってくれ」
「そうだ!希守、天理も暖めてあげて?」
俺はふと思い付いて腕の中の希守を天理に託す。すると俺の意図を察したのか希守は頷くと天理の腕の中にぽすっと抱きついた。
「え、俺はいいぞ?……なんだか暖かいな」
「そしてー……えい!」
「おわっ!」
そして俺はそんな天理の背中に抱き付く。天理が希守を抱き締めて、そんな天理を俺が抱き締める。俺は腕の中に俺の愛しい人達が全部抱え込まれている幸せを噛み締めていると心の中がポカポカと暖まるのを感じた。ニコニコと嬉しそうな希守と照れ臭そうな天理が可愛くて堪らない。
「はは、身動きとれないな。これ俺ばっか温かくないか?」
「いーの、俺今凄く暖かいよ!ほら星を見ようよ、とっても綺麗だよ!」
指差した先には満天の星が広がっていた。天理が淡い光を灯す魔光灯で希守が持つ星座早見盤を照らすのを見ながら星座を探す。あれかな、あれかな?と探し示していると天理がポソリと呟いた。
「詳しくなったな?侯輝」
「え、だって、天理と星を見るのは初めてじゃないじゃない」
「そりゃそうだが……」
なんとなく、積み重なった日々を感じて嬉しく思う。幼少の頃、「動き辛いぞ、寒いならついてくるな風邪ひくぞ?」と言う天理の背中に引っ付いて、それでも追い払わずに一緒に居てくれた事を思い出す。あの頃から天理は優しかった。あの頃からずっと好きだけどもっと好きになって互いに愛する人となり今は俺の腕の中だ。
「冒険でもこの知識で助かってるんだよ?天理のおかげだね」
腰に回した腕をぎゅうとすると天理は照れた様に下を向く。
「そうか……まぁ、良かった」
「ふふ、照れてる。赤くなった天理あったかーい」
「俺を照れさせて暖をとるなっ!あっ希守までっ」
俺が擦り寄る様に天理に抱きつくと希守にまで楽しそうに抱きつかれた天理はあわあわと慌てつつもやっぱり振りほどく事はせずされるがままだった。
そんな二人をまとめて抱き締めて、俺はとても幸せな気分を感じていた。
しばらく星も見ずキャッキャとしていたら、ハッとした天理が照れ隠すように星見るぞ星!と声を上げたので俺達は天体観測に戻った。
天理がセッティングした天体望遠鏡を覗けば緑がかった青色の美しい星が見えた。どことなく、天理を思い出す星だった。どうやら希守は始めての体験らしく目を輝かせているのを見て俺は思わず笑みが溢れた。そんな俺達を見て嬉しそうに微笑んだ後また空を見上げた天理の横顔は先程見た星よりもとても綺麗で俺は見惚れてしまったんだ。
「ねぇ、天理って星見る時目キラキラさせてるの知ってる?」
「は?いや、そんなこと無いだろ?」
「凄く楽しそうに子供みたいに清んだ目で見てるんだよ?凄く星好きなんだろなって。ちょっと妬けちゃうくらい」
「そんなにガキっぽいか……?まあ、好きだけど、」
天理は子供の頃お母さんに貰ったという、なんと1000年前に作られたらしい朽ちぬ金属でできた遺物の星座早見盤を大事していた。きっとその頃から星に魅入られていて、今もその少年の様な心のままで見ているのだろうと思うと、微笑ましいと思うと同時になぜだか少し悔しい気持ちになるのだ。天理はしばし星座早見盤をぼぅ……と眺めた後少し頬を緩ませてポツリと洩らした。
「お前の、瞳みたいだから」
「っ……」
普段照れ屋の癖にそんな不意打ちは卑怯だ。自分で顔が火照るのが分かる。思わず黙り込んでしまった俺を振り向くと天理が珍しいものを見たような顔をしたあとクスクスと笑った。
「ふふっ、赤くなった侯輝もあったかいぞ」
「もぅ」
さっきのお返しだなと笑う天理をちょっときつく抱き締めると「苦しいぞ」と言いながらも笑っていて俺はなんだか胸がいっぱいになったんだ。
「俺も天理が好きだよ。今も、昔からもずっと」
「うん、俺も……好きだぞ」
そう言って二人で笑い合い、そんな俺たちを嬉しそうに見ていた希守を撫でた後俺達はまた星空を見上げたのだった。
満足するまで星を見たあと屋内に戻る。冷えきっていた体は、ほんのりとしか暖かさを残していなかった室内の空気でさえ暖かく感じた。
「楽しかった?希守」
玄関から入り希守が玄関の上がり框にトンッと上るとまたいつもの着物姿にパッと戻り満面の笑みで頷いた。最初はなかなか俺には慣れてくれなかった希守も大分慣れてきてくれて嬉しい限りだ。
「ふふ良かった。お前のお陰で侯輝を外に連れ出せたし。また見ような希守」
天理がしゃがんで希守を撫でると天理にぎゅっと抱きついて頬に擦り擦りと少し甘えていた。天理も照れ臭そうにしつつも嬉しそうに抱き返し応えているのを見ていると、本当の親子の様に仲が良いなと思うと同時に嫉妬してしまう自分に苦笑するしかないけれど。そんな思いが漏れてしまっていたのか希守がおいでおいでと仕草したので近づくと頬に軽くキスをされた。ぶああっと震える程嬉しさに感動していると希守は満足したような笑みを残し廊下をトトトと奥に進みながらすぅ…と消えていった。
「おやすみ希守ー。えへへ、俺パパになった気分~」
「……俺がママかよ」
天理は自分でポソリと呟いてじわじわと赤くなりつつ恥ずかしげに俯いたので俺はたまらずその肩を抱き寄せた。
「楽しかったー!また来年も一緒に星見ようね」
「ああ、良かった……ってお前今年はもう見ないつもりか!」
「やーん!寒いんだよぅ」
甘える様に勘弁してー泣き付くと天理は俺の頭を苦笑しながら礼を言いつつぽんぽんと撫でてくれた。
「はいはい今日は付き合ってくれてありがとな」
それから冷えきっていた体を暖めるべくお風呂に入り軽くお酒を飲んだりしながらのんびり過ごした。
「やっぱりコタツはいいよねえ……」
返す返すもコタツは素晴らしい。天理が見つけてきた遺物ベスト3に入ると思う。そのぬくぬくとした温もりは俺を虜にするんだよね……と思いながら肩まで入っていると、食器の片付けやらを済ませ戻ってきた天理がややむっすりとした顔でミカンを入れたトレイを持って見下ろしていた。
「こら、肩まで入るな。俺も入れろ」
トレイをコタツの上に置き場所を開けろと額をぺちぺち叩いてくるので俺はいそいそとコタツから半身抜け出して起き上がる。ちょっと寒い。
「じゃあこっちきてー」
「はいよ」
天理の細腰を引き寄せ俺の懐に招き入れる。仕方ないなと言う風にしながらも素直に入ってきてくれた天理を背中から抱き締めた。まだ石鹸の香りが混じる天理のうなじの匂いを吸い込む様に鼻を擦り付けると「やーめーろ」とくすぐったそうに身を捩る。がっしり抱え込んだ俺の腕からは逃れられなさそうだけど嫌がる事は無く小さく笑っていて可愛いなあと思う。天理はミカンを一つ手に取り剥くと一房差し出してきた。
「ほれ、食うか?」
「わーい♪食べる!あーん」
あーっと口を開ければ放り込まれる柑橘系の爽やかな香りと共に甘酸っぱい果汁が口に広がる。うん美味しい!もぐもぐ咀嚼していると天理が微笑んでいた。俺もミカンを手に取り剥くと天理に一房差し出して食べさせっこをしてみる。
「はい、天理もあーん♪」
「ん、ぁ、あーん」
外だとまずやってくれないけど、今日は甘々モードに入っているのか恥ずかしそうにしながらも素直に口を開けてくれた。可愛いなあ。
「んむっ」
「ふふ、今日は天理素直♪」
「うっせ、家ん中でくらい……っ、これ酸っぱ」
それでもまだ恥ずかしさがあるのか顔を背けながらミカンを食べる姿は本当に可愛くて仕方ない。と思っていたら天理が酸っぱい顔をした。俺のは甘かったんだけど酸っぱいのをあげてしまったらしい。
「ありゃ?こっちのハズレだったかな」
「むぅ。じゃ……さっき俺がやったやつ返せ……」
天理は少し頭を後ろに傾け振り向きつつ恨めしそうにじぃっと見上げてきた。でもその瞳の奥は全然怒ってなどおらず、むしろ俺が食べたみかんよりもずっと甘さを孕み、珍しく天理がお誘いをかけていると分かると俺は嬉しくて顔がにやけるのを止められず照れてしまった。ちょっとびっくりしたけど天理のお誘いは大歓迎だ。天理の頬に手を添え唇を近づけながら最終確認してみる。
「んー?じゃあ返しちゃおうかな?」
「ん…寄越せ……」
天理は目を細めると近づけた俺の唇を少しだけ顔を後ろに傾けて受け入れた。唇を重ねどちらからともなく舌を絡めその味を堪能する。天理が食べたミカンは本当に酸っぱかったのかなと思えるほどその口付けは甘く夢中になってしまった。
俺はもうそれだけじゃ足らなくなって天理の細腰を抱え込んでいた腕を解き天理のシャツの下に手を潜り込ませる。一瞬冷たかったのかビクりとされたが天理は腕を上げ俺の頭に手を添えて口付けに夢中になっていた。もっと深く触れ合いたくて天理の滑らかで引き締まった腹部を堪能する様に撫で回す。擽ったがりの天理はそれに身を捩らせるも、時折口の端から漏れる吐息は徐々に熱を帯びていた。
「っ……は……んっ……」
キスをしながら腹から胸に手を滑らせそこにある可愛い突起を指先で押し潰すように弄るとビクりビクりと体を震わせ堪える様なくぐもった声を上げたので一度口を離す事にした。
「……ぁ……はぁ……」
ほんのり頬を染めながら漏らす吐息は甘く、離れた口から銀糸が伸びプツリと切れる様は扇情的で、ついもう一度食らい付きたくなる衝動に駆られたがなんとか堪え、その手を下へと滑らせる。ズボンの上から触れたそこは既に熱を持ち硬くなっていたのだが、敢えてそこにはスルーし太腿を撫で回し焦らすことにした。冬の厚手のズボンは感触が伝わりにくいが内股を指を立てカリカリと引っ掻くようにしてやると面白いくらいに体を跳ねさせる姿が可愛くて仕方ない。
「可愛いよ天理」
耳元で思うまま囁くと小さく震え熱い吐息を漏らす。そのまま耳の中に舌を入れわざと水音を立て舐ってやると堪らないのか小さな悲鳴の様な声を上げながら敏感に反応してくれるのだから堪らない。焦れた様に俺の手を取り恥ずかしそうにしながらも、自ら股間へと導く姿は本当にいじらしくて愛らしい。布越しに優しく撫でるだけでももどかしい快感に襲われているようで小さく声を漏らす。身悶えている姿をもっと見たくて自らの衝動を堪えて撫で続ける。漏らす吐息はどんどん深くなり腰がもっとくれと揺れていた。その揺れはやがて後ろから押し付けている俺の固い雄に淫らに押し付けられる様に揺らされ、俺は溜まらず吐息を零してしまった。
俺ももう我慢の限界と焦るように天理のジッパーを下げ下着毎ずり下げようとする。が。
ガァンッ!
「痛っ!て」
「大丈夫?」
察した天理が腰を浮かそうとしてくれたが狭いコタツの中では動きにくく、天理もまた焦ったように動こうとするとコタツの天板に思い切りぶつけていた。
「っー、大丈夫だ。……狭い……くっそ、ロケーション悪いな」
「ふふっ……だね」
天理はコタツに向かって悪態をついていたが、お互いに呟き合うとどちらともなく笑い出す。互いの体は互いを求め確かに興奮している最中だというのにこの間抜けな会話のせいでなんだか可笑しくなってしまったんだ。そしてそんなやり取りもまた愛おしく思えてくるのだから不思議だ。俺は改めて仕切り直しとばかりにゆっくりと天理の下肢から衣服を全て取り去り、俺も邪魔だと脱いでしまった。お互い下半身丸出しという何とも情けない格好だったがそれすらも今は興奮する材料にしかならない。俺は改めてコタツに足だけ入り天理をもう一度引き寄せ俺を背に膝立ちで俺の上に乗せた。素足に当たるコタツ布団や、シャツの下から覗く天理の素足がチラリと見え、常に無い感覚が少しだけ特別な感じがしてドキドキしてしまう。
天理のお尻を愛でる為、ミカンをどかし天理はコタツのテーブルに突っ伏し腰を浮かせて後孔を俺の目の前に晒す体勢になるよう位置を調整する。
「……ん……っ……ぁっ……」
お風呂で綺麗にしてくれてあったらしいソコを俺が丹念に指で慣らすとそれだけで感じるのかくぐもった声が漏れる。奥へと指を進めるとなぜかソコはぬるりと濡れていた。
「ねぇ天……」
「し、仕込んどいた……」
テーブルに突っ伏したままの天理は耳まで真っ赤にしながら俺が聞くよりも早く、絞り出すような声量で答えてくれた。嬉しい!!その衝撃に俺が固まり喉を慣らすと目の前の後孔までもが恥ずかしそうにヒクりと動いた。その大胆ながらも健気な姿に俺は脳が焼ききれるかと思った。
「ぅわっ!やっ!」
衝動的に後孔にむしゃぶりついてしまうと、それをされるのは苦手な天理は慌てたように声を上げたが、構わず舌で舐ると、羞恥からか体を震わせながらも懸命に耐えている様子だった。その反応に気を良くしながらも俺は更に舌をねじ込み中へと侵入させる。舌を動かす度にビクビクと震える姿が可愛くてつい苛めてしまう。
「も……勘弁してくれ……」
「ごめんね、こっち、来て……」
やがてそんな俺の行動に耐えかねたのか涙声で訴えてくるのでこれ以上はまずいと顔を離す。天理の上体を起き上がらせると、背面座位の体制になるようにそびえ立っていた俺の雄にゆっくりと腰を下ろさせた。俺のモノがずぶずふと飲み込まれていく様子はとても淫猥で思わず凝視してしまう。そして全てを収めきったところで天理が大きく息を吐くと同時に俺に寄りかかってきた。後ろから細腰をぎゅっと抱き締めるとお互いの体温が混じり合いとても心地良い。
「動く、ぞ……」
このままずっとこうしていても良いくらいだった。だがしばらくすると天理がテーブルの上に手を置き戸惑い気味ではあったが積極的に動こうとしていたのでちょっと待ってと抱き締めた腕に力を込めて引き留めると耳元で囁いてみる。
「ゆっくり楽しも?……っ!」
するとそれだけで天理はゾクリと震え俺の雄を締め付けてきたので俺は息を詰めた。その反応が愛おしくて衝動で動きたくなる気持ちを抑える。それにしても今日の天理は本当に積極的だなと思う。いつもは恥ずかしがってなかなか自分から求めてくれない事の方が多いというのに。そのまま耳を甘噛みし、耳の中をぴちゃぴちゃと音を立てて舐める。
「ぅ、わ、ぁ……」
天理は身体を震わせ逃げるように身体を動かそうとするが肩を掴みそれを阻む。もっとも俺の雄に貫かれている天理が今更本気で逃げる訳はないのだけれど。それでも逃れようと身を捩る姿は余計に煽情的に見えた。
「ね、天理。今度山の方にある温泉行こうよ」
普段の会話の様にそう言いながらも最中なのだと忘れさせない様に前を開けたシャツの合間からさわさわと腹をなぞる。
「ん…?ん。いい、な……山中なら、星も綺れっ!っ、こらっ……っ」
震えながら掠れ声でも頑張って返事を返そうとしている姿を見ると、つい悪戯したくなってしまう。話す途中で胸の可愛い突起を探りキュッと摘まむと、ビクッと震え高く声が響く。非難するように悪戯した腕をぱしぱしと叩かれたが可愛いばかりで仕方がない。俺も弄る度にきゅうきゅう締め付けられて堪えるのに必死なのだけれど。
優しく突起を弄び小さく震えるのを感じながら話を続ける。
「天理と星見るのもいいけど……雪見ながらお風呂でイチャイチャしたいな……」
「……ぁっ……ぃいけど、他の、客に迷惑っ、だろ……」
不満そうに言う声に少し笑ってしまう。そうは言うものの俺がお願いすれば大抵聞いてくれるのだ。そしてそういう所が好きなんだと言ったらどんな顔をするかな?想像して思わず笑みが浮かぶ。そして同時に興奮してしまい無意識に腰を揺らしてしまうとまたビクりと震えた。
「んー?イチャイチャお話するだけ、だよ?ナニを想像したのかな?天理のえっち♡」
「なっ!こんっの馬鹿っ、あっ!クソ、さっきから、お前ばっか、も、動くって、」
もちろん状況が許せばナニもしたいんだけど。状況もなんなら作るし。
背面座位なのを良いことに俺が天理を一方的に身体中撫で弄り倒し、その首筋に吸い付いて小さく震え堪える姿を堪能していると、焦れてきたのか動き出そうとするので腰をホールドして動きを止める。
いつもなら恥ずかしがって限界まで我慢しているのに。別に積極的じゃなくてもどっちでもこうして交わってくれるだけで既に嬉しいんだけど。
「えへへ、今日は積極的だね。嬉しいな」
にやけながら少し覗きこむ。そうするとまた照れちゃうんだろうなと思っていたらやっぱり顔を赤くしながらも視線を逸らすとポツりと洩らした。
「星……見るの付き合ってくれたろ。嫌がってたのに。だから、喜ばせたかった……」
「!」
もう……可愛いなぁ……嬉しいなぁ……思わずギューっと抱き締めるとピクッと震えて硬直してしまったけど気にせず頬擦りをする。
「ありがと。俺の我が儘だったんだから気にしなくていいのに。俺も楽しかったしね」
「ん、そ、か……良かった、それに……ぃ、いや何でもない……」
天理は嬉しそうにしながら目線をコタツの方へ向け言葉を続ける。いつもより積極的な理由がまだありそうだったけど、また恥ずかしそうにゴニョゴニョと口籠ってしまった。そんな時こうやってぎゅーっと抱き締めていると照れ屋で隠し事が苦手な天理は正直にポロっと溢してしまうのだ。大抵それは天理にとって恥ずかしい事でも俺にとっては嬉しい事なので是非とも聞きたい。
「それに?ねぇねぇ教えて?」
問う様に緩く揺すり上げるようにするとビクリと震えながら小さく声を漏らす。そのまま優しく耳元へ囁き問えばきっと言ってくれるはずと思ったんだけど。
「っ……ぁ、……ひ、秘密、だ……」
頑なまでに話さない。そんなに言いたくない事?気になる!
そう思っていると熱くなってきたのか天理はコタツを少しだけズッと遠退けた。膝折で座る天理はもう完全にコタツから出てしまっていて、猛り前走りを滲ませる雄と素足が露になっていた。交わりの中で大分体は暖まっていそうだったけれどその魅惑の脚は少し寒そうに見えた。
「侯輝、その、寒いから早く暖めてくれ……」
そして俺に背を預け[[rb:辿々 > たどたど]]しくも甘えるように擦り寄られるともう俺は何もかも吹き飛んで腰を突き上げていた。
「ああッ!んっ……!」
いきなりの動きに大きく声を上げてしまい慌てて口を手で塞ぐ仕草をして必死に堪えている様が可愛いくてもっと聞きたくてつい意地悪をしたくなる。腰をグリっと押し付けるようにしながら耳元で囁く。
「……さっきの続きだけど教えてよ」
「……ぁぅ……いゃ……だ」
勘弁してくれとばかりにふるふると小さく首を振る。だけどそんな可愛い反応をされると寧ろいじめたくなるし甘やかしたくもなるんだよねと思いながらゆるゆるとした動きに変える。すると今度は物足りなさそうにもじもじとする姿が可愛くてしょうがない。このままずっと焦らしても良いかなと思ったけど、積極的モードが入りっぱなしらしい天理は「ぅぅ……」と小さく唸った後コタツの天板角に手をつき自分で腰を動かし始めた。
「ぁっ……んっ……!」
「っ、あ"ぁ……気持ちいい……天理……」
俺もギリギリで焦らしていたからその刺激に思わず呻くような声が漏れる。それに気を良くしたのかどんどん大胆になっていく天理は本当に堪らなくて嬉しくて、俺も気持ち良くさせてあげたくて天理のイイ所を突いてあげるとあられもなく嬌声を上げた。
「あぁっ……!」
愛する天理と律動を合わせながら共に絶頂へと近づいていくのはこの上ない快感だ。嬌声と交わりの水音と荒い呼吸が広い居間の空気を満たしていく。やがて俺の雄がきゅうきゅうと締め付けられ天理の絶頂が近い事を感じる、俺ももう限界だ。いつもと少し違うのは、天理が快楽を堪える様に縋っているのが俺ではなくコタツテーブルで、快楽と色香にまみれながら何よりも俺を愛していると訴えるその顔が見えないのはやっぱり寂しい。
そう思いながら絶頂が近づいていた時だった。
「侯、輝っ……!!」
「っ!!!天理っ!」
「……っ!!!」
名を、呼ばれた。でもその声音はいつもより焦がれる様な甘く、それでいてほんの少しだけ寂しさを孕んでいた。きっと俺と同じ気持ちでいてくれたと思い感極まった瞬間、俺は一際強く抱き締め突き上げると愛するその名を呼びながら精を放っていた。すると天理は声もなくビクビクと俺の精を搾り取る様に震え達するとくたりと脱力した。俺はその身体を抱き寄せるとそのまま倒れて共に横になった。
「はぁっ……はぁっ……、あっ…………」
横になりまだ余韻にびくびくと震え息を整えている天理からズルリと抜け出すとまた天理から甘い声が漏れた。俺もまだ息が整えきってなかったけど、すぐに起き上がる。まだ力入らぬ天理は、横になったまま火照った顔だけを傾け俺を見上げた。少しの驚きと寂しさと。もう終わりか?って書いてあるって思っていいよね?天理の手がその推測を肯定するかの様に弱々しくだが俺の置いていた手に触れてきた。俺は頬が緩むのが止められず天理に覆い被さる。
「えへへ、やっぱり前からシよ。天理♡」
「……!ふふっ、ん……いいぞ」
天理は一瞬目を見開くと嬉しそうに微笑んで両の手を俺の首の後ろに回してきた。やっぱり抱き締め合いながらするのが好きだ。そして天理もそう思ってくれているのが嬉しい。きっとすごくだらしのない顔をしている自覚はあったけれどその感情のままに天理に抱きついた。
コタツ邪魔だなと足で部屋の端にぞんざいに追いやると天理がなんだか嬉しそうに笑っていた。なぁに?と聞いてもなんでもないと苦笑気味に笑って俺を引き寄せる。視界にはまだ少し火照った天理の愛おしそうな顔だけが映った。視線が絡み合えばどちらからともなく口付けを交わし、その味を堪能していると、未だに脱いでいない俺のシャツを脱がそうと裾から手を差し入れられた。俺より冷たいその手にビクッ震えてしまい、緩くその手を止める。
「やーん♡寒くて脱ぐの嫌だよぅ♡」
「お前な……」
天理が俺の肌に触れたがってくれるのは知っているしとても嬉しい。天理はもう前を開いたシャツ一枚だけでほぼ全裸だし俺だって全身で触れあいたい。だけどこうしてわざと嫌がっておねだりしていると天理は仕方がないなという顔をしながら甘やかしてくれたりするだ。我ながら甘えすぎなのは自覚がある。
そして天理はやっぱり俺の期待に応えてくれるのだ。視線をさ迷わせ眉をひそめ、恥ずかしくて仕方が無さしか見当たらない表情でソロソロと脚を開いて両脚を抱えると秘部を晒して見せた。
「……ほ、ほら、寒くても俺で暖を取る方法は知ってるだろ?脱げ……」
その強気な言葉とは裏腹に、その晒された秘部は俺がその痴態に凝視してしまうとヒクリと動き、俺が先ほど放った白濁を流れ落とそうとしていた。俺はごくりと唾を飲み込むと、秒でシャツを床に叩き付ける様に脱ぎ捨てた。俺を脱がしたかったら北風よりも太陽よりも天理なのだ。
「あっためて♡大好き、天理♡」
えへへと天理にのし掛かり開く脚をがっしと掴むと復活どころかむしろ先程より元気になった雄を後孔に押し付ける。すると天理の後孔が待っていたとばかりにまたヒクりと疼くのを感じた。天理は苦笑しつつも頬を染めながら満足そうに微笑んだ。
「好きなだけ、暖めてやる。俺も好きだ……侯輝」
もう幾度身体を重ねても抱き尽くせない。俺の体と心を暖めてくれる俺の唯一。天理はその掌を慈しむ様に俺の腹から胸、そして肩へと天理を護り負った傷痕を撫でるように滑らせ、俺をゾワリと震わせると首に腕を絡めてきたのでそのまま引き寄せた。視線が絡み合えば自然と唇が重なる。甘い吐息と共に舌を絡め合い深く求め合い、そのまま腰を押し進めればすんなりと挿入できた。ぐちゅんと水音を立てて飲み込まれていく感覚に背筋を震わせつつ奥まで到達すれば、全身を震わせながらきゅぅうと締め付けてくる肉壁の感触に思わず身震いしてしまう程だ。
「……ん、はぁ……♡気持ちいいね♡」
「ん……♡」
ちゅっと音を立てて唇を離すと額を合わせてそう問いかける。天理は愛おしそうに目を細め微笑むと小さく頷いた。自ら腰を揺らし始めたので応えるようにゆっくりと抽挿を開始する。
俺の全てが天理で満たされる。ああ、好きだ。本当に大好きだ。この想いだけはずっと変わらないのだろうと思う程に愛おしい。だから今日も俺は君を求めるんだ。
愛してるよ。天理。
幾度と果て、色香を漂わせくったりと横になりながらも愛おしそうな表情を向けてくるその姿は、お前のものだぞと言外に伝えてくれているようで嬉しくなる。かくいう俺も天理のものだ。その想いが伝わっているのか力無く横たわりつつも嬉しそうに微笑まれると俺は懲りもせずキスを降らせた。天理はくすぐったそうに笑った後くしゅんとくしゃみをしたので、俺は急いで抱き上げると風呂に連れて行き身体を清め温めた。
うっかり再盛り上がりしそうになるのを抑えながら風呂を済まし二人の寝室へと戻ると天理を横たえて俺も隣に寝転んだ。二人で布団に入っているとじんわりと暖かさを感じられて心地良い。交わりの後はいつも嬉しそうにしている天理だが今日はどこかいつもより機嫌が良かった。思えば今日は成り行きとも思えたが天理からお誘いしてくれたのだ。嬉しい事この上ないなと思いつつふと先ほどの天理を思いだしたのでもう一度聞いてみる事にした。勿論逃げられない様にしっかりと抱き締めておく事は忘れない。
「ねぇねぇ、さっき言ってた秘密ってなあに?」
天理が今日積極的だった理由はそこだった様に思う。一緒に星を見て嬉しかった以外のもう一つの理由。頑なに言わなかった秘密。
「ぅ……!ああクソ、流せたと思ってたのに……」
すると天理はまた少し顔を赤くすると腕の中でモゾモゾゴニョゴニョとし始めた。可愛い。そして秘密は絶対可愛いやつだと俺は確信し、聞かねば眠れないとばかりにじーっと見つめたまま待ち続けたのだった。
「……嫉妬、してたんだよ」
暫くして観念したのかぼそりと話し出した声は小さかったけれど俺の耳にはきちんと届いた。天理が嫉妬?珍しい。いつも嫉妬するのは俺の方なのだ。俺がモテている事に、一見クールそうに見えて実は嫉妬というより自信無げにしょんぼりしている事は知っていたけれど。でも誰にだろう。そういえばさっき希守がホッペちゅーしてくれたけど、俺と希守が仲良くなった事は、完全親目線になっている天理にはその対象としてなりそうにない。さっきだって微笑ましく笑っていたのだ。あと俺最近誰かと仲良くなってたっけ?首を捻っていると察したのか続けて話してくれた。
「……わ、笑うなよ?…………コっ、コタツ、に……」
「コタツ?!」
念を押す天理に神妙にコクりと頷いて待つことしばし、思いもよらない単語が出てきたので思わず聞き返してしまった。すると天理はちょっと拗ねた様にしながら説明した。
「……冬になったら寒い寒いってくっついてくるお前を暖めてやるのは俺のはずなのに……俺より夢中にさせてんなよってな……」
っーーー!もう一回結婚しよ!?
天理は遺物が大好きだ。けれど嫉妬対象まで遺物になるとは思わなかった、天理らしい。思い返せば天理は俺が所構わず抱きつくと照れるのに、俺がコタツに入っていると、積極的に俺の懐に入ってくれようとしてた。俺と、コタツの間を割る様に。先程の交わりでもさりげにコタツを遠ざけたり、俺がコタツをぞんざいに遠ざけたら嬉しそうに笑ってた。などと冷静に分析していく事で今にも衝動で再爆発しそうになる体をなんとか押し留めることに成功した俺は偉いと思う。だってこんなに嬉しい嫉妬があるだろうか?今日の天理の一連の行為が、お前を一番暖めて、夢中にさせる事ができるのは俺だろ?ってアピールなのだとしたらもう嬉しくてたまらない!!
しかしここで我慢出来ずに再爆発させようものなら、頑なに黙っていようとしていた秘密を明かしてしまったことを後悔させてしまうかもしれないと思いぐっと堪える。今後の天理の可愛いを味わう為にも我慢だ。だが天理はそんな想いを無下にするかの様にポツポツと続けた。
「……昔からお前の方が体温高いし、実質暖めて貰ってるのは俺の方だったけど、それでもお前が寒いって言うから……それを口実にだな…………ぁ、今のは忘れろ……」
忘れられるはずない!!
俺は昔から冬は苦手だと思っていた、そう思い込んでいた。確かに冬の太陽はどこかよそよそしくて苦手だったけど、本当の所そうでもなかった。俺はガキの頃から天理の事が好きで、冬の真っ白で冷たい雪は、色が白く俺より体温が低い天理を思い起こして割と好きだった。冷え性の癖に星空を眺めるのを好み、でも寒そうにしている天理を暖めてあげたくて、ガキの俺はそうだ!と思いつき寒い寒いと言いながら天理にくっついた。天理が仕方ないなと言いながらもくっつかせてくれて、どこかホッと暖まった様な表情になると俺の心はポカポカと暖かくなった。優しい天理にかこつけてくっつき、天理の体を暖めてあげる代わりに俺は一方的なほのかな思いを暖めて貰っていたと、ずっと思っていた。それに味をしめた俺は冬になるとクセになって寒い寒いと言い続けていたのだ。でも本当は天理も一緒に居たいと思っていてくれていて、その心も暖められていたのだとしたら?こんなに嬉しい事はない!
俺が散々纏わりついて天理が俺に恋心をもってくれる様になったのは俺が天理の背を追い抜いた頃だとは言っていたけれど、正確な所は本人すらも曖昧なのだとしたら?そう思うと尚更嬉しかった。
ああ駄目だ顔がニヤけてしまう。
「ねえねえ、冬俺が寒いって言うから仕方なくくっつかせていたっていう体で、本音は素直にくっつきたいって思ってたのいつから?ねえねえ」
「んなっ!知るかっ!忘れろって言ってるだろ、黙って寝ろ!」
ああやっぱり可愛いなあ……!!余程恥ずかしかったのかちょっと涙目だ。腕の中でジタバタと暴れそうになる天理をきゅっと抱き締めると途端におとなしくなるのだから本当に愛しいと思う。
いつからだろう。俺が告白した時から?やっぱり俺が天理の背を抜き始めた時から?もしかしてガキの頃?最初から?どこからでもいいや。今も、そして片思いだと思っていた過去の自分全てが幸せだと今なら思えるのだからそれでいいんだ。ああもう本当に大好きだ!!
「うん、ありがと♡おやすみ天理♡」
「…おやすみ…侯輝」
俺はそっと抱き締め返してくれる腕の中の温もりを大切に抱きしめながらそっと目を閉じた。凍てつくような冬でもきっと、俺の心はこの温もりに包まれているのだ。