2.出番だ!よし、缶詰だ!
「完了証確認したよ。お疲れ様。侯輝、これが今回の報酬だよ」
「はぁーい。えへへ……」
冒険者ギルドに辿り着くとカウンターにいたパメラに侯輝との護衛契約の完了手続きを済ませる。
事前情報になかった中型機械兵がいた事は情報として提供すると少しだが情報料を得た。古代AI?パネルのあった部屋の情報は学院に持ち帰る事にし、侯輝には守秘義務を結ぼうとしたらいいよ!と二つ返事された。ただはダメだと押し問答した結果毎週ご飯を奢るで決着した。いくら旧知の仲とは言え契約はもっときちんとすべきだろうと内心思うものの、侯輝が嬉しそうにしているものだから俺も毒気を抜かれ良しとしてしまうのだから世話は無い。
侯輝はパメラから報酬金を受け取ると銀貨を数えもせずに財布へと突っ込んでいた。端から見れば異様にも見える侯輝の上機嫌っぷりに業務の間スルーしていたパメラは流石に突っ込みを入れざるをえなかった様だった。
「ちょっと天理、侯輝のやつ何があったんだい?」
「え、ええと……」
パメラは闊達とした性格だとは思うが侯輝が俺と付き合いだしたからだと言うのは流石に戸惑うかもしれないと俺が返答に悩んでいると侯輝が満面の笑みと共に遠慮無く宣言した。
「えへへ、俺たち恋人同士になったんだ♪」
「おい、侯輝……」
「はぁーーー。やっっとかい」
「え?」
「お、なんでえお前らやっとくっついたのかよ!おい!今月くっくで賭けてたやついるか?!」
「は?」
「わあーおめでとうございますー!」
もっと驚かれると思えばパメラの長いため息と呆れたような反応に続き、近くにいた侯輝の知己と思われる冒険者やらギルドスタッフやらが俺達を揶揄する声を上げる。
「やっとかよ!見守ってた甲斐があったってモンだぜ!」
「キャーおめでとう!ずっと好き合ってたの知ってたけどもどかしいったら!」
次々にお祝いの言葉を投げ掛ける人達に、ギルド中が何事?とカウンター周辺に集まってきた。俺は俺達の仲を皆知っていたのか?と呆然としていたが、はっと我に返りパメラを見る。すると彼女は肩を竦めて苦笑した後、侯輝を小突きながら祝福していた。
「みんな!今まで応援ありがとー!お祝いありがとー!!」
侯輝は俺の肩を引き寄せ皆からの祝福に幸せそうな笑顔で答えている。
嘘だろ、俺だけ誰にも知られていないと思っていた?俺は混乱で頭がついていかず、ただ皆からの祝福を呆然と聞いていた。
「これで一安心だな!流石にチューはもうしたんだろ?やる事もやったのか?」
「あーそれ俺も聞きてえ」
「ちょっと!あんた達……」
そんな俺に構わず冒険者達は俺達が恋人同士になった経緯を聞き出そうと質問責めにしてきたが、パメラが止めようとしてくれた。それでも俺は恥ずかしさと混乱とで硬直していると、侯輝がスッと俺の前に立った。
「もー!天理いじめちゃダメ!」
そう言って侯輝は俺を隠す様に抱きしめた。いじめるって子供か俺は。子供なのか。しっかりしろ俺。ヒューヒューキャーキャーと上がる歓声、呆れるパルマ、固まる俺。
「さ、行こ!天理!」
侯輝はにっこり笑って俺の肩を押し歩きだした。呆気にとられてされるがままな俺にパメラが投げ掛ける。
「……程ほどにしなよ?」
その言葉に俺はようやく現実味を取り戻し顔が熱くなっていった。俺は赤面した顔を隠す様に急いでギルドを後にする。
「皆に祝って貰って良かったね!」
「っ、そうだな!」
公開仲良しムーヴに羞恥を覚えてしまう俺に気遣ってくれているのか、俺の醜態には一切触れずにニコニコと話す侯輝に、俺はもう自棄糞で返す事でしか平静を保てそうになかった。
夕暮れの街を晩飯を物色しながら歩き俺の家に着く。やっと落ち着ける場所に辿り着いた俺に買った食材で侯輝が晩飯を作ってくれた。ニコニコな侯輝の笑顔を見ながらありがたく美味しい食事を頂き、礼を言えば照れたようにまたニコニコと笑った。ここまでは今までだってよくあるパターンだ。だが今日は違う。
「侯輝、先風呂に入ってくれ」
「天理、先お風呂入っていい?」
これからはじめて交わるのだと意を決して言ったら侯輝も同じ様に言った。お互いなんだかおかしくなって同時に笑った。
「えへへ、じゃあお先に貰うね」
「おう。タオルは出しとくから……」
食事の礼にと片づけは買って出る俺を横目に侯輝は照れ笑いつつも慣れた風に風呂へと向かう。脱衣場にタオルを用意してやりとベッドに座り手順のおさらいをした。
だがいまいち落ち着かなず手順を確認しようとノートでも開いてみたが頭に入って来ず、うんうんと唸っていればいつの間にか風呂を出た侯輝がこざっぱりとしたシャツとハーフパンツで立っていた。何度も見た事がある姿だというのに、拭き損ねた肌につく雫が色気を醸し出している様に見えるのは意識し過ぎだろうか。
「早かったな」
「そうでもないよ?丁寧に洗ったからね♡えへへ、お次どーぞ」
「お、おう……あ、俺も、その、長いからな。準備で」
「うん、待ってるね♡」
侯輝は頷く俺の頬を撫でると軽くキスして嬉しそうにベットに座った。
俺は居たたまれない気分になりながら早足で浴室に入り、体を洗うと、これから受け入れる箇所を器具で念入りに洗った。そっと指で触れる。たまに試してみてはいたが、指で広げてみるとまだ固く閉じているようだ。覚悟を決めているとはいえ、実際そういう事になると緊張してしまう。ローションを滴しふぅと息を吐いて、解してみる。相変わらず違和感ばかりで気持ちよさは良く分からなかった。それでも諦めていた想いが叶った事が嬉しかったし、何より侯輝に喜んで貰いたかったからできる限り丁寧に解してみた。そして湯船に浸かる。
この期に及んでまだ逃げ腰な自分を奮い立たせるように両頬をバシンと叩くと立ち上がり脱衣場へと出て水気を拭う。すぐに脱がされるだろうと思うと部屋着を着るのがいつもよりもたついてしまうのは許して欲しい。水差しからコップに水を注いで飲み干す。冷たい水で少しだけ落ち着いた所で侯輝が待つベットへと向かった。
「またせたな」
「んーん。ふふっ、なんか照れるね♡俺にもちょーだい♪」
「ん」
ベッドに座りソワソワと待っていた侯輝は俺を見て緊張を汲んだのか侯輝も頬を染めて微笑んだ。そんな侯輝を見て俺は少し体が軽くなる。そのまま持ってきていたコップを渡し注いでやると、侯輝は一気に飲み干した。一瞬、無防備に晒された日に焼けた男らしい喉仏が眩しくて目を逸らす。昨日まで平静を保てていたのが嘘の様だ。見慣れていた筈の身体を急に意識し始めて感情が追いつかない。緊張からまた喉の乾きを覚えた俺は、ふと口移しなんてどうだろうかと思いついた。
「ぷはーっ」
「……俺にももう一口くれ」
「口移ししよっか?♡」
思いついたはいいが「口移しでくれ♡」とは恥ずかしくて言えず、自分なりに甘い雰囲気を漂わせながら水を所望するしかない己の不甲斐なさを呪う。だが侯輝は期待通りの言葉を冗談めかして言ってくれた。同じ事を思い、意思が通じた様で嬉しいと思うも束の間、その後の事は考えていなかった。羞恥を覚えつつもままよと侯輝の持つコップに水を少し注ぐと隣に座り寄り添う。
「……くれ」
「!いいの?」
「その、つもりで、言ってるしな……」
驚きつつも嬉しそうにする侯輝を見て、これでよかったのだと内心ホッとした。これからやることを俺だって望んでいるのだと、そう伝えたくて言った言葉だったがどうにも俺は締まらない。だが侯輝はそんな俺に嬉しそうに微笑んだ。侯輝は水を口に含みコップをサイドテーブルに置くと、俺の肩を抱き寄せそのまま口付けた。
「ん……」
侯輝の体温を感じながら唇伝いにほんのり温さを含んだ水が俺の口内に流れ込んでくる。それはただ喉の渇きを満たすだけの行為ではなく、これからする行為を意識させるもので、俺の体がジワりと熱を持ち始めた。俺の手に重ねられた手を握り返すと侯輝が嬉しそうな気配を滲ませながら俺の手を握り返す。
口の端から飲み損ねた水が伝って首筋へと流れる。侯輝は名残惜しそうにキスを解くと俺を見て照れたように微笑んだ。侯輝が見た俺はどんな顔をしているのだろう。
「ありがと、天理からしてくれるの嬉しいな」
侯輝は嬉しそうに俺の体をベッドへとそっと押し倒す。俺は抵抗せずベッドに体を沈めた。覆い被さる侯輝の体が、これからする事を意識させ俺の心拍数を上げる。
「天理……」
「……ん」
頬を染めた侯輝が俺を呼ぶ。その熱っぽい声に応えるように俺は目を閉じるとすぐに唇が塞がれた。触れるだけのキスから、どちらからともなく唇を開き舌を絡ませる。徐々に深くその舌を絡ませ覚悟を決めながら、ベッドの上を中央へと移動する。
くちゅ、と水音が響く。侯輝の舌が口内をまさぐり俺の舌を絡め取る。俺が侯輝の肩に腕を絡めると侯輝は嬉しそうに鼻を鳴らした。
「ん……っ」
双方から鼻に掛かったような吐息が漏れる。侯輝は探る様に、だが容赦なく俺の口内を蹂躙していた。その様は息継ぎを考慮しておらず俺は少し苦しさを覚えるも、夢中になってくれているのだと思えば愛おしさが込み上げる。
暫くそうしていると苦しくなった俺が侯輝の背中を軽く叩くと漸く解放してくれた。互いの唇を繋ぐように銀色の糸が伸びる。互いに軽く息を乱し、俺は垂れた唾液を手の甲で拭う。侯輝ははぁ♡と熱いため息を吐くと目を細め蕩けるような笑みを浮かべ俺の口元を指で拭った。
「っ、ん、ごめんね、夢中になっちゃって」
「ふふっ、いい……嬉しい、ぞ」
侯輝の謝罪に俺は少し照れながら答えた。そんな俺に侯輝は嬉しそうに微笑むとまたキスをしてきた。今度は優しく触れるだけのキスだった。そしてそのまま頬や耳元、首筋へと唇を落としていく。と、同時にシャツの裾から脇腹へとどこか恐る恐る手が伸びると、その不確かな感触が故に脇腹が過敏な俺は容易に体を跳ねさせていた。
「っ……!」
「えへへ、やっぱり敏感だね」
「う……っ、るさい……」
「でも、俺で感じてくれて嬉しいな」
「っ……」
侯輝は照れたように笑うと俺のシャツをめくりあげ脱がせた。俺は抵抗せずされるがままに上半身を晒すと、侯輝はどこかうっとりとしながら俺の体に手を這わせる。直接触れられた事が無かった訳では無いのに性的な意味を持って探るようなその手付きにゾクゾクとした感覚が背中を駆け抜けていく。
「ん……、は……」
侯輝の手は腹から徐々に上がり胸へと辿り着く。まだ触れられてもいない小さな胸の尖りは既にピンと主張しているのを肌で感じる。侯輝はまるで愛おしいものに触れる様にそっとその尖りに触れると優しく指の腹で撫でた。
「んっ!?……っ」
「天理、ココ感じるんだね♡」
「これは、っ……?」
想定外の刺激が体の中心を走り戸惑いを覚える。咄嗟に声は堪えたものの、体がビクリと反応してしまえば侯輝にはバレバレで、またも顔を紅くして嬉しそうにしていた。そして飾りに口に含むと舌で転がされ甘噛みまでされて俺の体はビクビクと跳ねた。
「ん……♡は……、くっ……、んっ……♡」
くすぐったいような、痛みにも似た何かが背筋を駆け抜けていく。呼吸は知らず乱れ、雄が起ち上がっていくのを自覚すると、はじめてのその感覚が快楽に依るものだと認めざるを得なかった。俺ばかりが乱されている気がして羞恥を覚えふと侯輝を見れば、呼吸を粗くし興奮している様を隠しもしないで夢中な様で俺の乳首に吸い付いていた
「はぁ……♡ん……天理かわいい♡」
「~~っ、も、そこばっか、すんなっ!」
「えー?気持ちよさそうだよ?俺天理にいっぱい気持ち良くなって欲しいよ」
俺は堪らず侯輝の頭をぐいと押し退けて抗議すれば、侯輝は甘ったれたような声で主張する。甘えられるのに俺が弱いと分かっていてやっているだろと思いを込めて睨んでやるも侯輝はえへへ♡と笑うばかりで腹立たしいのに憎めない。
「っ、俺ばっか恥ず……お前も脱げっ」
「いいよ!♡」
シャツを引っ張りながら抗議すると侯輝は頬を上気させ嬉々としながら着ていたシャツを脱ぎ捨てた。俺には恥ずかしくともこいつは酔っぱらって半裸でウロウロしている様なやつだった事を思いだし、意趣返しが何の意味を持たない事を即思い知る。それどころか見て!とばかりにその惚れ惚れする逞しい体をアピールしてきて質が悪い。腹立たしく羨ましくも美しい体だと凝視している間に侯輝は下も脱ぎ捨てていて、そのギンギンに起ち上がった剛直を見せつけられてしまえば、俺の羞恥を煽っただけだった。
「天理も脱がしちゃうね♡」
俺は全裸になった侯輝が膝立ちで俺の事を跨ぐ様にベッドの上に立つのを見てカッと頬を染める。そんな俺を他所に侯輝は勃ってる♡と嬉しそうに言うと俺のズボンに手をかけた。
「ぅ……」
「えへへ♡わぁ……♡天理のもこんなになってるね♡」
羞恥から一瞬その手を遮ろうとするも、どうせこれからやるのだと覚悟して腰を浮かし脱がされるのを手伝った。下着の中で窮屈そうにしていた俺の雄が晒される。侯輝に嬉しそうな感嘆の声を上げながらまじまじと見つめられると羞恥で居たたまれなくなった。
「あんまり、見るな……」
「だって天理、体もココも全部綺麗なんだもん」
「ぐ……おま、よくそんなこっ恥ずかしい……」
「だって本当なんだもん。……ね、触っていいよね?」
「……好きで、いてくれるんだろう……?」
想いが通じる前に触れるなと言ってしまった事を覚えているのか、律儀にマテをして伺い立ててくれる侯輝に了承の意を伝える。どれだけ羞恥を覚えようとお前と触れあいたい気持ちは俺にもあるのだから。
「うん!大好き!」
すると侯輝はパァっと顔を輝かせたかと思うと近寄って俺の雄を優しく握った。直に触れられるその感触に息を飲む。
「っ……!ん……くっ……」
そしてそのままゆっくりと手を上下に動かし始めた。自分とは違う逞しい手で触れられると、どこかもどかしくも想定外の刺激が俺を襲う。
「っ、俺も、やる……」
「うん♡やってやって♡」
お返しにと半身を起こし侯輝の剛直に手を伸ばし握り込む。侯輝はビクリと体を跳ねさせ、嬉しそうに笑った。
「あっ!天理、気持ちいいよ♡」
「ん……俺も、だ……」
侯輝の立派なそれは俺のより少し大きく、少し力を入れて握り込んだだけで力強く増すその質量に驚くばかりだ。そしてそれを上下にしごけば侯輝が熱っぽく吐息を溢すのに気を良くしていると、俺の雄を握る侯輝の手にも力が入った。
「っ、く……んっ……ふっ……」
「はぁ……♡気持ちいい♡天理、声我慢しないで?ね?♡」
侯輝の頼みとは言え声を出すのはどうにも恥ずかしい。あけすけに喘ぐ侯輝に悪いとは思いつつも、どうにも声は出せず、歯を食い縛る様に快楽に堪えながら侯輝の剛直をすくのに集中した。すると侯輝は腰を寄せ吐息がかかる距離まで近づくと、侯輝の熱っぽい喘ぎ声を耳元から聞かせてきた。その声は俺の芯をゾクリと震えさせ、同時に俺の雄を握る侯輝の手にも力が入ると感度が増していたのか、俺は耐えきれずに甘い声を漏らす。
「っあ……♡ぐ……、っく……」
「可愛い声♡今ココもビクッってしたね♡もっと聞かせて♡」
「可愛ぃっ、く……!んっ……♡ぁっ……」
侯輝は嬉しそうに目を細めると手を動かす速度を上げた。何が可愛いのかと反論しようとすれば喘ぎ声が漏れそうで、黙って俺も負けじと手を早めるしかなかった。与えられる刺激に腰が引けそうなのをなんとか堪える。不意に侯輝が俺の耳に舌を這わせると思わず体が跳ねた。
「ぃぁっ!?ば……!それやめっあっ……♡ん゛んっ……!」
俺が抗議するも侯輝は構わず耳元で囁きながら耳朶を舐めしゃぶられ、そのくすぐったさから思わず手を離し仰け反る。その隙を見逃さず侯輝は俺を押し倒すとうっとりとした表情で俺を見下ろしていた。
「ぅわっ!」
「えへへ♡天理可愛い♡可愛いよう♡」
「っ!!」
そして侯輝はその剛直を俺の雄に直接擦り合わせてくると、その感触に俺は息を飲んだ。それは今まで感じた事のない感覚で、互いの熱い欲をダイレクトに伝える。そしてそのまま侯輝は俺の両膝の裏に手を当て持ち上げるとグイっと割り開いた。
「なっ!?待てっ……!」
突然の事に驚き抵抗しようとするもこんな不利な体制で到底侯輝の力には敵わない。足を開かされ、あられもない姿を晒されるとこれからされる事が想起され顔面に熱が集まるのを自覚した。そんな俺に侯輝は嬉しそうに腰を押し進めると、お互いの亀頭が擦れ合いその感触に俺は堪らず声を上げた。
「っ……!?あっ……♡くぅっ……!」
「気持ちいっ♡ああっ♡ぅん……♡」
侯輝は喘ぎながら俺の手を俺達のそれに導くと纏めて握らせ、そのまま俺の手ごと握り込むと腰を激しく動かし始めた。俺の雄を直接刺激し、熱く脈打つ侯輝の剛直を感じる度に腹の奥底から何かが込み上げてくるようだった。互いの亀頭から溢れた先走りが潤滑油となりぐちゅ、ずちゃと卑猥な音を立てる。それがまた羞恥心を煽り俺は思わず目を瞑るも、侯輝に耳元で可愛い♡可愛い♡と喘ぎ混じりに囁かれれば否応なしに俺の耳はその声を拾い興奮が高められた。
「っ!それっ、やめっ……あっ♡ん゛んっ……♡」
「ぅあ゛っ♡はぁ、っ♡天理も、イキそ?♡」
「んっんっ、はっ♡あっ……♡」
触れる感触から自身の限界と侯輝の限界も近いのを感じながら俺は必死に手を動かす。
耳元で聞こえる侯輝の声に声を堪えながら辛うじてコクコクと頷くと一際強く腰を強く打ち付けられた。その動きに思わず目を開けると間近で侯輝と目が合う。侯輝は汗ばんだ頬を紅潮させ、切なげに眉を寄せながら欲に満ちた瞳で俺を見つめていた。その表情は幼さを僅かに残しつつも奔放な大人の色香に溢れていて、俺の心と雄を跳ねさせると俺に限界を迎えさせていた。
「んっ!♡く、ぁぁ……っ!♡」
「あっ!あっ♡あ゛あっ!♡」
そんな俺につられるように侯輝も達していた。二人の手と俺の腹の上にどちらとも分からなく混ざりあった白濁が撒き散らされ、俺達はしばし熱く乱れた呼吸を整えていた。
掌の白濁を眺め、今までに感じた事が無かった快楽にしばし呆然としていると先に息を整えたらしい侯輝が優しくタオルで清めてくれた。若く旺盛な侯輝がてっきり先ほどまでのやや強引な勢いで本番に突入するかと思っていれば、その様子は少しまごまごしていて不思議に思う。
そして頬を染めながら熱い瞳で俺を見つめる。ここからが本番なのだと思い出せば治まってきていた鼓動がまた高鳴り始めた。
「天理……後ろ、解せばいい、のかな?」
「……おう、頼む……少し、解しては、あるから」
「うん、ありがと。俺、頑張るね」
侯輝は頷くと体を起こしサイドテーブルのローションを手に取り、掌に慣れぬ手付きでローションを垂らす。その光景にこれからあの手が俺に、と思うと無意識にごくりと唾を飲み込んだ。脚を開き息を吐いて力を抜く。侯輝はやや緊張した表情ながらも微笑むと、他人になど触れさせた事の無い俺のそこにそっと手で触れた。
「入れる、ね」
「ん…………。っ……」
「あっ痛かった?」
「いや、少し冷たかっただけだ」
「ごめんねっ温めなきゃだよね」
「あ、あぁ……気にするな」
触れられた驚きとローションの冷たさに反応していると、侯輝は慌てて謝った。侯輝も珍しく少し緊張しているらしい。大丈夫だとまだ辛うじて微笑む事ができた俺の様子に侯輝はホッとした表情をすると、俺を窺いながら指をぬぷりと挿入してくる。正直滅茶苦茶恥ずかしい。違和感はあるものの痛みはなく、やはりその慣れない感覚に俺は羞恥に堪えながらもできるだけ力を抜くよう努めた。
「は……ん……ぅ……」
「……痛い?」
「いや、大丈夫、だ」
「良かったぁ。いいとこ探してみるね」
そんな俺の様子に侯輝は安心したようにふにゃりと笑うと指を動かし始める。ゆっくりと中を探るような動きに少しむず痒いような微妙な感覚は覚えるが、快楽はまだよく分からない。
やはり俺にはそちらの才能は無いのかもしれない。なんとか受け入れて侯輝だけでも満足させてやりたいと考えた頃、侯輝が気遣う様に声をかけてくれた。
「ごめんね、辛かったら言ってね」
「ん、ああ……大丈、夫っ!?」
「!……ココ?」
侯輝の優しい気持ちを嬉しく思っていると、ある一点を掠めた指に不意にビクリと体が跳ね上がった。体の芯が痺れるような未知の感覚に咄嗟に、俺は上がってしまった声を驚愕しながら手で塞ぐ。侯輝はパァッと嬉しそうな顔をすると、もう一度確かめる様にその箇所を指で押してきた。
「ん゛っ!……ふ、ぅ……」
「気持ちいい?天理」
「わから……んんっ!」
侯輝は嬉しそうにしこりを指の腹で何度も押し潰し、俺はその強い刺激に体が仰け反りビクビクと腰が跳ねあがる。
なんだこれは!こんな感覚は知らない。自分で何度探っても気持ち悪さしか無かったのにだ。
「ゔ……!んん゛……!ふぅぅ……!」
「凄い、凄いよ♡天理♡」
未知の感覚に困惑し手で抑えなんとか声を堪える。だが体の震えはどうにもならなかった。侯輝は指の数を増やすと中をマッサージするかのように丁寧に幾度も繰り返す。俺の雄は触れられてもいないのに再び立ち上がり、ヒクヒクと震えながら汁を滲ませている様子は卑猥で見ていられなかった。
繰り返される快楽と羞恥で全身が熱い。顔が火照り汗が吹き出し、視界がうっすら滲む。
侯輝はそんな俺を凝視し呼吸を荒くしながらごくりと喉を鳴らした。
「はっ……はっ……あの、天理、そろそろ、いい、かな……?」
侯輝はその手を止めると、再び伺い立ててくれた。そんなに丁寧にしてくれなくてもいいんだぞと思いながら涙目を拭い顔を起こして侯輝を見る。すると顔を真っ赤にしながら短く息を繰り返しじっと切なそうに俺を見ている侯輝に気が付いた。その剛直はまた張り詰めた様に昂り、獲物を前にした獣の様に汁を滴らせて我慢している様だった。こいつだってはじめてなのに、必死に自制してくれている年下の恋人の姿に胸が締め付けられる。その姿に愛おしさがこみ上げると自然笑みが浮かび答えていた。
「いい、ぞ。ありがとな、侯輝。お前の……好きにしていい」
「っ!!天理っ!」
侯輝は目を潤ませ、ゆっくりと指を引き抜くと覆いかぶさってきた。その頭を優しく撫でてやれば嬉しそうに微笑んでキスをくれる。そして侯輝はそうだっ!と思い出した様に俺の腰の下に枕を入れ、冷たっと言いながらローションをたっぷりと剛直に纏わせていた。そして俺の脚をしっかりと掴み先走りで濡れた剛直を先程まで指を飲み込んでいたそこに押し当てる。
熱い。俺はこれから始まる初めての行為への緊張と期待から心臓が高鳴るのを感じ息を飲んだ。
「んっ……」
「ん、行くね……?」
「あぁ……来てくれ、侯輝」
「うん♡」
侯輝は俺の言葉に頷くとゆっくりと腰を進めてきた。指とは違う質量と熱量が押し入ってくる感覚に俺ははくはくと浅い呼吸を繰り返すもなんとか力を抜くよう努める。丹念に解していた為か想定していた痛みは無かった。
「はっ……はっ……はっ……」
「っ……く……は……」
バクバクと鳴る鼓動の中、それでもキツいのか侯輝から堪える様な吐息が聞こえる。力を抜かなければ侯輝が辛い、自身に落ち着けと唱えながら吸って吐くを繰り返す。
想定以上の熱と質量だった。だがなんとかして侯輝を受け入れてやりたかった。一つに、なりたかった。
「……っ!……!……!」
「天、理?!」
だが俺は圧迫感を意識し過ぎたのか、集中を途切れさせてしまい息を詰まらせてしまった。突然呼吸の仕方を忘れてしまいパニックを起こした俺は頭の片隅で緊張してたのは侯輝だけじゃなかったのだと今頃気づいた。
苦しい、辛い、でも、侯輝がこんなに頑張ってくれている、侯輝だって辛いはずなのだ。俺がきちんと受け止めなければ!
そう思いながらも、俺は助けを求めるように手を伸ばしてしまっていたらしい。伸ばした俺の手に侯輝が指を絡めてくれて手を握ると、もう片方の腕を俺の背中に回し掠れた声で大丈夫だよと優しく抱き締めてくれた。俺が愛した男はなんと逞しく心強いのだろう。この腕を信じて委ねればいいのだと俺の心が安心感で満たされると俺はようやく呼吸を取り戻した。その力強さと包み込んでくれる侯輝の心地好さに溶けるように力が抜けていく。
俺は自身で落ち着いてきたのを感じると同時に、侯輝が俺の中に全てを収めた事を知る。
「全部、入ったよ、天理……!」
俺は今、好きな相手と一つになっているのだと実感し幸せで胸がいっぱいになると自然と笑みが溢れていた。まだ息も絶え絶えだったが満たされた心の方が勝っていた。
「はーっ……はーっ……ありがと……な……侯輝……」
「ううん、大丈夫だよ。俺の方こそありがと、ありがとね」
侯輝は泣きそうな声でそう言うと、俺の額にキスを落とした。
俺はお返しにと少し震える手で侯輝のその触り心地の良い頭の金糸に触れ引き寄せるとそっと口付ける。すると侯輝はまた泣きそうな顔になりながらも俺の唇を奪う様に貪り始めた。やっぱり我慢してるよな?と思いその余裕の無い様子に俺はつい笑ってしまったが侯輝はそれでも嬉しそうにすると夢中で俺を求めてきた。そして俺もそれに応えるように想いを籠めながら舌を絡ませる。
好きだ。愛していると。
やがて名残惜しげに唇が離れる頃にはすっかりお互いの息が上がっていた。侯輝の剛直は俺の中でアイドリングするかの様にドクドクと脈打ち、俺も一時は混乱して萎えていた雄も二人の腹の間ですっかり復活していた。交差する互いの瞳が同じ欲を灯しているのに気付き、俺達は同時に小さく笑い合う。
「動く、ね」
「おぅ」
侯輝の言葉に俺は侯輝の首に腕を回しながら答えた。
侯輝はゆるりと腰を動かし始める。はじめはゆっくりと、そして次第に早くなっていく。最初はただ中を熱い欲の塊が注挿を繰り返しているだけの感覚だった。それでも都度漏れ聞こえる侯輝の熱い吐息から侯輝を悦ばせてやれている事が分かり嬉しくて、体の芯がゾクリと震えた。
「ぁぁ……♡天理、大丈夫?」
「は……ん……大丈夫だ、好きに動いていいんだぞ?」
俺を心配しつつもその掠れた声と興奮で染められた表情は、逞しい大人の色香を纏いながらまだ少年のあどけなさも残しており、そのアンバランスさがとても魅力的で愛おしい。このまま俺が絶頂を迎えられなくても十分満足だと思える程に。
だが侯輝の興奮が俺にまで伝播してきたか、少しずつ俺の中の快楽の芽が花開き始めていた。
「ぁっ……!」
「!ここ?」
中の性感帯に侯輝の剛直が当たったらしく思わずビクリと体が震える。侯輝は嬉しさを滲ませながら重点的にそこを突く様な注挿をし始めた。優しくゆっくり確認する様に律動を繰り返す。徐々にだが確実に快楽が強くなっていき、歯を食い縛り堪える様に上げていた俺の声が少しずつ漏れ甘さを帯びた。確かに男の声だと言うのに信じられない様な声を上げる自分が恥ずかしい。手で口を覆おうとするとその手を取られ指を絡められた。
「離っ……」
「お願い天理、声、聞かせて?」
羞恥と快楽で涙目になりながら離してくれと俺が抵抗しようとすれば、侯輝はその腕の力よりも甘くねだる様な声で俺の抵抗を封じてきた。侯輝の子供の様な甘い我儘に雄が混ざった声と顔で言われたら、俺は抵抗する力を失った。
「ぅぅ……」
「えへへ……♡」
卑怯だぞ?と拗ねた様な視線で訴えれば自覚しているのか悪戯っぽい笑みを返され、それがまた魅力的な男のそれで俺はまた胸が高鳴るのを自覚すると白旗をあげた。観念して再び侯輝の肩に腕を回すと注挿が再開される。
「ん゛っ……♡あ……♡ぐ……!ぁぁっ……♡」
「はぁっ……♡可愛い♡ああ……♡きもちいよ♡天理♡」
それでもやっぱり声を出すのは恥ずかしくて食い縛る様に堪えてしまうのはなかなか抜けなかったが、快楽に堪え損ない羞恥に堪えながら震え甘ったるい声を上げると、中で侯輝が大きくなるのを感じた。悦んでくれているのだと嬉しく思っていれば俺の感度が増したのか俺の声はどんどん雌の様になっていく。すると侯輝も伴奏する様に雄の様な喘ぎ声を上げはじめた。その声は目を瞑り快楽に堪える俺を耳から全身を震わせ、俺は無意識に後孔を締め付ければ侯輝はまた喘ぎ声で昂らせた。
そうして互いに昂めあっていると侯輝の雄がビクビクと震え限界が近い事を感じさせた。そして俺の中にも男として経験したことの無い何かを迎えようとしていた。その未知の感覚は恐怖にも似ていて俺はまた助けを乞う様に手をさ迷わせると侯輝がギュッと握り返してくれた。そしてもう片腕でギュッと抱き付くとこの世界で誰よりも強く恐怖を乗り越える勇気と愛を与えてくれる男の名を呼んでいた。
「っ、ぁぁ♡侯輝♡侯輝♡侯ぅっ♡ああっ…………!!♡♡」
「天理っ♡天理っ♡天理っ♡あ!あ゛ああっっ……!!♡♡」
侯輝が一際強く突き上げた瞬間、今までに感じた事の無い凄まじい快楽の波と、それとは比べ物にならない量の何かが体の中から押し出される様な感覚にビクン!と一際大きく俺の体が跳ね、俺の雄から白濁が放たれた。
熱く深い未知の快楽に俺は一瞬意識が遠退く。直後侯輝が獣の咆哮の様な唸り声をあげるとドクンと脈打ちながら更に熱いものが注がれていくのを感じた。その熱さがまるで侯輝の想いの様で、快楽以上に胸が締め付けられ、嬉しくて心地よくて快楽を伴うと、俺はその感覚でまた軽く絶頂し、知らず涙を溢していた。
「ぁっ……♡ぁ……♡♡」
まだ快楽の余韻を残し震える体で互いに荒く息をしながら見つめ合う。侯輝は汗ばみ紅潮しながら、光の精霊力が発露したのかその柔らかな茶の瞳を金色に光らせていた。その美しい瞳とすっかり大人の男として成長した顔に見惚れていると、侯輝は愛おしそうな瞳をしつつも心配そうに俺の額に貼り付いていた黒髪をかき上げ、瞳の端に残っていた涙の雫を拭う様に俺の目尻に優しく口付けた。
「天理……大丈夫?」
「……ん、平気だ……」
「良かったぁ♡……えへへ♡」
侯輝は心底安心したかの様にふにゃりと笑うとまた俺に抱きついてくる。そしてそのまま俺を抱き込むと甘えるように頬を擦り寄せたり、顔中に何度もキスをしてきた。つい先程まで雄の顔をしていたのにその子供の様な仕草に少し呆れながらもそれもまた愛しさが込み上げる。少しずつ落ち着いてきてまた羞恥がぶり返してくるものの、嬉しさが勝り俺もそっと侯輝の背中に腕を回すとぎゅっと抱き締めた。
侯輝の事を一生諦めようとしていた昨日から一転、こんな日がくるなんて。
「侯輝、俺、幸せだ」
「……俺もだよ、天理」
「はは……そうか……」
思わず呟いた言葉に侯輝が返してくれる。それがまた嬉しくて俺は泣きそうになったのを誤魔化す様に笑った。すると侯輝もまた泣きそうになりながら俺の頬に手を添えると俺の唇に自分のそれをそっと重ねた。
幸せで胸が一杯でずっとこのままでいたいと思えた。俺達は暫くの間そうして互いの体温を感じ合うとどちらからともなくゆっくりと唇を離す。そして見つめ合えば自然と笑みが溢れた。
「あ!」
「どうした?」
しばし浸っていると侯輝がハッとして慌てて俺の中から雄を引き抜こうと腰を引こうとする。だが俺はその腰を無意識に脚を絡めて阻止していた。
「天理?ごめんねっ中に出しちゃったから早く綺麗にしないと……」
「あ……!そう、だな……っ……」
まるで行かないでとばかりに引き留めてしまった自分に羞恥で顔に熱が集まるのを自覚する。永遠に繋がっていられる訳がない。侯輝の気遣いを俺が無駄にしてどうするのだ。
羞恥に顔を背けながら絡めた脚を解き、侯輝が中から出ていくのを待つ。だが侯輝が中から一向に出ていく気配が無く、先程から剛直の質量が戻ってきている。それにちょっと嬉しく思いながら若いな?なんて茶化して先程の羞恥を誤魔化してやろうと侯輝の方を見ると侯輝は俺を見て真っ赤になって固まっていた。
「ぅ……!」
「ど、どうした?侯輝。あ、ほら、まだ足りないなら口で頑張るぞ?」
「え、へへ……そう、だよね。お願いしようかな……」
侯輝にしてはもじもじと何か言いたげにしていたが、ゆっくりとどこか名残惜しげに俺の中から出ていこうとする。まだ俺の中は敏感なのか、形を持った剛直は俺を刺激し、その動きだけで吐息が漏れそうになるのをぐっと堪える。
「ぁっ……」
「!」
だが敏感な箇所を擦られた瞬間ピクリと震え、声が小さく漏れてしまった。受け入れる側とはこんな敏感になるのか、慣れないとな、などと考えていた瞬間衝撃が走った。
「あっ!!♡」
「ごめんっ天理っあのっあのっ……!」
出ていったと思っていた質量が一気に中に戻ってきたのだ。中の剛直はドクドクと俺の中で脈打ち先程となんら変わらぬ熱を湛えていて、まだ敏感だった俺の中を再び交愛側へと傾かせた。
驚いて侯輝を見ればすっかり興奮した雄の顔でまたフーッフーッと荒い息を吐きながら俺を凝視していた。それでも寸での理性で俺を気遣ってくれているのだろう。猛犬が忠実にマテをする様なその姿に俺は胸がきゅうと締め付けられた。俺はなんて幸せなんだろう。こんなにも大切に想ってくれる侯輝が可愛くて愛おしくて、俺は考えるより先に己が脚を再び侯輝の腰に絡めて引き寄せた。
「わっ……!あっ……♡」
そして愛おしく侯輝を見上げながらその身体に触れる。
軽々と抱える事ができた腰は、もう大地に根を張る如く構え、どんな脅威にも揺るがずその身を張って俺を守ろうとしてくれる。彫像の様に羨むほど美しく刻まれた腹筋は戦士の証。なんでも気持ちよく食べ納め、心地よく高らかに空に響く声の源。誇らしげに張る胸からは力強く脈打つ鼓動がその魂の強さを俺に分けてくれる。かつて俺の腕の中で眠っていたお前はもう俺を肩を包み込める程になった。逞しくも変わらぬ愛らしさを残す顔立ち、撫でると癒される項。その全てを慈しみながら俺はその首を引き寄せる。
侯輝はその身体を辿る俺の手にビクビクと身体を跳ねさせると顔を赤くして俺を凝視した。そのほのかに光る瞳には昔と変わらぬ優しさと、欲。
「天理っ、いいのっ?」
俺は覚悟を決めて微笑みながら触れるだけのキスをすると、愛おしい男の魂の鎖を解き放たせるべく告げた。俺はお前の全てが欲しい。
「大切にしてくれてありがとな。大好きだよ、侯輝。お前の我儘も全部、愛してるぞ」
そして羞恥を堪えながら腰を小さく揺らすと、侯輝は俺の中でビクリと震えた。そしてその瞳が強く強く力を持ち輝く。
「っ天理!」
「んぁっ!!♡ぐっ♡ああっ♡」
次の瞬間、侯輝は俺の腰を掴むとガツンッと一気に剛直を奥まで突き入れると、先程までとは打って変わった様にそのまま腰を激しく打ち付けてきた。その衝撃に俺は背をしならせながら甘く高い声を上げてしまう。嵐のように欲望剥き出しにして俺を欲してくれる男が愛おしく想う気持ちが溢れて止まなかった。
「はぁっ……♡あ゛ぁっ……♡俺も、愛してるよ♡天理っ♡」
「あぁっ♡く、あっ♡ゃああっ♡」
先程放たれた白濁が卑猥な音を立て、パンッ!パンッ!と肌のぶつかり合う音が部屋に響き渡る。侯輝は悩ましげに眉を潜め、欲にまみれながらも愛おしそうに言葉を放つ。反射的に逃げを打つ俺の腰を逃がさぬとばかりにがっしりと掴み、獣の様な荒い息を吐きながら夢中で腰を動かしていた。
その全てから愛を感じとる。与えられる快楽と幸せで身体と心が侯輝への愛で満ちた。ただ嬌声を上げ翻弄されながらも、その嵐の様な愛欲を離すものかと必死でしがみ付いていた。
俺達は幾度も互いに求め合い、求め合う度に想いが溢れていく。俺はもうこの幸せを手放す事など出来ないだろう。
「大好きだよ、ずっと一緒にいてね、天理……」
「愛してる、侯輝……」
朦朧とする意識の最後、侯輝の言葉に、俺は最後の力を振り絞って想いを伝えた。