12.カラフル対応AI
土護達兄妹が都に上京し、挙式に出席する家族が揃うと、幌馬車に乗り結婚式会場である遺跡へと式の段取りを確認しながら向かう。
天理の予想通り、遠い他国で働いている天理の両親はやはり来られないとの事だった。天理の元には二人の結婚了承した事、侯輝への礼、手紙だけ式場で読めとだけ添えられた手紙が来ていた。
「式場で土護君に読んで貰えだと。相変わらず自由な親だよ」
小さくため息をつきながら天理は両親からの手紙を神父役を務める土護に渡す。
「預からせて貰うね。大変なんだろう?あちらの国も。手紙は定期的に来ているのであればいいんじゃないかな」
土護は大切に懐に仕舞いつつ侯輝をチラと見ながら言うと、侯輝は慌てた様に弁明する。
「だからこれからはちゃんと出すってば!」
「こいつ結局招待状俺に書かせようとしたからな。俺は口頭筆記官じゃねぇっての」
「二人の招待状なら天理から出せばいいと思って…」
言い訳をする侯輝が天理にぺしっと叩かれる光景を見て土護は苦笑しながらも微笑ましく二人を見た。
「天理、これからも世話をかけるね」
挙式を上げる遺跡に辿り着く。以前は遺跡を守る警護機械兵が居たがその後冒険者により駆逐され安全な遺跡となり、調査によっていくらかの機能を所有する遺跡である事が判明していた。
入り口近くの小部屋で侯輝と天理は別々に結婚衣装に着替える。侯輝が白のモーニングコートで身なりを整え、アップだったツーブロックの髪型を更に上にあげて整え薄くメイクを入れると、普段ラフな服装である事が多く、元々端正で逞しい顔立ちではあったものの幼さが残っていた顔から少年らしさが消え、精練された美丈夫となった。金髪を煌めかせ笑顔で佇めば爽やかな王子様に見えなくもない。
別室で天理が準備を終えるまで待っている間、侯輝はそわそわ落ち着かなかった。そんな弟の様子を見てメイクを担当した土花が突っ込みを入れる。
「落ち着きなさいよ、侯輝」
「だって、本当に天理と結婚出来るだなんて夢みたいでさ…」
侯輝が自分の頬を抓ると、侯輝の土花がすかさず直し始めた。
「ちょっと!折角やってあげたメイクが崩れるじゃないの」
そうこうしていると神父役として祭服に着替えた土護が天理の支度が終えた事を伝えに来た。
侯輝が部屋を移動し目に入ってきた天理の姿に侯輝は言葉を失った。侯輝と揃いの白のモーニングコートはスタイルの良い天理に良く似合っていた。普段少し下していた前髪は上げられ後ろに流されており、すっきりとした表情で天理の整った顔立ちがよく見えた。侯輝同様薄くメイクされた顔はいつもより優美な雰囲気が漂う。そんな天理が着飾った侯輝を見た一瞬目を丸くして驚いたあと、にこりと微笑すると侯輝はどきりと心臓が跳ね上がり言葉を失った。
「侯輝?おかしいか?……なあ、何か言ってくれ」
ぽーっと見惚れたままの侯輝に、天理は恥ずかしがりながら、いつもと違う髪型にそっと手を添え不安げに聞いた。その言葉に侯輝はハッと我に返る。
「凄く綺麗だよ天理!天使かかみさまが舞い降りたのかと思った!凄くよく似合ってる!」
「大袈裟だ。ありがとう。お前も男前だぞ」
侯輝は天理の手を取り、眼をキラキラさせながら褒めると、天理ははにかみながらも嬉しそうに微笑みつつ侯輝を眩しそうに見た。
「ありがと!天理!」
侯輝が喜びのまま天理に抱き着き、天理は慌てつつも侯輝を抱き留める。姉妹に呆れられ、土護に窘められて、一同は式場と定めていた部屋に移動した。エレベータの籠に全員乗り込むと転移ボタンを姉妹に押して貰い、式場の部屋へと転送された。
そこは二人の始まりの部屋だ。
はじめて訪れた土護・土実・土花は、話には聞いていたが、最初、壁も窓も無く天井から無機質な明かりだけが灯るその部屋に驚いた。侯輝と天理が正面奥のプレートの前に立つと文字が浮かんできた。
『この部屋に入ってきた者の愛を確認し、扉を解放します』
すかさず侯輝はプレートに向かって告げる。
「俺達の関係は婚約者だ!これから家族となって愛を証明をする!」
『ではお手伝いしましょう』
プレートの文字が変わると、何も無かった部屋の中に突如祭壇や燭台、椅子、鮮やかな花で飾られた花道などがスゥっと現れ蝋燭に火が灯されると厳粛な教会の様相となった。土護・土実・土花は感嘆の声をあげる。
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「土護兄、お願い」
侯輝が振り返り兄の名を呼ぶと土護は神父の顔になり二人を迎えるべく祭壇へ向かった。土実と土花が静かに椅子に座る。そして侯輝と天理はバージンロードの端に立った。
「ではこれより、二人の新郎、侯輝と天理の結婚式を執り行います」
土護が厳かに結婚式のはじまりを告げた。
「男同士の場合どうすんだろな?腕組んでくか?」
天理はボソッと侯輝に相談する。
「俺達ならやっぱこれでしょ!」
侯輝は天理の肩と膝に手を添え、お姫様抱っこをしてみせた。
「はぁ!?ちょっと待って!それは無しだって!!」
「大丈夫、俺が絶対落とさないから」
侯輝の腕の中で恥ずかしそうに慌てふためく天理に、侯輝は自信満々に宣言するとゆっくりと進み始めた。
「そういう問題じゃない!!」
「ちょっと始まる前からイチャつき始めてるじゃないの」
「もう侯輝ったら、私の完璧な化粧が崩れないか心配だわ……」
「まあ、いいんじゃないか」
始まる前から既にラブラブオーラ全開な二人に土花が呆れて突っ込みを入れ、土実が天理のメイクの心配をし始め、土護が苦笑しながら二人を見守る。観念した真っ赤な天理を抱えながら侯輝がバージンロードを進み、祭壇の前に着くと天理を下した。
神父役の土護が聖書を読み上げ大地の神に祈りを捧げる。
「では、誓いの言葉を述べてください。新郎、侯輝さん。あなたはここにいる天理さんを病める時も健やかなる時も富めるときも貧しき時も、伴侶として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います!」
侯輝は決意に満ちた瞳で力強く答えた。
「新郎、天理さん。あなたはここにいる侯輝さんを病める時も健やかなる時も富めるときも貧しき時も、伴侶として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい。誓います」
天理は真摯な表情で、しかしハッキリとした口調で答えた。
「二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたこの二人を心から歓迎いたします。今日、二人はカップルとなりました。おめでとう。今、この瞬間より二人が共にある限り、死がふたりを引き裂いても、魂は永遠に結ばれるでしょう。それでは指輪の交換をしてください。そして、誓いの口づけを……」
侯輝が天理の手を取り指輪を薬指に通すと恭しくその指にキスをする。土花が「うちの弟すっかりキザに育ったわね」と小さく呟いた。
続けて天理も侯輝の左手の薬指に指輪を通す。天理がちらりと侯輝を見るとわくわくと期待する目で見られたので仕方ないなと侯輝の手をを返し、手の内側から指輪にキスを落とした。天理が照れている中、侯輝はつい先ほどの恭しさを忘れ頬が緩むのを必死に堪えていた。
「やだ天理さんたら大胆。意味分かっててやってるのかしら」
「私は天理さんの性格的に分かってない方だと思うわ。それにしても侯輝、本当に幸せそうね」
指輪交換が終わり、侯輝が恥ずかしがり屋の天理がここでキスをしてくれるだろうか、フリだけでも…思いながらの肩に手を添える。すると少し体を固くした天理が片手を上に差し出してきた。
「侯輝、手、組んでくれ……」
小さな声で囁くように言われ、侯輝は嬉しそうに差し出された手を絡ませ、勇気を与える様に力強く握る。天理がほっとした様な表情になり、体の固さが抜けたのが分かった。そしてお互い愛おしそうに見つめ合うとそっと唇を重ねた。
「おめでとう!」
「おめでとう。二人とも」
「おめでとう、侯輝、天理」
土花がフラワーシャワーを派手に撒き、土実がライスシャワーをやさしく振りかける。土護は心から二人を祝福した。
『あなた方の愛の証明はされました』
奥のプレートの文字が変化するとスッと壁に扉が現れ、ゆっくり開かれると外の明るい光が二人を照らした。侯輝と天理は幸せそうな笑顔で微笑みあい、その手を強く握りあったまま扉へと花で溢れた道に足を踏み出した。
『お幸せに~』